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魔物退治ギルド記録  作者: Ridge
ローズ編
14/39

11話

 ローズたちを乗せた船が港に着き、船を降りて公園の大樹の前に行くと女がベンチに座って待っていた。女はローズたちに気づいて立ち上がり、歩み寄ってきた。

「ようこそ、マスター・ローズ。私はカンナ、ギルド支部へとご案内いたします」

 カンナの案内に従い、市街地の端にあるデカデカとした看板を掲げたギルド支部へとやってきた。

 職員用入り口から入り、奥の部屋へ案内され、ローズは椅子に腰かけてジンとレイはその傍に立ってギルド員から話を聞いた。

 咬魔公は城も城下町も持たず放任主義で部下たちは好きに活動している。しかし各々が少人数で活動し、都市を丸ごと乗っ取るほどの力はないため、表舞台には出てこず、目立たないところで暗躍している。魔族というのは力で抑圧しなければまとまらず、約束を守る習慣がないため同格同士では手を組めず、反乱を恐れて手下の数も多くできない。この地方の魔族を束ねる頂点が放任主義のため、細々と各地に散っている。

 人さらいに魔族が関わっているものが確認されたという報告があった。子供たちを攫っていたという。誘拐は今も起きているが、人間によるものもあるだろうから共通点が見えなくなって目的が分からない。他にも破壊活動の企みや、魔物の使役などが確認されており、対処したものや追っているものがある。

 咬魔公への襲撃時に彼のいる岩山の道が整備されて通りやすくなり、今もそのままだという。歯牙にもかけていないということか。攻め込みやすいのならこちらにとっても好都合。

「襲撃者たちの正体はまだ分かっていない?」

「はい。滞在先で口止めをしているようで、我々には情報が入ってこないのです。もう壊滅したのか次の機会を伺っているのかも分かりません」

「そう…」

 調査のプロなら偽装された記録や運び込まれる食料などの隠しきれない痕跡から推理できるかもしれないが、私たちは魔物退治ギルド、そのような能力はない。諜報部はあるが大量に配置できるほどの余裕はない。正体は判明できるに越したことはないが、そうでなくとも彼らが整備した道を利用できるのならひとまずは良しとするか。

「どうしますか?」

「咬魔公を目指して進むわ。もし襲撃者たちが海の向こうから来たのなら通り道に手掛りが残っているかもしれないから、途中の街にはできるだけ寄っていく。今日はここで休んで出発は明日ね」

「承知しました。そう伝えておきます」

「よろしく頼むわ」

 ローズたちは部屋を出て、宿泊の部屋へ向かって歩いていると外に繋がる扉が開き、傷だらけの男が倒れ込んだ。

「何事?」

「きゅ、救援を…」

 男はそう言い残すと力尽きて倒れた。

「私が回復させる。2人は外の様子を!」

「了解」

 ローズはネックレスからダガーを出して地面に突き刺し、地術で大地から力を集めて回復魔法で男の傷を癒した。ジンとレイはネックレスから剣を取り出して外に出て周囲を見渡した。周囲に敵は見当たらず、血痕が遠くから続いている。

「お嬢様、周囲に敵はおりません」

「どこか遠くから来たようです」

「ごほっ…」

 倒れていた男はせき込んで血を吐いてつまりを取った。

「何があったの?」

「魔物退治の途中で魔族に襲われて…、まだ仲間が…」

「場所は?」

「街はずれの廃墟の…、これを…」

 男は懐から地図を出した。この街の横にある屋敷に印がついていた。

 ローズは通りかかったギルド員に手当と連絡を引き継ぎ、魔術を解いてダガーを抜き、2人を連れて現場へと向かった。


 ローズたちは屋敷の前にやってきた。屋敷は手入れされておらず泥や錆で傷み、窓は割れてそのままになっていた。

 建物の中から音が聞こえ、3人は中へ入っていくと、そこには植物の魔物の蔦に捕まって気絶、もしくは死亡している4人の人間と、その前で一息ついている10人の魔族がいた。

「何だ、こいつらの仲間か?」

「彼らを返してもらうわ」

「力づくでやってみやがれ」

 魔族たちは剣を手に襲いかかってきた。ジンとレイはローズの前に立ち、それぞれ相手の剣を受けた。

 ジンと剣を交えた魔族は剣を押し返す抵抗がフッと消えたかと思った次の瞬間、右腕を上から切り落とされ、斜め下から上に向けて心臓を突かれて後ろに突き飛ばされ、後ろに立っていた魔族は背中から突き出た剣先からの炎に焼かれた。その後、ジンは回転して左右の面食らっている魔族に斬りつけ、鮮血が周囲に飛び散った。

 レイは抑える剣を瞬時に回転して相手の剣と上下を入れ替え、前に踏み出して首へ斬りつけ、倒れる魔族を挟むように奥の魔族の首を突き、素早く剣を引き抜いた。体を回転させて側面と背後の戸惑っている魔族へ横から斬りかかり、剣をはねのけて胸を斬りつけ、周囲に鮮血が吹きつけた。

 ジンとレイは一旦下がり、次の敵に備えて姿勢を正した。

「もっと離れろ、邪魔だ」

「こっちの台詞だ。巻き込まれたいか」

 斬りこんできた魔族に2人は剣先から炎を出して牽制した、つもりだったが2人分の火力が合わさったことで焼き尽くした。

「ちいっ、この女だけでも!」

 魔族が斬りかかるとローズはソードブレイカーのダガーで剣を受けて絡めとり、拳の前から光術で電撃を飛ばして魔族の腕と胸に穴を空けた。

「あとはあの魔物ね」

 ローズは地術で岩を隆起させて植物を引き裂き、ジンとレイは剣で蔦を斬って人々を地面に降ろし、火術で植物を焼き尽くした。

 4人中、生きていたのは1人で残り3人は死亡していた。ローズは先ほど同様に回復魔法で生存者の回復を行った。

「私が回復するから周囲を見張っていて」

「了解」

 回復を行っているとギルド員たちがやってきた。

「マスター・ローズ、ご無事ですか?」

「ええ、何ともないわ」

 ローズは外でマスター呼びは敵に聞かれたら正体ばれそうで嫌だと思うも、そのことは後回しにして目の前の対応に当たった。

「敵は?」

「この場にいたのは全滅させたわ。奥は調べていないから隠れている可能性はある」

「そうですか。では我々が見てまいります」

 ギルド員たちは二手に分かれて、片方は探索に、もう片方は倒れている3人の仲間の脈を取って、脈が無いことを確認した。

「残念だけど間に合わなかった」

「…お気になさらず。彼らも覚悟の上ですから」

「そうね」


 ローズは回復をギルド員に引き継ぎ、ジンとレイを連れて屋敷の中を調べたが、敵は見つからなかった。あれで全員だったか、それともとっくに逃げたか。

 ギルド員たちと合流し、ギルド支部へと戻ってきて報告をした。その後、3人は宿泊する部屋に入って一息ついた。ジンとレイは喧嘩を始めず大人しくしていた。

「間に合わなかったけど、それはどうしようもなかったこと。敵を次々と倒していった2人の実力は本物ね。連れてきてよかった。これからもよろしくね」

「はい、これからもお嬢様のお力となります」

「存分にお使いください。ジンよりも役立ってみせます」

「はあ?レイよりも俺の方が役立ちますよ。全くお前は一言多いんだよ」

「お前に人のことが言えるのか?」

「ふふふ、しょうがない子たち…」

 ローズは微笑んで2人のやり取りを眺めた。

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