19:ねったいやではない夜に(網戸)
スワロは、今日は朝からせっせとはたらいています。
ご主人は朝陽の中、気持ちよさそうに寝ています。まあ昼まで起きてこないかな。
スワロは、朝からお掃除しているのです。
窓を開けて、まずはほこりを払って、洗剤のスプレーをしゅっしゅ。あわあわしたところが早速真っ黒になっています。
うーん、雨が降っていましたからね。
汚染された雨の降る、ここの『あみど』のおそうじはなかなか手強いのです。
*
夏のシャロウグ管区は『ねったいや』がつづきます。
ただ、昨夜は意外と涼しく、深夜の散歩にいったご主人も「今日はちょっと涼しいよな」というくらい。快適そうな夜です。
ご主人は基本暑がりですが、かと言って元から痩せ型ですし、あまり冷房を強くする必要もないらしいです。
こういう時は、冷房を使わずに窓を開けて寝るのも一興らしいです。
「なんつーか、特に初夏のあたりの、梅雨になる前くらいの、涼しい爽やかな時期があるだろ。ああいう時に窓開けて昼寝するの、すげえ良いんだよな。心地よくて」
窓を開けながらご主人は言います。
「さすがに真夏の昼間にそんなことしてられねえが、夏の夜風がすーっと網戸から入ってくるのも、なかなか良いんだ。……つうて、最近は暑くて熱帯夜ばかりだから、そういうのもなかなか体験できねえわけだが」
こういう機会は貴重なんだぞ。とご主人。
ご主人は、特にふーりゅーな人ではないんですが、時々、四季の楽しみとかをスワロに教えようとしてきます。スワロの情操教育っていってます。
とかいって、ご主人、荒野でキャンプすることもありますよね。夜風の中で寝るの、そこまで珍しくないのでは。
「まあ、アレは、軍事的な感じの野営っつーかだが。あれはあれで、アウトドア感あって好きなんだがよ。……ああそうだ。今度、タイロも連れていってやっても良いかもしれねえな。荒野はあぶねえ場所だが、自然山盛りだし、うん、夏といえばキャンプだもんな。てことは、飯盒とかも倉庫から引き出してこなきゃなー」
ご主人、なんだかニヤニヤしています。
うん。
窓開けるだけで、新しい遊びの予定が立てられてよかったですね。
しかし、窓からは気持ちの良い風が入ってきます。
と、ここまではよかったのですが、
「あれっ? なんだ、網戸、すげえきったねえな。この間の雨で汚れたか?」
あっ、本当ですね!
スワロもいつも窓をお掃除しているのに、うっかりしていました。
あみどは、黒い汚れでもわもわしたものがついています。
「あと、結構、破れてやがるのな」
ご主人が言う通り、あみどの網が破れています。これでは、虫が入ってきちゃう。
ご主人、あまり虫に咬まれる方ではないらしいんですが(体質的なもの?)、たとえ咬まれなくても、蚊が耳元で飛ぶ音には我慢できずにキレるので、破れたあみどでは安眠は期待できません。
そう、ご主人は、あまり目が良くないので、聴覚が過敏なんですよね。それなもので、飛ぶ虫の襲来にもすぐ気づきます。
かつての地獄絵図を、スワロは思い出します。
「ふざけんなァァア! 虫ケラが俺の安眠を妨害しようとかよぉ、千年早ええんだよぉお!」
あまりの不快感に、布団を足で蹴飛ばしながら、悪役丸出しな台詞をスプレー缶を手にして起き上がるご主人。
「てめえらの殺気は読めてるんだからなァア! 殲滅させてやる!」
ポーズは決まっていますが、いや、それ、全然、カッコよくないですよ!
真夜中にキレて殺虫剤を噴射しまくり、さらには、『ちゅうにびょー』のようなせりふをはいてハエ叩きを高速で振り回すご主人。
あれこそ、真夏の真夜中の地獄絵図。
ご主人、殺虫剤そんなにまいたら、お部屋が大変なことになりますよ。油っぽくなって、お掃除大変なんです!
その時は、スワロが蚊帳を設置してあげましたが、ああならないようにしたいですよ、本当。
スワロは、虫が入ってこないうちに、ご主人にいいました。
ご主人、今日はあみどは諦めて、冷房かけて寝ましょう。
「うーん、そうだな。せっかく風鈴の出番だったのにな」
それはスワロも残念です。
この間手に入れた風鈴、エアコンの風にはりんりん鳴っていますが、最近暑くて窓を開けないから、自然の涼しい風に吹かれることがなかなかありません。
今日こそ、自然の風に吹かれる機会があったのにな。
そう考えると、一刻も早くあみどはきれいにしなきゃです。
だから、スワロは、朝からあみどの掃除に取り組んだのでした。
*
あわあわの洗剤を伸ばして水拭きします。
うーん、これは、ずいぶんよごれていますね。……こまめなお掃除が必要です。
あみどの細やかな網目が、もわもわした黒い汚れで目詰まりしています。これはいけませんね。
大体、この汚れは、都会のちりあくたも入っていますが、汚染された雨の汚れもあるのですから、いろんな意味でよくないです。
スワロは細かくお掃除していきますよ。
あみどは、何度か水拭きしてようやくきれいになりました。
次は破れです。
破れたところは、補修シートをぺたっと貼ります。張り替えしたいですが、ひとまず応急処置です。
うん、きれいです!
一通り見られるようになったので、まどぎわに風鈴を吊るして出来上がりです。
まだ朝の時分、風が風鈴をりんりん鳴らします。
うーん、いい音です。一仕事したあとですしね。
でも、まあ、風はもうかなり生ぬるいですね。
ん、……いや、熱風?
温度計みるに、これは涼しくないです。
「んあー、スワロ、何やってんだ? なんか暑い風が入ってくるんだが」
ご主人がもそもそ起きてきました。
目をこすりながら、まだ眠そうです。
「なんだ、網戸きれいにしてくれたのか。それはありがてえけど、熱風入ってきてるから、閉めて冷房かけろ。俺はまだ寝るぞ」
むう!
せっかく、スワロが朝からきれいにしてあげたのに!
そりゃあ、熱風入ってきてますけども!
いたしかたないこととはいえ、そのままベッドに戻って三秒で寝落ちしたご主人に、ちょっとむむっとしましたが。
仕方なく窓を閉めて見上げたら、あみど越しに青いお空が見えました。あみどに太陽の光がきらきらしています。
わあ、きれい! これは気持ち良いです。
ご主人にはちょっと腹立ちますが、こんなにいい景色みられたのは、ちょっとご褒美感ありますね。
お掃除がんばって良かったです!
今夜こそ、ねったいやじゃなくて、網戸を開けて、夜の風の中、寝られると良いなって思いました。
スワロのおこづかい帳
残高:6,500円(+200円)
メモ:今日も日々の食費を節約しています。とくばいびもこまめにチェックしないといけないので、お掃除したあとの朝の時間でチラシをチェックしました。毎日少しずつでも、ためるの大切です。
目標まで3,500円