8:スワロはおばけがこわい(足跡)
スワロには厳密に言うと足っていうものがないんですけれども、一応、キャタピラみたいなのが付いていて、転がって進むこともできます。
と言ってもスワロは浮いてる事の方が多いのです。
足がなくて浮いてるなんておばけみたいですが、スワロはおばけじゃないですからねー。
でも、同じみたいって言われても、おばけには足跡がないですが、スワロは……。
*
今日は、荒野でひとしごとしたあと、近くの大きなお屋敷の廃墟に来ています。
普通の廃墟はそんなに怖くないスワロですが、大きなお屋敷の廃墟は……。
実は、スワロおばけはこわいです!
おばけはこわいですよ! そんなのいるわけないってご主人はいいますが、計器類の意味のわからない変な反応とかあると、すんごくこわいです。理解できないだけに、気持ち悪いって思いますよ。
廃墟なんてすごくこわい。大きなお屋敷であればあるほど、こわいんです。
とはいえ、お仕事ですし、ご主人がいるのでがんばります。
「どうした? そんなくっついて? 怖いのかよ?」
ご主人がきょとんとします。
こわくないですもん。
「へえ、そりゃ良いが。しかし、お前も別に戦闘の時はこわがらないのに、こういうとこは怖いんだなあ。へんなやつ」
むう。
機械だって得意不得意ありますもん。
「しかし、ほこりたまってんなあ」
ご主人があるくと、絨毯の上に足跡がつきます。ご主人は痩せていますが背が高いから、靴は結構大きくて、足跡も大きいです。
くっきり、ご主人のあしあとがついていますね。
「ん? どうした? 足跡が珍しいか? 雪の上なら情緒のあるもんだが、こんなの、泥道につくやつと大差ないだろ?」
ご主人、相変わらず、じょーちょもなにもないひとですね。
「だいたい、俺はあんまり足跡つく場所は好きじゃねえんだよな。あとを尾行られやすくなるだろ」
そう言われるとそうです。
ご主人、問題児ですから恨みを持つひともいないことはないですし。
それなら、スワロは、足跡が付かないタイプで良かったのかなあ。スワロの方がご主人より、そういうところはうっかりしているかもしれません。
「別にお前はそんなことはねえよ。本当は足のあるタイプのデザインでも良かったんだがな」
とご主人。
そうなんですか?
「前にも言ったかもしれねえが、本当はヒューマノイド型な理想なんだが、ヒューマノイドタイプは、すげえ難易度が高くてな。金もかかるが、その前に俺みたいなのには、まず許可が下りねえ。ヒューマノイドは、一般市民が所有するの、原則禁止されてるからな」
そういえばそうでした。
お金持ちや上層の市民のひとには、許可もされている場合もあるのでしたっけ?
「まあでも、もうちょっと、生き物に近い形でも良いかと思ったんだけどな。もろもろの機能とか、メンテナンス費用とか考えて、今の形になったわけだ。お前のメンテナンス代、今でも高いから、足つけるとあがるらしくて」
うーん、と考え込むご主人。
スワロのメンテナンス費用が高いのは、知っています。それには申し訳ないって思っちゃいますよ。
ご主人が、改造をしているとはいえ、もう旧型のスワロをまだそばに置いてくれるの、スワロだって嬉しいと思っています。
そんなおはなしをきくと、スワロもがんばらなきゃなって思います。
おばけはこわいけど、何か使えるものを探してご主人の収入にしないといけません。あと、おこづかいだって貯めて、ブローチ買ってあげなきゃ。
スワロはがぜんやる気が出ました。
ほこりっぽい部屋の中で、何かないか探します。けれど、がさがさ探していると、上から何か降ってきてスワロに絡み付きました。
わ、わー! なんですか? これ!
攻撃された?
センサーに何もなかったはずです!
おばけ??
おばけかも!
床に落とされて暴れて、なんとかなにかを振り払います。
「おいおい、ひとりで何やってんだ? カーテンが、破れて落ちてきただけだぞ」
ご主人が、あきれたようにのぞいてきました。
カーテン?
そう言われると、レースのカーテンの残骸がありました。うう、びっくりしました。
なるほど。破れていて軽いものなので、スワロのセンサーにすぐに引っ掛からなかったみたいです。センサーに引っかからないなんて、おばけみたいです。
……そう考えると、これよりこわいんだから、……やっぱりおばけこわいな。
「あーあ。こんなに埃たてやがって」
ご主人が部屋に入ってきて、スワロを拾いあげます。
「お前も埃まみれじゃねえか」
ご主人は、スワロを手で払ってくれました。
「うーん、帰っていつも通り水浴びしてから、クロスで拭いて手入れしてやるが、細やかな隙間にほこり入ってそうだな。明日、俺が洗ってメンテしてやろうか?」
う、うん。そうですね。そうしていただけると助かります。スワロのクリーニング機能でも、取りきれない汚れもありますし。
「お前は基本おとなしいやつなのに、時々思い出したようにじゃじゃ馬になるんだよな」
ご主人はため息混じりで苦笑します。
「やっぱ、足跡つくような埃の溜まったところは、むやみに歩くもんじゃねえよ。お前に足があったら、もっととんでもねえことになりそうだ」
むー。今のはちょっと気合を入れて、失敗しただけです。
スワロは、ご主人がスワロの手入れをしてくれるのはちょっと嬉しいんですけれども、おてんばみたいに言われるの、しんがいです!
でも、スワロが本当に足があって、もうちょっと人間に近い場合、ご主人にお手入れされるの、あんまりよろしくないのかなあ。
スワロは別に女の子でも男の子でもないんですけれども、何となく見かけがアウトな感じになりそうですし、ご主人も自分でやれっていいそう。
ちらりと床の上を見ると、ご主人の大きな靴の後に、さっきスワロがつけた丸いあとが並んでいました。
足跡があるの、おばけと違うところです。
足がなくても、ご主人にメンテナンスしてもらえるし、おばけとも違うんですもの。
今のままで、スワロは良いかな。
と、ご主人の肩に乗せてもらいながら、スワロはこっそり思います。
スワロのおこづかい帳
残高:1,300円(+100円)
メモ:今日は帰りにスーパーでとくばいひんを買いましたので、ちょっとだけ節約できました。ウィスがあと風鈴を一つ売ってくれそうですし、今日はコーヒーカップのセットを見つけたのでこれを売ってもらえそうです。今日の貯金は少しですが、明日はもうちょっとたまります。
目標まで8,700円