✿「入れ替わりの病」(4)
「それで…皆さんは中身が入れ替わったと?」
神童はおずおずと尋ねる。
その質問に俺達はうなずいた。
思えばこの状態の原因は全て、誰かが他の人物と衝突したからこうなっていた。
「まあ、何だかんだ鏡華さん、理解してくれとるようでよかったわ。」
桜庭である佐川は、その雪のように白い顔で二ヒヒ、と笑う。
「それなら元に戻る方法を探さなくてはいけませんね…」
神童は後ろにあった金色の鍵を手に取り、もう片方の手で佐川である俺の手を掴んだ。
「え…?おい」
分かって彼の手をつないでいるのだろうか?
彼女がこんなにも積極的なところなど、今まで見たことが無かった。
「…それで…雨傘さん?」
彼女は、急に俺のほうに振り向くと頬を赤く染め、いった。
「えっと…実は私…入れ替わってしまった人の、お話を見たことがあって…」
「本当か!?」
俺が聞くと、神童はこくり、とうなずいた。
「でも、何で俺だけに?元に戻るんだったら桜庭たちにも教えたほうが…」
「だ、駄目ですっ!駄目っ!」
神童は焦りながら俺の口をふさぐ。
「あの、ですね……?えっと…驚かないでくださいね?」
「実は…」
2012年 *月/**日 午前11時04分。
「あれ、鏡華さん?えらい遅かったな?」
あれから一旦別行動をとった俺は、神童の言うとおり桜庭たちのいるところに戻っていた。
そして、神童は今帰ってきた。
しかし彼女の顔は真っ赤っ赤。
何があったのだろうかと俺は尋ねる。
だが神童は頭を横に振り、何も答えてはくれなかった。
数刻後…
沈黙に耐えられなくなったのか、佐川が口を開いた。
「な、なあ鏡華さん?なんかどっか行っとったみたいやけど、何しにいったんや?」
「あ…えと…ちょっと…」
『…やっぱり、な、何もありませんっ!!』
神童は言いかけた口を無理に抑え、内容を言わなかった。
あのとき彼女は『図書館の中に例の本があったので調べなおしてくる』といっていたが…
「あのっ、えっと…ちょっと…~っ!」
神童は廊下に飛び出していった。
「あっおい、待てよ!」
俺は彼女を追おうとした。
彼女と同じように扉を開け、外に出る。
そのときからだろうか?俺の記憶があやふやになったのは。
俺はその後の話を、しばらくの後に知ることとなる…
2012年、8月12日、 午前12時半の夏のことだった。
-fin