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魔物退治ギルド記録  作者: Ridge
ギガ編
7/39

5話

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 ギガたちは島に帰還し、ギルド本部の門をくぐると人々が駆け寄ってきた。

「ジン、お手柄だったようだな」

 男が腕組みをしてジンに話しかけた。

「レイか。何か偉そうだな…」

「今日くらいは褒めてやってるじゃないか」

「おちょくってんのか?」

「少しは賢くなったようだな」

「そういうのは馬鹿が言ったところで痛いだけだ」

 ジンとレイは両手を組んで押し合いを始めた。

「またやってるよ」

「付き合ってられませんわ」

 皆はジンとレイを放置して各々散っていった。

「ギガ!ヘクト!」

 ギガとヘクトの前に女が走り寄ってきた。

「シオン、ただいま」

「帰ったぜ」

「無事で良かった…」

「もう聞いたか?ギガのやつ大手柄上げたんだぜ。あーあ、俺が水術じゃなくて火術使いだったらなあ」

「ヘクトだって街道の戦いでは大活躍だったそうじゃないか」

「魔公爵撃破と比べたら霞んじまうよ」

「でも本当に良かった…」

 シオンはギガをうっとりと見つめて拳にぐっと力を込めた。

「ねえギガ、この後…」

「あっ、ちょっとごめん」

 ギガは誰かを見つけ、走っていってしまった。シオンは伸ばした手を下ろし俯いた。

「ローズ!」

 女はゆらりと振り向き、覇気のない声で答えた。

「ギガ、おかえり。大手柄だったみたいだね。おめでとう」

「あ、ああ、ありがとう。その、君の師匠は…」

「マスター・ディエスはしっかり戦って散ったみたいね。私もそうありたい」

「霧魔公を倒せたのはマスターたちのおかげだ。あの人たちがいなかったら届かなかった。本当に感謝している」

「うん、マスターがタダでは死ぬ訳ないもんね」

 ローズは目を細めてほほ笑んだ。それは無理をしているのか、本心から笑っているのか、ギガには分からなかった。

「本当に大丈夫?」

「何?ナンパのつもり?ごめんなさい、私、好きな人がいるの」

「いやそういうわけでは…」

「心配いらないよ。いつまでも落ち込んでいたらあの世のマスターに怒られちゃう。あなたもいつまでも私と話してないで、友達のところに行きなよ」

「…そうか、それじゃ…」

 ギガはローズと別れてヘクトたちのところへ戻り、ローズは自室へと戻っていった。

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 ギルド本部、ギルドマスターの執務室。出入口の向かいの壁の前にギルマスの席があり、左右の壁に向かって机が並び、ギルド員たちが椅子に座って仕事をしていた。

 ギガはギルマスの席に座り、部下から話を聞いていた。

「ゲンブー地方にて霧魔公を破り、大規模魔術も消し去ったことで魔物の数は一応は減りましたが、思うように減っていません。まだどこかに製造プラントのようなものがあると思われます」

「そうか。ソーリュ地方の響魔公を討伐に行こうと思っていたが、ゲンブー地方を完全に開放するのが先だな」

「部下に任せてマスターはソーリュ地方攻略という手もありますが」

「いや、僕が対応しよう。危険な予感がする」

「了解しました。では調査隊を派遣して候補地を探し出し、マスターはそこへ乗り込むという形でいかがですか」

「それでいこう」

「了解。早速手配して参ります」

 ゲンブー地方に魔物の発生源はまだ残っている。それを潰す作戦が開始した。


 ギルドの食堂の一角で2人のギルド員がお茶を飲んで休憩していた。

「ギガはギルドマスターになったから護衛を連れてまた旅立つわ。シオン、想いを伝えるなら早くしないと」

「分かってるけど…。みんな真面目に戦ってるのにこんな浮ついたこと迷惑になるよ…」

「ギルド員同士で結婚している人もいるじゃない。今なら大丈夫だよ。私はシオンを応援してるから」

「リナリー…ありがとう。私頑張る」

 シオンは遠くから近づく人に気づいてじっと見、リナリーは不思議に思って振り返るとギガが近づいて来ていた。

「リナリー、ちょうどいいところに」

 ギガはリナリーを見つけて声をかけた。

「君に護衛…いや、お供として一緒に来て欲しい。護衛というより魔術による後方支援だ」

「私が…ですか?」

「えっ…」

「ああ。あと、僕はギルマスになったけど、君たち幼馴染に敬語使われると寂しい。今まで通り話してくれないか?」

「分かりま…分かった」

「うん…」

「それで答えは?」

「えっと…」

 リナリーは悩まし気な目でシオンを見た。

「いいじゃないリナリー」

「シオン?」

「…本当はみんな危険なところに行ってほしくないけど、そういう訳にはいかないじゃない。私は事務員だからここで待ってるね」

「でも私じゃ…」

「君は強いよ。それだけじゃなくて君はよく知ってる妹みたいな存在だから安心できる」

「妹…」

 リナリーは目を伏せて呟いた。

「駄目ね、こんな浮ついていては」

 リナリーは頬を叩いて気合を入れた。

「お供します。私の魔術で敵を蹴散らして見せるわ」

「ああ、よろしく頼む」


 ギガは訓練所に行き、ギルド員同士の剣戟を見た後、ある男に声をかけた。

「デイン、護衛として一緒に来て欲しい」

「光栄です。喜んでお供します」

「……」

「どうされましたか?」

「いや、あまりにあっさりなもので拍子抜けして」

「ははは、自分は遠征に慣れてますから」


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 ギルドの廊下をギガとヘクトが歩いていると、運営部員がギガを呼び止めた。ヘクトは「先に行ってるぜ」と言って歩き出した。

「ギガさん。マスター・ディエスがあなたを次期ギルドマスターに指名しています。受けますか?」

 ヘクトは足を止めて2人の会話に耳を傾けた。

「僕が…8代目に?」

「はい、能力は申し分ありません。霧魔公を倒したという箔もありますから妥当と思います」

「あれはほとんど7代目のおかげで…僕がたまたま火術使いだったというのもあって…」

「仮にそうでも、一般ギルド員の目からはあなたが一番ギルドマスターに相応しく映るでしょう」

「そ、そうか…どうしよう、ヘクト」

 ギガは嬉しくて上ずった声でヘクトに尋ねた。しかしヘクトの凍り付くような目で一気に冷え切った。

「あの、少し考える時間をください」

「分かりました。しかしマスター・ディエスに残された時間はそうありません。早い返答をお待ちしてます」

 運営部員は会釈して去っていった。

「ヘクト…」

「霧魔公を倒せたのはたまたまなんだろ?」

「あ、ああ…」

「でも倒したのはお前だ。その箔があるお前がギルドマスターなら多くが納得するから自然な流れだ…頭では分かるよ…」

 ヘクトは溜息を吐いて息を強く吸った。

「訓練場に来いよ。俺と戦え、ギガ」

「そんな…」

「それが嫌ならここでやるか?」

「…分かった、行くよ」


 2人は訓練所の中の無人の部屋へ来て、剣を出して戦い始めた。

「なぜ俺じゃなくお前なんだ!俺よりも弱い、俺よりも気弱、運良く火術を選んでいただけ!」

「くっ、そんな、そんなこと!」

 2人は剣技と魔術で戦いを繰り広げた。

 戦いが終わり、部屋の扉が開き、ギガはふらつきながら部屋を出た。

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 数日後、候補地の報告を受け取ったギガはリナリーとデインを連れ、船に乗って島を後にした。

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