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スワロとご主人 〜スワロと夏のおこづかい帳〜  作者: 渡来亜輝彦


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16/33

15:ご主人の暗号日誌(解読)

「Allright」

 ご主人が通信中、スワロは暗号をかけています。

「But the investigation’s gonna be a real pain in the ass.」

 けれどもそれは普段喋っているJ共通語と違う別の言葉です。

 ちなみに、調査が面倒くさくなりそう、っていってます。

 こう見えて、ご主人は意外と多言語に堪能なんです。

 普段、この管区で話されている言語は、主にJ共通語です。一方、ご主人はパソコンプログラムなどでも使われている、A共通語がとても得意です。

 A共通語はそれでも比較的話者はいますが、管区内にはそこまで多くなく、ちょっと機密性の高い話題を振るときに、ご主人はA共通語を使います。

 さらに人に聞かれたくない時は、R共通語も使っています。

 もちろんそれだけでは完璧ではないのですが、比較的聞き取れる人が少ないので結構使っています。

 電話などの通信の時は、更にスワロが暗号化しますから傍受の危険性は低まりますよ。

「We’d better lock in the rendezvous point coordinates ahead of time—just in case(念のため、集合場所の座標を決めておかねえとな)」

 今日の相手はウィステリアですが、ウィスに管理局の任務を頼まれたのでしょう。

「よし、じゃあ頼むぜ。また連絡しろ」

 ご主人は元のJ共通語に戻ります。

 ご主人、本当、A共通語は堪能です。

 本当は、別の言葉も喋れるみたいですが、補助アイテムや翻訳を使わずにペラペラと喋れるのはA共通語とR共通語ぐらいだと本人は言ってました。

 J共通語が優位なのは、もともと、その言葉を話されていた文化圏のひとのあつまりだったから、ということらしいです。このハローグローブのなりたちの事情は、あまり管理局から開示されていませんが、何かしらの理由でその言葉を話すひとたちが極端に多く存在したためだという話は、スワロも聞いています。

「スワロ、暗号化ご苦労」

 ご主人は、通信を終えて左手のウェアラブル端末から電話を切ります。ご主人は、通信の時は手元の端末を使う派です。

「聞いてたろ。まったく、面倒な任務押し付けてきやがって! エリックのやつ、ウィスを通せば、俺がなんでもやってくれると勘違いしてやがる!」

 エリックというひとは、ウィスの上司のひとですんごく偉い人らしいですが、ご主人はかなり嫌いみたいですね。

「まったく。なんで、俺が傍受を気にしてやらなきゃなんねーんだ。そっちで暗号化しろよな!」

 ご主人はそう言い捨てて、ふてくされたようにソファにごろりと横になりました。

 そうこうしている間に、ご主人のスマートフォンに資料が送られてきていますが、きっちりと厳重な暗号がかかっています。これはスワロが解読してあげないといけませんので、早速解析にかかりますが、ご主人、すぐに資料読まないだろうなあ。

 

 こんな事情もあって、スワロは暗号の解読も得意です。

 もともと、スワロにはそういう機能はありますが、ウィステリアとの付き合いで、より繰り返して練習したので、とても得意になりました。

 さっきの資料データとは別に、ウィステリアから難しい暗号のかかった資料の解析を頼まれることもあって、それはスワロのちょっとしたアルバイトなんです。

『スワロちゃん、いつもありがとうね』

 ウィスからは、結構感謝されますよ。


 ただ、そんなスワロにもまだ解読できていない手強い暗号が存在します。

 それは、ご主人の日記帳です。

 ご主人は、真面目に毎日日記をつけるような人ではないんですけれども、昔の仕事の日誌を手帳に書き込んだようなものが存在します。今でもごく稀に書いているみたいです。

 電子データでなくて、物理的に紙にペンで書いたものですが、これがめちゃめちゃ解読が難しいんです。

 そもそも、日記帳に鍵をかけています。ただ鍵を開けるのは難しくなくて、ご主人もたまに鍵を開けたまま放置しますから、第一関門はときどき突破できます。

 次に内容ですが、ご主人、左利きなせいか、鏡文字が得意なんですよね。まず知られたくないことを書く時は、鏡文字を使います。さらに多言語を混ぜて書いており、多くは得意なA共通語ですが、きっちり暗号化されていて普通には読めません。

