96 我思う故に我あり、我動く故に我あり、我は我であり我であるが故に我である
レベルが上がってからちょっと経った。
視線に力を込めて集中してものを見ているんだけど、なかなか視覚強化のスキルは上がらない。
やっぱり9レベルともなると、レベルを上げるのも苦労する。
その他のスキルは結構上がったけどね!
まず無音がレベル3になった。
やったね蜘蛛ちゃん、隠密性が増えるよ!
あと思考加速と予見がそれぞれ5レベルになった。
やったね蜘蛛ちゃん、回避性が増えるよ!
火耐性も1上がって3レベルにようやくなった。
忍耐のおかげで取得できる早さは上がってるはずだけど、それでもかなり時間かかった印象だわ。
どんだけ火に弱いんだ私。
というか、種族変わっても火に弱いのか。
もしかしたら火以外の耐性は変わってるかもなー。
そこらへん試すことができないから何とも言えんけど。
まあ、元が防御力なんてあってないようなもんだったから、耐性が多少変わったところであんまし変わんなかっただろうけどねー。
けど、これからは防御力も増えたことだし、耐性のことも知っておいたほうがいいかもしれない。
火以外にも弱い属性とかあるかもしれないからね。
それを調べる方法はないけど…。
で、最後に並列思考。
これがレベル10になって進化した。
その名も並列意思。
これが面白いんだわ。
その名前のとおり、私の意思が増える。
並列思考では同じ意思で複数のことを同時になんとなく考える感じだったけど、この並列意思は完全に意思が分かれる。
擬似二重人格みたいな。
両方とも私ではあるんだけど、別個の意思としてそれぞれが思考することができる。
それも、それまでの並列思考を備えたままに。
単純に思考能力が2倍になったようなもんだね。
超便利。
レベルが上がると並列する意思の数も増えるのかもしれない。
ただ、体を動かすのはどっちか一方の意思しかできない。
そういうわけで、私は片方が体担当、もう片方が鑑定様や探知さんなんかの情報整理を担当することにした。
ということで、任せたぞ体担当!
任された情報担当!
てな具合で一人会話も可能なのだ。
一応どっちも私のため、情報共有もばっちりだ。
この意思にメインもサブもない。
どっちも私である。
私が私であるために私なのだ!
うん、訳わからんね。
これ、私はどうにかなってるけど、人によっては自己の存在定義があやふやになったりしそう。
どっちが本当の自分なのかわからなくなって自分を見失ったりとか。
ありそー。
てか、普通に使いこなせてる私のほうが特殊だったりして。
それはさすがにないか。
なんて情報担当が考えてる間に、体担当が魔物を倒してた。
グッジョブ私。
それほどでもねーぜ私。
今回は新しく増えた腐蝕攻撃を試してみたんだけど、これ、使えないわー。
いや、攻撃力自体はすごいものがあるんだけどね。
レベル1のくせにやたらすごいんだけどね。
すごすぎるんだわ。
だって、魔物が一撃で塵になってるんだぜ?
おかしくね?
腐蝕ってそういう意味だったっけ?
腐るとかそんな感じじゃないの?
腐る通り越して風化してるやん。
死の崩壊を司る属性、やばすぎる。
レベル1ですでにオーバーキル。
これでレベルが上がったらいったいどうなることやら。
んで、使えないって言った理由だけど、2つある。
まず1つ、魔物の死骸が残らない。
つまりご飯が残らない。
これを使うと経験値を貯めるっていうのと双璧をなす、私の魔物狩りの半分の理由が達成できなくなる。
それはいただけない。
二重の意味でいただけない。
で、もう1つの方がむしろ大問題だったりする。
これ、私にもダメージ入ってる。
腐蝕攻撃を纏った鎌を見る。
鎌の刃がボロボロになっていた。
HPも減ってる。
自爆攻撃だこれー!?
というわけで、威力は高いけど反動もでかい。
全力を尽くさないとまずいような激戦なら機を見て使うけど、それ以外の雑魚戦だと使わないほうが良さそう。
特に中層にいる間は、自動回復も遅くなってることだしね。
あー、この鎌どんくらいで治るだろ?
もうそろそろレベルアップしそうだから、その時に治るけど、その場合次の戦闘では鎌は使えそうにないなー。
まあ、鎌がなくても私には毒合成があるし、鰻みたいな強敵じゃない限りそこまで影響はないけどね。
そもそも、最近は鎌も使い始めたけど、この中層でのメインウエポンは毒合成なんだよねー。
だって中層の魔物触っただけでダメージ来るし。
鎌使うと斬撃強化とかのスキルは上げられるけど、地味ーにダメージもらっちゃうんだよねー。
それに、鎌で切ると中身がこぼれちゃって食べにくいし。
というわけで体担当、次の獲物は毒合成で仕留めようぜ。
おう、がってん承知だ情報担当。
いやー、ホント便利だわ並列意思。
これで体が2つあったら夢の影分身ができるじゃん。
あ、でもそれだとどっちも本体だから、どっちがやられても痛い。
あー、それは嫌だなー。
どっちかが残れば私は生き残るけど、それって擬似的に死を体験することになるんじゃね?
うーん。
それは体験してみたくねーわ。
多分私は一度それ体験してるんだろうけど、記憶にねーからノーカンということで。
そういうことだから体担当、くれぐれも死ぬようなことはしないでくれよ?
イヤイヤ。
情報担当よ、それはさすがにしないって。
だよねー。




