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僕の帰路。

作者: 馨。

僕の今日の帰りの出来事を大きくいじった。

キーンコーンカーンコーン

学校のチャイムが鳴り響く。

「起立、気をつけ、礼。」

「「「ありがとうございました。」」」

緊迫した空間から解き放たれ思わずため息をつく。

やっと一日が終わった。

といっても、今日は午前授業である。

そんな新鮮味に嬉しさを感じながらも、

それに浮かれた友達に振り回されいつも以上に体力を使った。

鞄をしまっている時、前の席の男子が友達と遊ぶ約束をしている声が聞こえる。

まぁ、僕には関係の無いことなんだけど。

実は誘われたかったりもするが、僕の家は結構山の方にあって行き帰りがめんどくさいったらありゃしない。

それに、遊んだところで冷静に考えたらどうにかなるものでは無いとわかる。

そして、そんなこんなで鞄の中に色々詰め込む。

まぁ、教科書やノートは学校に置きっ放しだし、そんなに重い物でもない。

そして、制服を着ようとハンガーを手に取る。

使って一年ちょっとしか使っていないはずなのにもう丈が短い。

成長したんだなぁ。

こんな事でしんみりしている自分に少ししんみりしながら、制服を着る。

ちなみに、中に着ていたジャージは暑くなる事を予測して事前に脱いである。

そして、人が少し少なくなった教室を飛び出る。

先生にそこそこ明るい声で

「さよならー」

と挨拶をする。

一応、半反抗期ではあるが、挨拶はしっかりとした礼儀だと思っているからちゃんとする。

そして、廊下には、見慣れた顔がぽつぽつとあった。

早く帰りたいから出来れば関わりたく無かったが、そんなわけにもいかず…

「あ!!ちーす!おひさー。」

陽気にクラス替えで運悪く離れ離れになった友達が話しかけてくる。

「おひさー。じゃ急ぐから。」

話しかけていたのが話し慣れたそこそこ仲の良い彼で良かったと心底安心しながら生徒玄関へと足を進める。

階段を小刻みな足使いで降りる。

すぐそこは生徒玄関。

三人位の先生が挨拶をするために立っている。

その先生達には軽い会釈をし、先に急ぐ。

そして、コンクリートの上を走る。

たったった

良い音が耳の中で繰り返される。

そして、辿り着く駐輪場。

ここからがスタートだ。

鞄を後ろの荷台に括り付けていると前のクラスで同じだった女子が話しかけてくる。

「ねぇねぇ何組になったー?」

どうでもよくないですかね?

「Aだよ。」

わざとそっけなく返す。

「Aに可愛い子いるー?」

は?

「知らん。」

更にそっけなく返しサドルに跨る。

ペダルに足をかけ漕ぎ出した頃には彼女の事など忘れていた。

そして、何と言っても楽しみなのは帰り道の始めの始め、学校を下る坂道である。

シュー

心地よい音を立て下って行く。

これを楽しむ為に学校に来ているといっても過言では無いかと思ってしまうほどだ。

頬に風があたって、高ぶる心を更に揺さぶる。

今なら何だって出来そうだ。

本来なら三十秒くらいで下れるこの坂を三分くらいかけて下ったような気分に浸りながら下り坂を終える。

そして、差し掛かった横断歩道。

歩行者信号は赤。

ここの信号赤なげぇ。

心でそっと愚痴る。

そして、青になった刹那、ペダルに力をいれ

グンと進む。

そしてすぐに踏み切りに差し掛かる。

踏み切りは信号とは違って、昼中には滅多に電車は通らない。

スムーズに通り抜け、角度の小さい下り坂へと突入する。

なんというか、ここは安心した気分になれる。

ゆったりと周りの景色を見ながら、思わず歌を口ずさむ。

最近、ハマったバンドの曲だ。

歌詞はカッコ良く、声もかっこいい。

密かに憧れを抱いていた。

そんなこんなで少しテンションの高かった僕はまだ続く下り坂を少しボリュームを上げた声で歌う。

そして、曲がサビに差し掛かるとテンションはマックス。

暴れるように歌い出した。

だけど、その時僕の目には写ってはいけない物が写った。

それは、『人』

それも、こっちをガン見していた。

あぁ、詰んだ。

うん、詰んだ。

もう、詰んだ。

いわゆる、『まぢ病みモード』に突入した僕はしおれたフライドポテトみたいになって、

自転車を漕ぐ。

そして、それはその下り坂を越え、平坦な道を越えるまで続いた。

そして、何と無く治って来た。

ふと、周りを見る。

そこは、一面の緑だった。

ピンクの桜がなくなって、寂しくなったと思ったらそうではない。

緑が彩っていた。

まだ、そして、その景色を胸に止め帰路を急ぐ。

そして、公園の横を通る。

公園には少し気のはやい鯉のぼりが泳ぐ。

やはり、ここにも一面の緑。

思わず見惚れる。

少し休んでいこうかな。

寄り道は禁止されているが、この期を逃がすわけには行かないと思った。

広場の原っぱに自転車を止め、寝転がる。

そして、空と緑を見つめ、もう全てがどうでも良くなった。

小さな心配事も。

小さな後悔も。

自分がどれだけちっぽけか分かった気がする。

そして、少しだけ目をつむる。

こんな時がずっと続けばいいのに…



目を覚ます。

寝てしまったのか、そこには変わらない空と緑があった。

どれくらい寝てしまったのだろうか。

だが、そんな事はもうどうでも良かった。

それよりも。

あの地平の彼方に消えていく太陽と大きな樹々に感動する他無かった。

そして、僕は決めた。



今日は歩いて帰ろう。

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