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魔物退治ギルド記録  作者: Ridge
ギガ編
12/39

9話

 ギガたちは約半年かけて魔物製造プラントの疑いがある場所を回り、全て調べ終えた。その結果、マモツカがいた場所の他にプラントは無く、魔物の数も減少傾向という報告を聞き、次の地方へ行く前に一度ギルド本部へ帰ることにした。


 3人は船に乗り、ギガは靴を脱いで座敷に座り、リナリーは座敷スペースの縁に靴を履いたまま腰掛け、デインは壁を背に立って周囲を見張っていた。

 リナリーは船室を見ながら自身の想いを考えていた。

 私はギガに命を救われたとか、大きな問題を解決してもらったとか、そういったドラマはない。ただ、長いこと一緒にいたらいつの間にか気になるようになっていた。だけどギガにはシオンが…。

 シオンは私たちが島を出る時に帰ってきたらギガに伝えたいことがあると言って見送った。あの子が何を伝えるかは明白だ。なにせ散々恋の相談を受けてきたのだから。発つ前には余計な事言って迷惑かけないようにと、帰った後に言うことにした。優しいとは思うけど、それを言い出したら一生言う機会が無い気もする。私たちは一度帰ったらまた別の場所へ向かう。だから今度も言わないかも…。だったら…いや、だめだめ。シオンがもたもたしているから、私は最初は応援するつもりだったのに…。でもシオンは大切な友達…。

 ギガは私のことを妹のようなものとして見ている。意識を変えさせようとして失敗して気まずくなるくらいなら、このままでも…。それに魔公爵との戦いを控えているのに余計なこと言って困らせたらいけない。ああ、私もシオンと同じようなことを言ってる。


 ギガは疲れと後少しで本部に戻れる気の緩みから眠ってしまった。

 リナリーはギガの手に自身の手を重ねた。船が着いてギガとシオンが再開し、何かが変わるかもしれない。それまでの間だけでも触れ合っていようと手を伸ばしたのだ。


 船は港に着き、ギガたちはギルド本部へと帰ってきた。ギガたちは迎えを受け、デインは妻と子たちに再会して抱き合っていた。

 その後、ギガはシオンに招かれて2人で話をした。


 翌日、ギガは執務室で部下から報告を聞き、新たな提案も聞いた。提案の答えはすぐに出せず、デインとリナリーに相談し、なおも迷って少し時間を貰った。


 数日後。

 ギルド本部、居住区のギガの部屋にヘクトが訪ねて来た。

「帰還早々呼ばれるとは。それで相談したいことって?」

「ああ、そこにかけてくれ」

 ヘクトは示された椅子に座り、ギガは丸椅子を持ってきて腰掛けた。

「ゲンブー地方の魔物の数は減少したため、ゲンブー地方支部を再編することになった。そこで僕にギルドマスターを退任してそこの総督をやって欲しいと運営部に言われた」

「おいおい、ギルマスからギルド支部長への降格か?」

「支部長は別にいるらしい。ギルマスの下ではあるが、支部長より上の立場だという。シンボル的な存在として人々に安心感と魔族に存在感を示して欲しいらしい。ゲンブー地方内の魔物を倒しに出かけられるが、他の地方に魔公爵を倒しに行くことはできない。ギルマス同様に名目上偉い役職だ」

「何だかややこしいな。それで、どうするんだ?」

「迷っている。僕はギルドマスターになった時に魔公爵を倒していくことが僕のやるべきことだと考えた。魔物を消し去り、僕たちみたいに不幸な目に遭う人を減らすのが夢だ。魔公爵を倒しに行けなくとも総督として夢をかなえることもできるはずだ。しかし…一番効果的なのは敵の親玉たちを倒すことだと思っている」

「なるほど。参ったな」

 ヘクトは椅子にもたれて上を見た後、体を前に倒して座り直した。

「皆が得するのはお前がギルマスやめて総督やることかな。霧魔公を倒して他にもいくつか問題を解決して名の知れているお前が残るとあれば人々への安心感も魔族への圧力も大きい。ギルドが潤うことだろう。でも魔公爵を倒しに行きたいお前には我慢してもらうことになるが…」

「やっぱりそうか…」

「まあ、得をする皆ってのはシオンやリナリーも含んでいる。あいつらが喜ぶならちょっと我慢してもいいんじゃないか?」

「…そうだな。そっちの方がいいかもしれない。もう一つお願いなんだけど…」

「ん?」

「ギルマスを継いでくれないか?」

「悪いが断る。俺はギルマスやるより一般戦闘員やるのがいいと分かった。お前に負けたくなくてギルマスの座を先に取られたくなかっただけで、今となってはギルマスそのものに興味はなかったと分かった。こんな心構えではだめだ」

「そうか…。まあ強いけどギルマスやりたがらない人いるから珍しい話じゃないか」

「悪いな」

「いや、いいよ。相談に乗ってくれてありがとう」

 ギガは立ち上がってヘクトと握手した。

 その後ヘクトは部屋を出て自室に戻り、ギガも部屋を出て運営部へと足を運んだ。


 1週間後、ギルドの廊下でギガは仲間たちと話をしていた。

「デイン、君はどうする?」

「自分は知らないところに行くのが好きですから、ここで戦闘員をして出張します。時々、島に戻って連載も読みたいですし」

「やっぱりそうか。今までありがとう」

「勿体ないお言葉です」

「僕やリナリーだけでは上手く行かなかったと思う。本当にありがとう」

「こちらこそ護衛として選んでいただきありがとうございました。では自分はこれで」

 デインは手を振って訓練所へと向かっていった。

「今度は私もついていっていいんでしょ?」

 シオンはギガの前に体を傾けて上目遣いで尋ねた。

「ああ、事務員も要る…というか戦闘員と逆に増やす必要がある」

「ふふっ、楽しみ。これで私もリナリーやヘクト、皆と離れ離れじゃない」

「僕らが総督の仕事で出かけている間に家で待っててもらうこともあるだろうけど…まあ、島で何か月も待つようなことと比べたら全然だね」

「んふふ」

 シオンは上機嫌に笑ってその場でジャンプした。


 約1か月後。

 ギルド本部、大集会場。ギルド員たちが参列する中、舞台の上では次期ギルドマスターが剣を天に掲げ、宣誓を行った。

「9代目ギルドマスター・ローズ、ここに魔物の殲滅を誓う。我が魂はギルドと共にあり!」

 儀式をもってローズは9代目ギルドマスターとして就任した。


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