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魔物退治ギルド記録  作者: Ridge
ギガ編
10/39

8話-1

 ギガたちが森沿いの道を歩いていると、途中で赤い花が咲き乱れているのが目に留まった。

「わあ、すごい数」

「これはエメが好きそうですね」

「エメってデインさんの娘さんだっけ?見送りの時にいた」

「はい。私の娘です」

「あの時子供が2人いなかった?」

「姉の方がエメ、弟の方がラルです」

「まだ小っちゃくてかわいかったな」

「置いて来て不安じゃないか?」

「不安が無い訳ではないですが、皆が助けてくれますからそこまで心配してません。それに自分は冒険が好きで、結婚しても子供が出来てもそれは変わりませんでした」

「まあ…心配要らないようだからいいか」


 立ち去ろうとすると森の中から銃声が聞こえて来た。

「何だ?」

「猟じゃないですか?」

「魔物に襲われているかもしれない。行ってみよう」

 音の方へ進んで行くと、垂れた皮が地面まで届き、地面を擦っている四足の魔物がいた。一見して鈍重で危険度は低そうな見た目だが、口から覗く鋭い牙と垂れた皮の隙間から見える太い脚が強さを示していた。

 その近くで猟銃を持った男が木に登って魔物に向かって銃を撃っていた。不安定な体勢のため、一発撃つごとに反動でブレるがそれでも魔物には当てていた。しかし、魔物に飛び道具は効かないため全く効果が無い。魔物は体当たりで木を揺らし、

「そこを動くな!こいつは僕たちが倒します!」

 男は銃を撃つ手を止めて上に向けた。

 デインは魔物の前に出て盾を構えて地術で拡張し、魔物の体当たりを受けて後ずさりながらも押しとどめた。リナリーは風術で風を纏って飛び上がり、魔物の頭上からメイスで勢いよく叩きつけ、衝撃波を飛ばした。魔物は泡を吹いて倒れ、ピクリとも動かなくなった。魔物は死亡した。

「ありがとう、助かった!君たちは一体…?」

 銃を持った男は木から降りて来てギガたちに話しかけた。

「僕たちは魔物退治ギルド、エルシュバエルの者です。ここで何をしていたのですか?」

「俺は猟師のリョージ、獲物を取りに山へ入ったはいいが相棒の犬がこいつに食われてしまって、力量差も忘れてつい…。すまない、迷惑をかけた」

「間に合って良かったです。いつもこの森に?」

「この辺りは天気がいい時はよく来る。あ、いつもは魔物からちゃんと逃げているから心配はいらない。もう冷静になった」

「そうですか」

 これなら街まで送らなくても大丈夫そうだな。

「助けてもらった礼をしたい。家へ来てくれないか?」

「そこまでしなくとも大丈夫ですよ。僕たちは急いでいるのでこれで」

「そうか。引き留めて悪かった。エルシュバエルだったか?今度訪ねてみるよ。じゃあな」

「はい、お気をつけて」

 リョージは銃を背負って歩きなれた様子で去っていった。

「さて、予定より早く森に入ったが、このまま行こう」

 ギガたちはそのまま目的地へ向けて歩いた。

「家に行ったら猪肉とか食べられたんじゃない?」

「かもね」

「勿体ないことを…」

「また機会があるよきっと」

「デインさん~」

 リナリーはデインに視線を送った。

「自分はマスターの言うことに従います」

「ああ、やっぱり…」

 リナリーは諦めて黙々と歩いた。


 森の奥へ進んで行くと建物が見えて来た。石造りの大きな建物でところどころ崩れているが、内部から明かりが見え、周囲は草刈りもされていて、今も使われているかのような様子だ。

「中に入る前にこの辺で調べてみよう、リナリー頼む」

「了解」

 リナリーは以前に廃墟でやったのと同じように光球で痕跡を探ったところ、球が黒く染まって砕けた。

「黒魔術の痕跡を確認」

「しかし、森の中とはいえよく今まで気づかれずにいたな」

「発見者は始末されてきたか、この辺りに隠す魔術が施されていて踏み入れないと気づかなかったのかもしれません。霧魔公が倒されてそれが維持できなくなり、やっと目につくようになったと」

