一章4
一章のパート4です。
中央棟の三階は、生徒会に関係のある、部屋しかないので、
迷うこともなかった。
三階は、高級そうな赤褐色のカーペットが廊下にしてあっ
た。そこを歩き、生徒会室と書かれたネームプレートが埋め込
まれたドアの前で止まった。天井も高かったが、ドアもそれな
りに大きく、高級感溢れる木製の両開きドアである。
明は、コンコンと、ノックをした。
・・・・・
返事がない。
もう一度した。コンコン
・・・
また、返事がない。これは、どう言うことだ。呼び出してお
いて、留守とは。ここの生徒会は、一帯何を考えてるんだ。
「勝手にはいちゃおーぜ」
光樹は、そう言うと同時に、ドアを躊躇なく開け放った。常識
はずれの行動だ。
室内には、大きな机と向かい合った、二人掛け用のソファー
が二つ並び、その間に、ガラスでできた背の低い机が置いて
あった。
片方のソファーには、女子生徒が一人、座っている。その子
以外は、誰もいないようだ。
女子生徒は、棒付の飴をくわえ、ゲームをしているのか、左
手でケータイをいじっている。俺たちが入室してきた事に気付
いた様には見えない。目線は、画面から離れないままだ。
「おおやっと来たか。そこのソファーに座れ~。」
どこからともなく声が聞こえてきた。
ケータイの子は、左手の指以外は、微動だもしていない。声
は、『会長』と書かれた、三角コーンが置いてある窓際の机か
ら聞こえてきている。
「お~~い、早く座れ。」
そう言われ、二人用のソファーに腰を掛けた。ケータイの子の
隣に光樹、背の低いガラスの机を挟んだ向かい側のソファーに
俺とマリが座った。
ほんの少しの間、静かになった。
「なぁ、そろそろ姿を現したらどうだ。透明人間さんよぉ。」
光樹が唐突にそう言った。
しばらくすると、窓の方の空気が歪みだした。大きな机の前
からだ。
耳に悪そうな嫌な音と共に、歪みから女子生徒が姿を現し
た。
「やっぱり、塚原流次期師藩、塚原光樹には、見透かされた
か。この力は、まだ無理があるか。」
そんな事を言って、現れた女子生徒は、髪が黒く長く、クセ毛
が三ヵ所ほどあり、胸のリボンが緑色をしていた。緑は、三年
生を意味している。
腕には、『生徒会長』と書かれたワンショを付けていた。
「初めまして、君たちをここに呼んだ生徒会長の 九《イチク
ジ》 亜理子だ。ヨロヨロ~。」
会長は、右手を軽く振って、目を細くし、作り笑顔をした。
気の抜けた自己紹介が、終わり、沈黙が部屋の中に漂ってい
る。会長は、突っ込みを待っているのか、表情を崩さずにこり
している。どうやら、登場シーンの事や、自己紹介短い事につ
いて聞いて欲しそうにしている。
「……」
「……」
マリと光樹に視線を移すと、二人とも、会長をずっと凝視して
いる。会長を警戒していた。
『カタカタ、カチ、、カチ、』
ケータイをいじっている女の子に関しては、まだゲームをして
いる。回りのことなんて気にしないタイプなのか?
「……っ…」
重い雰囲気をつくった九会長は、ニコニコしながら、冷や汗を
かいている。