熱心な読者
小説投稿サイトに、私は地道に作品を上げ続けていた。
仕事で多忙な日でも、休みの日でも、ネタを考え、設定を考え、プロットを考え、少しずつ形にしたものを投稿していた。
しかし、1作品あたりのPVなんてせいぜい30前後。ほとんど誰にも見られないまま、何度アクセス解析を見ても数字が動かない画面を眺める日々だった。
趣味の範疇ではあったが、それなりに熱意を込めた作品を投稿してきた。
そんな中で、1つだけ違う作品があった。
そろそろ投稿数が30に迫ろうかという時に突如、これは、と思えるネタを思いつき、その日のうちに書き上げ、すぐに投稿した。
自分でも「これは会心の出来だ」と思える出来栄えで、読者はどんなリアクションをしてくれるかな、と思い、その日は眠りについた。
しかし、予想は大きく外れた。
次の日、仕事から帰ってマイページを見たところには、100PVに達していた。
「100……?」
初めて見る数字に、胸が高鳴った。やっと、多くの人に届いたんだ。
誰かが私の小説をちゃんと読んでくれている。その事実だけで、しばらくは幸せだった。
それから1週間。
その作品のPV数は、未だ順調に伸び続けていた。
しかも、おおよそ2時間おきに。深夜だろうと早朝だろうと、誰かが見に来ているようだ。
「すごいな……まさかここまで見てもらえるなんて」
そう思うと誇らしかった。
自分の作品が読んだ人の心に残ってほしいと願った。
けれど、アクセス解析を見てみると、奇妙なことに気がついた。
ユニークアクセス数が、ほとんど増えていなかったのだ。
同じ人間が、何度も、何度も、繰り返し読んでいる――。
そう考えると少しだけ背筋が寒くなった。けれど、それでも熱心な読者がいることは嬉しかった。
……さらに1週間後。
PV数は相変わらず、2時間おきに増え続けていた。
ただし、ユニークアクセス数は増えていない。それも1人も。
100PVを超えた、あの最初の時から、ずっと。
「……新しい読者は、誰もいない……?」
気がついた瞬間、胸の奥に冷たいものが広がった。
ずっと同じ1人が、昼も夜も、深夜も早朝も、規則正しく見に来ている。
何の感想も、評価も、ブックマークも残さずに。
まるで監視されているような気分だ。
ただ本当に私のことを監視するなら、SNSを見た方がいいはず………
私のアカウントの動向が知りたいなら、お気に入りなりブックマークするなりでいいのでは………
どんなに考えても昼夜を問わずアクセスする理由は思いつかない。
想像すればするほど不気味に感じられた。
とうとう私はその作品を非公開にした。
これでとりあえず安心だ、思ったのも束の間――翌朝、通知欄に表示が出た。
あの作品についてだった。非公開にしているはずの………
「あなたの作品に新しい感想が投稿されました」
「あなたの作品がブックマークされました」
「あなたの作品に評価がつきました」
私はそれらの内容を未だに見ていない。
あー、そんな読者いないかなぁ
もう幽霊でもいいよー




