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スワロとご主人 〜スワロと夏のおこづかい帳〜  作者: 渡来亜輝彦


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33/33

31:夏のプライベートツアー(ノスタルジア)

 こんにちは。こちらはスワロです。

 スワロは戦闘用アシスタントです。スワロがいないとダメな、ちょっとしゃかいふてきごーな世話のやけるご主人と暮らしています。

 スワロがちゃんとしてあげないと、ご飯は三食食べないし、昼夜は逆転するし、とにかくダメダメなのです。だから、スワロがご主人のお世話しているんですよ。

 お買い物やお料理、おせんたく。

 スワロはとっても忙しく、夏の毎日もすごしています。



 今日は、少し涼やかな日ですが、お空がとても青いです。

「それじゃあ、目標の座標はこちらですからね」

 タイロが、今日の標的の位置を教えてくれます。

「この間、補修していただいたおかげで、その辺の道は完璧みたいなんですけど、その辺りでまた囚人が出没してるみたいで。で、道が壊されないうちに、ユーレッドさんに何とかしてもらおうかなってことみたいですよ」

 今日は、タイロとお仕事の話です。

 今日もオートバイを持ち込んで、ハイウェイ跡地関連のお仕事があるのでした。ご主人はすでにバイクをスタンバイしています。

「そうそう、あっちの部署でも、仕事ぶりが丁寧だって褒めてました。なんで、俺にぜひこの間と同じひとに頼んでほしいって」

「チッ、役人に褒められたって、別に俺に何の得もねえよ」

 ご主人は、舌打ちします。が、ご主人、褒められるのは好き。本当は絶対嬉しいと思います。

 ご主人はすぐに悪ぶるんだから。

「それで、今日もこの補修材を持っていってもらいつつ、脅威排除をおねがいします、ってことですね」

「しょうがねえなー。まあ、たまにはいいか」

 ご主人は肩をすくめつつ。

「お前が頼むから、受けてやってるだけなんだぜ」

 またそんなことを言っています。

「へへー、ありがたく思っていますよ。それはそうと、ユーレッドさん、今日、気合い入った格好ですよね。それって新しいスーツでしょ? カッコいいですね!」

「おっ、そうかぁー!? お前、流石にみる目があるな。夏冬に対応できる温度調整もついてる上に、見た目も良いんだよ」

「本当ですね! よくみると模様入ってて、キラっとしてカッコ良いですよ」

 タイロ、あんまり言うと、ご主人の趣味が悪くなっちゃいますからその辺にして欲しいです。

「この服だと、フォーマルなパーティーとかでも行っても大丈夫そうですね」

「おう。それもあってな。お前らに頼まれる案件は、そういうのもあるだろ。ちょっといい服でも持っとかねえとと思って」

 なんだかご主人、ちょっと格好つけてますか?

 今日のご主人は、例の織りの入った新しい白いジャケットスーツを着ています。赤いシャツに、名状しがたい変な模様のネクタイをしています。骸骨のネクタイピンは、タイロにもらったものです。いつもご主人は胸ポケットには大体ハンカチ入れてますけれども、それには香水が少しだけ振られていて、ハンカチが落ちないよう、お花のヘアピンとめています。

 そんなところに、今日は、胸にあのときのコサージュとブローチをしています。

 とても豪華です。が、荒野にお仕事にいくだけなのに、そんなに豪華にしなくても良いんじゃないかなって、スワロは思ったんですけれども、それで良いって、ご主人は言います。

 ご主人はスワロにも、かわいいお帽子をかぶせてくれています。そこにはピンバッジを付けてくれました。そして、お花の小さなコサージュ。

 あの後、知ったんですけれども、箱の中にもうひとつ、お花がはいっていたんでした。

 まりんちゃん、スワロ用のミニチュア版のコサージュを作っていたんですよ。

 それはピンバッジと組み合わせられるようになっていて、ご主人とおそろいにできました。

 とてもかわいくてきれいです。

 ご主人とおそろいなんてなーって思いましたが、かわいいし、たまには良いかなって思います。

「それ、この間のコサージュなの?」

 タイロが小声で聞いてきます。

 そうです。あのときは、タイロのおかげで助かりました。

「えへへ、俺は別に何もしてないよ。ただ思いつきで言っただけだし。でも良かったね。娘さんがそういうのが得意な人だったとは。正直、ユーレッドさんも、ブローチだけより、コサージュがある方が華やかかつ渋めで似合ってると思うんだ。作戦、成功して良かったね、スワロさん」

 本当です。今回はタイロとウィスにはとてもお世話になりました。今度お礼をしますね!

「しかし、こんな夏の空の下、デスクワークがあるとかかわいそうだなあ、お前」

 バイクに荷物を固定していたご主人が、声をかけてきました。

「それはいわないでくださいー。本当、泳ぎに行きたいですよ」

「はは、公僕の鑑だなあ。まあ、かわいそうだから、仕事熱心なお前に、後で飯でも奢ってやろうことにしよう。仕事終わったら連絡くれよ。肉でも奢ってやる。夏と言ったら肉だよな」

「本当ですか? ユーレッドさん」

「おうよ。なんでもいえ」

「マジですか? ユーレッドさん、神ー! それじゃ、ビアガーデンいきましょう! 夏といえばビアガーデンです!」

 タイロは相変わらず調子がいいですね。

 まあ、それがタイロのよいところですが……。

「それじゃ、気をつけて行ってきてくださいね。よろしくお願いします」

「おう、任せときな」

 タイロに送られてご主人とスワロは、オートバイで荒野の方に向かいます。


 *


 今日の天気は晴れ。

 今日は前行った所よりも、ちょっと遠い所も含んでます。

 ハイウェイ跡地を、ご主人はずんずん飛ばしていきます。

「今日はツーリング日和だな。そんなに暑くないしな。風が心地よいぜ」

 それは良かったです。

 でも、スワロ思いますよ。

 ご主人、ツーリングだったら、もう少しバイクスーツみたいな着てきた方が良かったんじゃないですか?

