20:ラッピングぷろじぇくと(包み紙)
「スワロちゃん、お小遣い、貯まった?」
ウィスにたずねられて、スワロは持ってきていたおこづかい帳をみせます。
「わあ、かわいいわね。きれいにシールも貼れてるし」
えへん。
スワロも、ウィスにもらったシール貼って可愛くしたんですよ。
ご主人がお仕事の後、立ち寄ったバーにちょうどウィステリアが来ていました。ご主人とお仕事のお話の後、ウィスはスワロとお話ししてくれます。
「あと三千円くらいか。もうすぐだね」
そうなんです。ウィスのおかげもあって、もうちょっとでゴールです。ただ、ちょっと足踏み中なんです。
「そうだ。買うものはブローチなんでしょう。ラッピングは決めてあるの?」
ラッピング!?
そうか、ラッピング……それは盲点でした。
「お店の人もしてくれると思うけれど、旦那の行きつけの仕立て屋さんよね。あそこのオヤジさん、そんなにかわいいラッピングしてくれる感じじゃないかな」
うん、スワロもそう思います。
いや、別に、かわいいのが似合わないご主人に渡すんですから、かわいくなくてもよいんですが……、おこづかい帳もこんなにかわいくしたのに、プレゼントが箱だけはさみしい気がしますね。
「それなら、明日、あたしとラッピングを見にいく? 前もって準備していても良いかもしれないもんね」
それは願ってもないです。ウィスならかわいいの、選んでくれそうですもん。
「お前ら、なにこそこそ話してるんだ?」
獄卒仲間と談笑していたご主人が、ふとこちらにやってきました。
「なんでもないわよ。明日、スワロちゃんとお出かけしていい? 服を買うんだけど、スワロちゃんの意見を聞きたくて」
「はァ? 勝手に好きにしろよ」
ご主人はぶっきらぼうに答えますが、スワロは知っていますよ。ご主人、スワロとお出かけするのを許可してくれる相手のことは、信頼してますからね。
*
翌日、スワロはウィステリアとおでかけしました。
「あの店頭に置いてある観覧車のブローチね。あれ、とても素敵だし、旦那にとても似合いそうだわ」
ウィスとスワロは、仕立て屋さんのショーウィンドウをちらっとみてきました。道から見えるところにあのブローチがあります。
「スワロちゃんのピンバッジと一緒なんだね」
はい。この間もらったピンバッジです。
スワロは、今日はほんのり『すちーむぱんく』な雰囲気のかわいい帽子を被せてもらいました。そこにあのピンバッジを飾ると、とても良い感じです。
「箱に入れてくれるだろうから、包装紙でつつんでリボンをかけましょうか。どんな柄にする? 男性向けだと色はブルー系? でも、旦那は暖色系のも好きそうだよね」
ウィスにそうきかれて、スワロも迷ってしまいます。ご主人は確かに派手な色が好きだから、目立つ包装紙でもとても喜んでくれそう。
「リボンやシールなんかに凝ってみるのもよいわよね。タグとかメッセージカードつけたり」
うんうん。それはおしゃれで素敵です!
ラッピングするだけでこんなにたくさんあるなんて、奥が深い世界ですね。
と、不意にウィスに電話がかかってきました。
慌ててウィスが電話に出ます。
「ああ、そう、わかったわ」
お仕事の電話みたいです。
「それは困るわね。そこのあたしの伝えていた件については、準備ができて? そこはしっかりしておいて欲しいわ」
ウィスはお仕事の電話が入っています。
「やり方は伝えていた通りよ。そこのところは、全部つぶしてあるし、情報も伝えてる。後はそちらでよろしくね」
ウィステリアは、そういう時はキリリとしています。姐御肌の気の強い女性という感じです。ステージ衣装も色気のある感じで、お仕事の服もビシッとした服が多いのです。
ウィスのことを、ちょっと怖いやりてのおねえさんだと思っている人は、結構多いと思いますが……。
「あっ、ごめんね。スワロちゃん。電話が入っちゃって。さ、行きましょう!」
ウィスは、今日はフェミニンな印象の、大人っぽくも可愛らしいワンピースを着ています。
「あっ、これ。に、似合わないかな?」
そんなことないです。ウィスにはよく似合っていますよ。
「そうかな。ありがとう。あたし、かわいい服も着てみたいんだけど、普段がああだからね」
ウィスは、そう言ってちょっとほおを赤くします。
「今日はスワロちゃんの帽子がとてもかわいいから、あたしもかわいいので合わせて良いかなって思って、せっかくだから着てみたんだ」
ウィステリアは、本当は、お嬢様みたいな子なんです。本当は姐御っぽいのも、セクシーな歌姫なのも、がんばってそうしているってスワロ知っています。
本当はかわいいお嬢さんなのに、クールな包み紙で自分をラッピングしてるんだなって思います。それだけに、ウィスがスワロにはお嬢様なところを見せてくれるの、なんだか心開いてもらってるみたいで嬉しいです。
「色んな包装紙があるもの。お店で色々みてみましょう」
ウィスの提案に、スワロがそうのりかけたところで、不意に角でばったりとご主人と会いました。
あれ、来ていたんですか?
「あ、あー、その、近くを通りかかったら、スワロを見つけたから、お、お前らが仲良くやってるかな……と思って」
ご主人、わかりましたよ。
スワロとウィスが心配になって、こっそり着いてきたんです?
かほごですね!
「いやその、ウィスの着ているものの雰囲気違うからよ、見間違えたと思ってな。スワロも見失ったので帰ろうかと思ったとこだったんだよ」
「あ、そ、そうだったわね。に、似合わないかな?」
ウィステリアにそういわれて、ご主人は珍しく、
「そ、そんなことねえよ。だ、大体、服くらい、好きな服着りゃいーじゃねえか」
ご主人、珍しく悪態つきません!
ここで悪態ついたら、さすがにスワロも制裁加えようと思いましたよ。
「その、普段の服より、いいんじゃねえか」
ちょっとウィスがほおを赤くします。
「じゃあな、俺は用事済ませて帰るから」
ご主人、なんやかんやで挙動不審に帰ってしまいましたが。
そうだ、ご主人、かわいいのが好きですもんね。
ご主人は、ウィスのステージ衣装に難しい顔していることがありますが、多分、素のお嬢様なおようふくのウィスがすきなんだと思います。
ご主人は、ウィスが本当はかわいいお嬢さんなんだってわかってるのかな。ちょっと見直しますね。
でも、やはりそれなら、ラッピングはかわいいのにしましょう。レースとかもつけても良いですよ。
「えっ、かわいいの? 旦那、そんなので良いかな?」
我に帰ったウィスがそう尋ねてきました。
大丈夫です。ご主人、かわいい方が好きですもの。
スワロのおこづかい帳
残高:6,800円(+300円)
メモ:ウィスから暗号文の解読のお仕事を受けました。今回は簡単だったのでちょっぴりだけ報酬をもらいましたよ。あと、新しいキラキラシールももらいました。うれしいので早速貼ってしまいます!
目標まで3,200円