 これがなかなか、難しくて……。

 ただ、この日記帳は、本当に古くからのものらしくて、解読できたらご主人の秘密が知れそうなもんなんですが……。

 そんな日記帳が、今日は、ご主人の椅子の上に開いたまま、ポーンと投げ出されています。

 大胆ですね。まあでも開きっぱなしで読まれないという自信があるのかも。

 気になっちゃいますね。日記読んじゃダメとは思いますが、これだけ、むぼーびに開いてるのですもの。ご主人の挑戦と受け止めちゃいますよ、スワロは。

 スワロ、最近、アルバイト暗号を解いているんですもの、前よりも読み解けると思います。

 でも、なかなか、これはむずかしい。

 どんなルールを使ってるんでしょう。

 なるべく簡単そうなところを探します。

 前のページの方、業務日誌みたいな数字の羅列のあたり、行ってみましょうか。

 と、鏡文字の中で、比較的簡単な暗号の文を見つけました。

 読める! スワロでも読めますよ!

『西棟の電気工事、一応終わったんだが、そのうち根本的に直す必要あり』

 ふむふむ。昔、お仕事していた時のでしょうか。

『Aから久しぶりに連絡。とても嬉しい。なにやら娘が派遣されてくるとかなんとか。歓迎の準備が必要そうだ。菓子を用意することにしたが、他にいるものはないだろうか』

 わあ、こんなに読めたの初めてです。

『どんな娘が来るのか、楽しみだ。できたら同じくらいだろうから、スワロといい友達に……』

 スワロ? とても古い日付です。こんなに昔からスワロはいませんよ?

 同じ名前のなにかがいたのでしょうか。

 そして、その後の文字が滲んでいて、更に暗号のパターンが変わっています。

「おーい、スワロ、何して……って、ぬあっ、何読んでんだよー!」

 ご主人が戻ってきて、慌てて日記帳を取り上げます。

 だって、ご主人開いたままで放置してるから。暗号化してるし、いいんでしょう。

「ゔっ。……いやまあ、読まれても簡単に読めるもんじゃねえからいいんだけど、この辺りのページは古いから、そのな」

 やはり暗号化に自信があったらしいご主人です。

 でも一部解読しちゃいましたけどねっ!

「ふん、そんな一部だけで、全部読み解いた気になるんじゃねえぞ。この日記帳の暗号は、そんじょそこらのレベルじゃねえのをかけてあるからな」

 ご主人、焦りながらもドヤ顔です。

「気になることがある? ふん、もっと中身を解読できたら教えてやる」

 そんなこと言いながら、慌てて鍵をかけるご主人。

 むー、もう少しだったのにな。

 でも、なんであそこに出てきたお名前、『スワロ』だったんでしょうか。やっぱりそれは気になりますが……。

 ご主人に、聞いても絶対教えてくれないと思います。

 ふん、ご主人がそんなに挑戦的なら良いですよ!

 次に日記が開いていたら、スワロ全部読みますからね!


スワロのおこづかい帳

残高:5,000円(+1,000円)

ウィステリアから暗号の解析のアルバイトを受けましたので、1,000円で引き受けました。ウィスはもっともらっていいよって言いますが、スワロこれでももらいすぎなくらいです。それにウィスの頼みですからね。ちょうど目標もスーツの受け取り日まで折り返しですが、なんとか50%超えました! 低調でしたが、ウィスのおかげで挽回できましたよ!

目標まで5,000円

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