 確かにその服は戦闘服も兼ねているし、バイクスーツ並に丈夫なんですけれども、何かイメージ違うような。

「いいんだよ。新しい服も着たかったしな」

 ご主人が、子供っぽい新物食いという事をスワロは知っています。でも、今日のご主人、それだけではないような。

 いくらご主人でも、普段は、ブローチやコサージュで飾り立てて荒野に行こうとしたりしませんからね。

「せっかく、お前にツアーリーダーのブローチもらったんだからな。……昔みたいな楽しい場所のガイドなんざあできないが、お前相手にツアーの真似事するのも、悪くないと思って」

 ご主人が、少し照れた様子で言いました。

「お前一人のプライベートツアーだぞ。贅沢だと思えよな」

 それをきいて、スワロ、うれしい気持ちが湧き上がりました。ちょっと悔しいですが、ご主人と二人だけのときも、たまにはこうやって嬉しくなっちゃうのです。

「でも、俺なんかにあんまり気をまわすなよな。俺はお前のマスターだし、俺がお前のためになにか買ってやるのは、当たり前のことだからよ。俺たちはそもそも、無二の相棒つうか。お前のことはただのアシスタントだなんて思ってないんだから」

 ご主人が、そういって肩にいるスワロを軽く撫でます。

「もうずいぶん付き合いも長いが、今後ともよろしくな」

 ご主人は、大きな手でスワロをなでて軽くぽんぽんとたたきます。

 ご主人の手。やっぱり、スワロは好きです。

 大きくて安心感があってあたたかいです。


 ハイウェイ跡地を走っていると、目の前に海が見えてきました。

 あの観覧車だったものの骨組みが、海に沈んでいます。

 今日の海は、夏の昼らしいとろりとした空気をまとっています。

 夕暮れのキラキラした海も、郷愁を誘う感じでしたが、真夏の太陽に照らされているのも、また違う感じですが、ふとスワロは懐かしいような気持ちになりました。

 遊びに行く日の、朝の海はさわやかでキラキラしています。一方、午後の気配を感じさせはじめると、海は、少し空気がよどんでとろりとして、暑さで少し歪んで見えます。

 今日はまだお昼でもないのに、スワロは昼の気配を感じさせる海と観覧車を見た気がしました。

 まるで古いカメラで撮った写真みたいに、レトロな黄色みを帯びているようです。

 ちょっぴり夏の疲れを感じさせる、甘く切ない感じ。

 スワロはあの遊園地に行ったことがないと思います。それなのに不思議に、どこか懐かしい感じがしました。

 レトロなカメラで撮られた写真を、おもちゃばこの中から見つけたみたいな気持ちです。スワロは、あそこのことを知っていたことがあるのかな。

「そういえば、スワロ。あのこづかい帳、まだ使っているのか」

 はい。まだページたくさんあります。

 スワロはきゅっと鳴いてお返事します。

「じゃあ、また新しい目標でも作るのか?」

 そうですね。まだ『みてい』ですが、夏はまだ始まったばかりです。次の目標をたてておこづかいためるとも良さそうです。

 それに、おこづかい帳、なつやすみの宿題の日記みたいで楽しかったです。

「夏休みの宿題の日記か。そうだな、そういうの、教育にいいってオオヤギも言ってた」

 そうだ。今度は、今回のお礼にウィスやタイロといっしょに楽しめるお金をためるのも良いですね。

 そうだ、スワロ。夏の終わりにリゾートプールで、バーベキューパーティーをしたいです。それならみんな参加できます! まりんちゃんだって!

「はは、それはいいな。よーし、引き続き、貯めていいぜ」

 次の目標が決まりました!

 スワロ、夏の楽しみのためにまだがんばりますよ!


 夏のあたたかな海は、緑の多めの青い色をして、海面をキラキラ輝かせています。そこに、わたがしみたいな雲が高く立ち昇っています。観覧車の骨組みがそこに色を添えています。

 懐かしくなるような色合いをのぞかせるそれを、スワロとご主人は眺めています。

「夏だなあ」

 ご主人がぽつりといいます。ご主人は、あの観覧車がやっぱり好きなんですね。朽ち果ててしまっても、きっと忘れられない過去の思い出なのです。

「ここの風景、いつだってきれいだったが」

 そういうご主人の胸には、コサージュに包まれた観覧車のブローチがありました。

「あいつが消えちまっても、これからもずっと綺麗なんだろうな。いいロケーションだよ」

 ご主人はそういって、スワロに笑いかけました。

 そうですね、ご主人。

「さて、一仕事しに行くか」

 ご主人は、そういってスピードを上げました。

 さわやかな風が、スワロとご主人にふきつけます。


 今日も良い日になりそうです。


スワロのおこづかい帳

残高2,000円

メモ:夏の終わりまでに、バーベキューの資金を貯めることにしました。でも、いちまんえんで足りるかなと心配ですね。タイロ、ビールとか飲みそうだしな。まあよいか。足が出たらご主人たちになんとかしてもらいましょう。

目標まで8,000円。

【スワロとご主人 〜スワロと夏のおこづかい帳〜 了】

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