「そうかもしれない。気を付けていこう」

 ギガたちは建物に近づき、入り口を探した。どこも壁で塞がっており、扉らしきものは見つからない。

「仕方ない。登って崩れたところから入るか」

「その前に…気づいていますか?」

「デインもか。気のせいじゃなかったか」

「じゃあ、あの柱のところに行こう」

 3人は建物から離れて森の側の柱に来た。

「何者だ?隠れてないで出てこい」

「…気づいてたか」

 森の中から女が出て来た。

「何者だ?」

「私はマモツカ。研究者よ」

「なぜこんなところに?」

「この建物を調べているの。中に入るのでしょう?私も連れて行って」

「危険ですから街に帰ってください」

「そんなこと言わずに。ほらこれ」

 女は線が掘られた金属板を見せた。

「それは?」

「この建物のカードキー。私の研究で見つけたの。ね、連れて行ってお願い」

「それをどこで?」

「それよりも連れて行ってくれるの?くれないの?」

 なんだこの人…。なぜ一人でこんなところにいるんだ?研究者というのは本当か?あれはどこか隠し場所から見つけ出したのだろうか。

「この中も鍵がないと入れない部屋があると見込んでいるけど、私がついていかないなら入れないかもよ。私、これを手放す気ないし」

「ここに入るのは危険だ。それを渡して外で待っててもらう」

「嫌。絶対に渡さない」

 マモツカは意固地になって拒否した。

「大体、それが本当に鍵なのかどうか」

「あら?それなら証明可能よ。ついて来て」

 マモツカが柱についている石のリングを回し、押し込むと建物の壁の一部にかかっていた幻が消え、扉が出てきた。その横の鍵穴にカードキーを差し込み、ダイヤルを回すと扉が開いた。

「ほら、私がついて行った方がいいでしょう?」

「……。何者だ?」

「だから研究者だってば。だけどこの先は誤作動で閉まってて入れない。壊して欲しい」

 廊下の途中は鉄格子が塞いでいて通れなくなっていた。

 隔壁にしては隙間があるのが妙だ。檻なのか?でもこんな廊下の真ん中に…?普段は降りていないが建物のどこかが崩れた拍子に降りて来たのだろうか。

「どうします?」

「壊さなくとも通れればいいだろ?あの辺を捻じ曲げる」

 ギガは剣を振って炎を飛ばし、鉄格子を火に包んで熱し、続けて光術と火術を合わせた火球を飛ばして爆発させ、鉄格子を捻じ曲げた。

「やった!これで通れる!」

「あっ、待て!」

 マモツカは走り出して隙間を通って奥へと行ってしまった。

「はあ、もう面倒見切れない」

「どうせどこかで通れなくて止まってるよ」

「だといいですが…」

 ギガたちも隙間を通って廊下の奥へと進み、横穴を抜けると丸い部屋に出た。そこにはまた別の部屋に繋がるアーチ状の横穴が5つと、左右の壁際に上の階へと繋がる螺旋階段があった。

「これは一体…?」

 各部屋への上には東・西・南・北・海とプレートが付いていた。海の部屋の横には、「陸用厳禁。海に対応した魔物のみを送ること」と書かれていた。

「こっちに行ってみよう」

 ギガたちは海と書かれたプレートの部屋に入った。そこには地面に魔法陣があり、その上に砕けた水晶の欠片が散らばっていた。天井には鎖と輪があり、そこから水晶が落ちて来たようだった。

 リナリーは風術で魔力の流れを調べた。

「魔術は発動していない。おそらく発動に必要な仕掛けが壊れている」

「そうか。とにかく他の部屋も調べてみよう」

 直後、建物が大きく揺れ、上の方からバチバチという音がした。

「上の階です」

「調査は後だ。行こう!」

 ギガたちは部屋を出て階段を上っていった。

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