✿「入れ替わりの病」(1)
いつもと何ら変わらない朝。
俺、雨傘流麗は普通の男子高校生である。
つい最近、俺は今いるこの場所…神童本家の次期社長、神童鏡華を守るSPをはじめた。
「…ん」
俺は部屋の中のベッドから腰を上げる。
外は綺麗な夕焼けで……
「…ん?」
時計を見ると、時刻は午後5時。
「……うわぁぁぁぁぁぁっ!?ね、寝坊しっ…!??」
2012年 夏。
夏休み真っ只中の学生達は、勉学を放り捨て友人達との楽しい時間を過ごしている頃だ。
だが。
この屋敷…神童家に住まう使用人に、そんな長期休暇は無い。
むしろ休暇を一日でも取れること自体が奇跡のようなものなのだ。
俺はドアを勢い良く開け、外にでる。
その時。
「おおうわぁぁぁっちょっ、どいてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「あ…?」
突如、大きな声が部屋に響く。
振り返った瞬間に、俺の記憶はそこで止まった。
2012年 *月/**日 午後5時48分。
「大丈夫ですか愁さん!?」
か細い女の人の声が近くではっきり聞こえる。
ああそうか、俺さっき誰かとぶつかって…
俺は無理やり体を起こし、周りを見回す。
どうやら例の声は神童のようだ。
そんな俺に神童は涙で目が潤んだまま話しかける。
「良かった…心配しましたよぉっ!愁さん…!」
え…愁…?
俺は彼女の、背後の大きな鏡に映っている誰かに目を移す。
その姿は…
「………嘘だ」
俺は目の前が暗くなるのに気付き、その暗闇に答えを求めるように身を任せた…。