序章 神って存在したんだ…
神はこの世に存在するだろうか?
答えは否だ。
神は人が造り出した人間に似た偶像、架空の存在でしかない。
もしくは神と呼ばれる技量を持つ人間のことを指す。
しかも、全能とされる神がいるとするならば、なぜ神は人を理不尽な目に逢わせるのだろうか?
究極のサディストなのだろうか?
と、僕、蒼生蒼真は思っていた。
だが、目の前の見知らぬ子供は誰だ?
従弟?いやいや、僕に従弟はいない。
いたとしても知らない。
「おい、お前誰だよ?」
子供は僕に笑いかけながら振り返ると、信じられないことを言いやがった。
「僕は神だよ?神の中の貧乏神っていう神なんだけど」
は?いやいや、今なんと仰いましたか?
神とかふざけたこと言わなかった?
…………キチガイはっけーん。
この家にキチガイは要らない。
「キチガイ、出てけ」
「正真正銘の神なんだよっ」
……………厨二病を通り越してキチガイだ。
もっとマシな嘘を吐けばいいものの。
「正真正銘なら証拠見せてみろよ」
証拠がなければ裁判もできないこの国。
それに乗っ取ってやる。
「いいよっ!証拠見せるよっ」
そう言って自称神が懐から出したのは一枚の紙切れ。
神が紙を出す。………うーん、ナンセンス。
「これでどうだっ!」
名刺らしき紙切れには貧乏神と書かれていた。
「手作りにしては精巧に出来てるな」
「だから!僕は本物の神様なんだって!ほら、これ見てよ!」
手を広げ、なにもない場所から唐突に出したのは黒い害虫。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
「うわああああああああああああああ!!」
僕が大きな声を出したのにびっくりしたのか子供の手から黒いヤツがはばたいた。
音と気配に敏感だって耳にはしたが、アレって飛ぶのかよ!?
黒いヤツは僕の鼻先に止まった。
僕は間違いなく確信した。
このガキは貧乏神だということを。
そして、僕は気を失った。
こうしてなぜかは知らないけど、僕は貧乏神に取り憑かれた。