99 あいつアホだから私がしっかりせねば
吾輩は体担当である。
名前はまだない。
今回はちょっと情報担当に対する愚痴に付き合ってほしい。
あいつアホやねん。
この間なんか射出覚えるために、「糸お尻から発射しようぜー!」って言い出してな、試してみたら予想以上に勢いよく糸が飛び出して、そのままマグマにポチャン。
危うくこっちにまで引火しかけたわ。
私が咄嗟に糸切り離さなかったら火達磨になるとこだったわ。
とまあ、こんなふうに事あるごとに下らないこと提案してきて、結果碌でもない目に遭うわけよ。
あいつの提案に乗って成功した試しがない。
まあ、毎回ノリノリでそれを実行しちゃう私も私なんだけどさー。
もう少しまともな提案はできないのかと。
ちょっと考えればアカンってわかるっしょ?
なんで頭脳担当のはずなのにそこらへん熟考しないの?
アホなの?
アホなんだよなー。
だから体担当の私がしっかりしなきゃならないわけよ。
なんせ私の行動がそのまま私の生死に繋がるわけだしね。
体担当体担当。
何だ情報担当?
望遠に邪眼乗せられないかな?
!? お前、天才か!?
ふふふ。そう、私ってば天才だったのだよ。
マジか。私ってば天才だったのか! 天才だったら何しても許されるよな!
そうそう。望遠で遠距離から邪眼発動とかヤバくね?
やべー。それやべーよ。夢が広がるわー。
そういうわけで獲物を探すぞ!
ヒャッハー!
吾輩は情報担当である。
名前はまだない。
望遠と邪眼の同時発動はうまくいかなかった。
むう。
さすがにそこまでできちゃうとチート臭いから仕方ないかなー。
望遠は常時発動させてるおかげかレベル5にまでなった。
レベル1の時に比べると、拡大できる距離と拡大できる倍率が増えた。
これに邪眼が乗れば、かなりの長距離攻撃ができそうだったんだけど、残念。
しかしこの邪眼はかなり使える。
MPが余裕あるうちは使い続けてるから、今ではレベル3にまで上がった。
レベルの上がりは遅め。
けど、中層攻略中はMPも余り気味だったし、ちょうどいい。
邪眼で気づいたことがあるけど、どうやら邪眼発動中でも視界に変化はないっぽい。
望遠との同時発動はできなかったけど、その他の視覚強化だとかはきっちり適用されたままだ。
発動中もしっかり視界が確保できるなら、わざわざ邪眼を発動させない目を残す必要もない。
これは、夢の邪眼同時8個展開も見えてきた。
あと、邪眼に各種属性追加スキルは乗せられないっぽい。
毒攻撃で試してみたんだけど、効果はなかった。
残念。
まあ、これも望遠と同じで、できちゃったら相当チート臭いから仕方ない。
今の私の猛毒がもし邪眼に乗ったら、見ただけで相手が死ぬっていうどこぞの死が見える魔眼も真っ青な性能になるからね。
見ただけでダメージプラス弱体化の今ですらチートじみてるんだから、これ以上何かを望むのはさすがに欲張りでしょ。
で、じゃあ邪眼単体を8個の目で同時展開とかできないかなーと思ったんだけど、これはできたりする。
ただし、効果は変わらず。
8個同時なんだから8倍にしてもいいじゃんと思うけど、そううまい話はなかった。
ただ、この同時展開、望遠に関しては結構便利に使えたりする。
別々の場所をピックアップしてそれぞれ拡大とかできるし、使い方次第では同時展開もありかもしれない。
で、話は変わるんだけど、体担当のことだ。
あいつアホやねん。
この間なんか私が射出のスキル手に入れられないかと思って、糸をお尻から発射してみようって提案してみたらさー、「いいねー、それいいわー。早速やろうぜ!」って言いながら糸発射したわけよ。
マグマに向かって。
曰く「予想以上に飛びすぎた」とか言ってるけど、何もマグマがある方向にぶっぱなさなくてもいいじゃん。
もちろん発射した糸はマグマポチャしましたとも。
導火線みたいに火が糸を伝ってきたときは焦ったわー。
危機一髪体担当が糸をギリギリで切り離したから良かったけど、間に合わなかったらまたケツに火がつくとことだったわ。
とまあ、こんなふうにあいつ私が提案したことに対して、斜め上の成果を上げるわけよ。
あ、どっちかっていうと斜め下か。
もうね、せっかく私が天才的な提案をしても、実行役の体担当が無能だとどうしようもないわけですよ。
ちょっと考えればアカンってわかるっしょ?
体ばっか動かしてるから思考も脳筋にでもなった?
アホなの?
アホなんだよなー。
だから情報担当の私がしっかりしなきゃならないわけよ。
なんせ私の指示がそのまま私の生死に繋がるわけだしね。
情報担当情報担当。
何だ体担当?
望遠で遊んでたら魔物発見したわ。
マジか。探知圏内にはまだ引っかかってないぞ。
くくく。情報担当、貴様の存在意義が薄くなっているのではないか?
抜かせ体担当。私を超える情報を提供しようと思ったなら、100個くらい目がないと追いつけぬぞ?
ふはは、そう言っていられるのも今のうちよ! せいぜい首を洗って待つが良い!
フ、その時が来るはずもなかろうが、良いだろう。上ってきてみせよ、この遥かな頂きに!
ふふふ。
くくく。
で、どうするよ?
そりゃもちろん狩るっしょ。
あいあいさー。さあ野郎ども! 戦闘準備だ!
ヒャッハー!




