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1:ご主人、スーツを仕立てる(まっさら)


「おー、これ、なかなかいいな」

「旦那、よくお似合いですよ」

 ご主人が何やら嬉しそうです。

 本日は仕立て屋さんにきています。

「新しい素材ですが、今まで以上に動きやすい上に、柄も豊富でね。生地も良いでしょう?」

「おお、気に入ったぜ。この絶妙な煌めき、良いな」

 ご主人、戦闘用のスーツを仕立て直しにきているのです。

 戦闘用のスーツと言ったって、ご主人の場合見かけはジャケットスーツなんですけどね。いわゆる背広ってやつです。

 何でも普通のジャケットスーツと違って、伸縮性などが良かったり、汚れの耐性が高かったり色々すごいものらしいです。

 まあお値段も結構するんですけれども。

 スワロとしては、ご主人に普通のタクティカルスーツみたいなのを着て欲しい、っていう気持ちもあるんですけれども、ご主人はこういうのが好きみたいです。

「俺はこれでも、元はそれなりなんだ。チンピラみたいに思われるのは癪だからな。ちゃんとしてるってところを表現してる」

 と、そんな風に偉そうなことを言ってたご主人です。

 確かにご主人は、ジャケットスーツにワイシャツ、ネクタイをビシッと決めています。が、

ご主人のスーツは白いのが中心。ワイシャツは基本が赤いカラーシャツ。ネクタイは変な柄物。

 個性的な謎の柄が入っていたり、花柄が入っていたり、何でこんな服を作ったんだろうと思うものが多いです。

 今日着ているのは、比較的普通ですが、それでも真っ白なスーツ。

 新しくするのも、真っ白なジャケットスーツですが、また輝きがひとつ違います。なんだか素材のせいか、日光でぎらついている気がします。こっそり、変な模様が織り込まれていますよ!

 こんなものを着るのは、ヤのつく自由業の人だけだと思いますよ。

 それに、ご主人、本当にファッションのセンスがどうかしています。

 そんなことを考えているスワロの前でも、ご主人はご満悦。

「よし、じゃあ、コイツで頼むぜ」

 ご主人はそう言ってオーダーを決めてしまいました。

「いやあ、やっぱり、まっさらなスーツは良いよな。俺はそんなにきれいな生き方してねえが、真新しい真っ白な服着ると生まれ変わったかのような気持ちになるぜ。ちょいと予算はオーバーしたが、出来上がりが楽しみだな、スワロ」

 ゴキゲンなご主人は、そう言っています。

 良い気持ちになるのは良いですが、真っ白いなスーツは、ガラの悪さもあるの、気づいて欲しいです。

「しかし、色んなもん、仕入れてるな」

 今は、仕立て屋さんが、なにやら確認している間の待ち時間です。ここの仕立て屋さんは他にも色んなものを取り扱っているので、店内を見ています。

 ネクタイピンやハンカチ。ちょっと特殊な仕様のものもあります。あとブローチやコサージュ。男物も女物も色々。

 と、その一つにご主人は目を止めました。

 なんだか文字を崩したような不思議な意匠の中に、花火と観覧車を綺麗なガラスで模ったブローチです。

「これは……」

 ご主人がいつもと違う反応をしたので、スワロはちょっと不審に思って尋ねようとしましたが。

「おや、旦那。それが気になりますか? そいつは、管理局の上層の人がつけていたブローチなんですよ。新しいスーツは華やかなパーティーなどにも出られるものですし、旦那ならお似合いそうですから、一緒にどうですか?」

「あー」

 と、ご主人。少し間をおいて、何か取り繕うような表情になりました。

「いや、そんな華やかなとこ、プライベートでも仕事でも行かねえからな。ははっ、俺には上品すぎるぜ。第一、今でも予算オーバーだしな。使わねえもんに手が出ねえよ」

 むむ。

 スワロはご主人の顔を見て思います。ご主人、このブローチ、間違いなく欲しそうでした。

 いざとなるとお高いものでも平気で買っちゃうひとなのに、遠慮するなんて変です。

 確かに予算オーバーしています。ブローチを買いたいというと、無駄遣いだってスワロが怒ると思ってるのかな? でも、そんなことで止まるご主人でもないし……。

 ねだんは、いちまんえん。

 うーん、確かに安くはありませんね。


 帰り道。

 やっぱりスワロはあのブローチが気になります。

 ご主人、変なところで素直じゃないから、本当のことは言わなさそうだし、でも、未練ありそうでした。

 そうだ。

 ここはスワロが気を利かせて、こっそりおこづかいをためて、プレゼントしてあげましょう。いちまんえんならなんとかなります!

 早速、ご主人に相談です。

「なに? 欲しいものがあるからお小遣いが欲しい? んー、欲しいもんあるなら買ってやるが、まあ、小遣いの管理も情操教育にはそういうのも良いんだっけ」

 ご主人はそういいつつ、

「いいぞ。じゃあ、生活費の買い物で余った分と、俺が持ってきたブツで、お前が売り先探してきたら取り分を小遣いにして良いぞ」

 よし。ご主人と話の取り付けができました!

 とはいえ、一日、百円ずつ貯めても百日。

 うーん、スーツができあがるまでに買えるかな。

 スワロ、がんばります!


スワロのおこづかい帳

残高 0円 

メモ:今日からおこづかいを貯めていきます。

目標:10,000円


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