13:倉庫に眠るファング(牙)
スワロは、今日は倉庫の整理をしています。
おこづかいをためるのが予定よりも進んでいないのもあって、スワロは他に売れるものがないか探しつつ、倉庫を整理することにしました。
ここはご主人が拾ってきたまま忘れちゃった物もあって、売れるものもあると思います。
ご主人は収集癖はありますが、一回手に入れると興味がなくなっちゃって、放置してるものも多いんですよ。
執着するようで、しないひとなんですよね。しょーじき、ご主人、とっても飽きっぽいです。
ともあれ、そうした物を活用しようかと、スワロはお掃除しながら探してみています。
一見がらくたなもの、機械の部品や子供のおもちゃみたいなのもありますね。ご主人に聞いたら、「そんな物もあったか? あー、売っていいぞ」っていうのもいくつかあります。
不用品がなくなっておうちがきれいになって、お金も手に入るなら良い事です!
やりがいのあるお仕事ですね。
そうこうしていると、スワロ、ちょっと不思議な物を見つけました。
何かの歯みたいな標本がいくつかあります。大型の肉食獣っぽいですね。
これ、きょうりゅうの牙でしょうか。大きい上に鋭いです。こんなのが出てきたら、スワロもひとたまりもないかも。
牙といえば、ご主人にも牙があります。八重歯っぽくて、なんとなく吸血鬼感あるんですよね。たまに笑った時にわかります。
それでなのか、ご主人、そういえば、牙のモチーフのアクセサリーをたまにしているのみます。ご主人だと、ちょっとガラ悪い感じになりますが、似合ってはいますよね。
もしや、自分も牙あるから、親近感があって持ってきたのでは? これで新しいアクセサリー作るのかな?
データベースを検索しても良いのですが、ちょうどとうのご主人がひょっこり顔を出しました。せっかくなので聞いてみましょう。
「おー? なんか見つけたか?」
ご主人ー、これなんですか?
「ああ、こりゃあ、博物館跡地から持ってきた牙の標本だ。恐竜やら絶滅動物の化石。売るにはちょっと貴重品だからなあ、と思ってな。しかるところに寄付でもするかと、しまってあるんだ」
意外とまじめな返答です!
「は? アクセサリーにするのに持ってきたんじゃねえのかって? こんなでかい牙、ペンダントにしたら首が凝っちまうぞ」
ご主人は肩をすくめます。
「あ、そういえば、ペンダントにしようと思って持ってきたのもあったな。その下にもう一つ小箱が入ってないか?」
そう言われて探しますと、確かに小箱がありました。
小さな木の箱を開けてみると、さほど大きくはない鋭い三角のものがいくつかあります。
これも牙みたいですが、さっきみたいに大きくないですね。
ご主人、これはなんですか?
「それは鮫の歯だぞ」
さめ?
スワロだってさめぐらいは知っています。
大きくて凶暴なおさかなです。
とはいえ、ハローグローブの多くの海は、汚泥に汚染されていますからね。
お魚はいて、さめもいるらしいんですけれども、危なくて海に近づくことはあまりないです。
お魚は養殖したり、きれいな海から運ばれてきたのがありますが、さめはスーパーにないですね。
水族館にはいるらしいですが、スワロ、まださめの実物を見たことはありません。
ご主人、さめの歯ってこんなに大きいんですか?
「こいつは特に大きいやつな、ほら、小さいのもあるだろう。あいつらは後ろからどんどん新しい歯が生えてくる。そんなもんだから、再生を司ることもあって、昔からお守りとして使われるのよ」
すごいですね。なかなか鋭いし、ギザギザです。お魚なのに、すごみがありますね。
「まあ、そうだろうよ。やつらも最強の生物として君臨してたことがあるんだからな」
すごいですね! 海で一番強いのは、さめなんですか?
「いや、まあもっと強い奴もいるにはいるんだけど。鯱とか。ただ鮫のが遭遇率高いしな」
ご主人が、あごを撫でながらいいました。
でも、ご主人、さめが強いのは分かりましたけど、ご主人なんで鮫の歯なんか拾ってきたんですか? これはさっきのより、貴重な感じがなさそうです。
「希少性はそうなんだが、鮫の歯をお守りにするってさっき言ったろう。魔除けの意味もあってな、アクセサリーにするのには良いんだ。で、そういう用途で持ってきたんだが、すっかり忘れてたぜ」
確かに、さめの歯、ご主人には似合いそうです。さっきの牙みたいなのの小さいのと一緒に、ジャラジャラさせると、特に似合いそうです。ただ、服装によってはますますガラが悪くなりそう。
ご主人、ガラが悪いのは、スワロ嫌なんですけれど。
「なんだよ、サメのは程度でガラ悪くなるはどのことないだろ。ちゃんとこうやって紳士っぽい服にしてるのに」
え、紳士? ご主人、まさか、いつも紳士のつもりなの?相変わらず、ご主人のセンスはどうかしています。
「ちょうどいいや。ペンダントにして、タイロにやろうかな。ちょうど夏だし。あいつ、まさかカナヅチじゃねえとは思うが、水そんなに得意じゃなさそうだし、魔除けちょうど良いかも」
確かに、タイロは泳ぎ、得意そうには見えないですね。
「それに、アイツ、なんかとおぼこいやつだからなあ。見た目だけでも、ごっつくチャラくしてやるか」
何言ってるんです、ご主人。
スワロは、タイロがごっつかったり、チャラかったりするのはちょっとやだなって思いますけれども。
まあでも、タイロなら、ご主人とちがっても、チャラくなったり、ガラが悪くなったりしそうにないです。ちょっと物騒なアイテムを付けても、かわいくなりそうです。
それに魔除けなら良さそう。夏にもぴったりですし、タイロ、意外と似合いそう。
「しかし、こんなに鮫の歯は要らねえな。それ、売っても良いぜ」
ご主人がそんなことを言います。
「今どき鮫の歯って希少品だからな。持ってったら高く売れるんじゃねえか」
そうなんですね。
さめかあ。スワロもさめみたことないですもんね。大きいのかなあ。気になります。
「ん? なんだよ、そんな興味あるなら、今度、水族館で実物を観に行ってみるか?」
不意にご主人がそう尋ねてきました。
えっ、それは気になります! 行ってみたいです。
スワロが答えると、ご主人はにやりとします。
「そうか、なら、行きたいところ探しておけ。管区内でもいくつかあったと思うぜ」
わーい、楽しみです!
その場合、できたらぜひタイロ誘いたいです。タイロはびびりなので、スワロよりさめが怖くなるかもしれませんけれども。
スワロのおこづかい帳
残高:3,300円(+300円)
まずご主人の拾ってきたおもちゃを売ってきました。スワロの手数料代だけもらって、貯めておきます。サメの歯も、たかく売れると良いな。
でも、おこづかいは減りそうですが、水族館、ちょっとたのしみです。
目標まで6,700円