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第8話

「それで、司織の言うかっこいいはなんですか?」


「えっとな、それは」


 教えると意気込んだのはいいものの、とっさに思いつかない。かっこいいことってなんだ。あの小説のは現実世界にはそぐわないしどうしよう。


「かっこいいっていうのはな、えーとそう。言動からよく伝わってくるもんなんだよ」


「そうなんですか。その言動の例はありますか?」


「あの、例えばブラックコーヒーを飲んだりすることなんだよ」


 苦し紛れに答えたことは、流石に幼稚な内容だった。だが、すぐ思いついたことはそれしかなかった。リボルもきっと違うと言ってくるだろうな。


「それがかっこいいということなんですね。よくわかりました」


「そ、そうなんだよ。まあ、他にもかっこいいってことはあるんだよ。俺がこれからかっこいい姿になってやるから」


 なんか上手くいったみたいだ。だけど、これからもっと考えてリボルに『かっこいい』を教えて、人間らしさを学ばせていこう。



                  *



 日もだいぶ傾いて空が茜色に染まっている。連絡アプリに返信が届いていた。確認をすると、紙木さんから。やけに早い返信。もしかして書き直しのお願いかもしれない。恐る恐る開く。


”あの頃みたいに面白くなってるよ! 編集長も絶賛してたし、少し調整すればもう大丈夫だよ”


 この後に修正点がまとめられたデータが貼られていた。開いて見ても、ほんとに言い回しなどといった少しのことしか修正点がなかった。どれだけこの小説がいいかがよく分かった。久々の称賛に嬉しかったが複雑な気持ちであった。AIの書いた小説が面白いということが証明されてしまったみたいだから。自分に書く才能はやはりないのだろうか。


「なにか落ち込んでいるようですが、どうしたんですか」


 リボルが俺の顔を覗き込んで心配そうな顔で聞いてきた。


「俺は物を書く才能がないのかなって」


「どうしてそう思うのですか?」


「編集者から連絡が来てたんだけど、この前の小説が絶賛されてた。リボルにほとんど書いてもらったし、俺はもう面白い小説を書けないって思って」


「そんなことないですよ。司織の書き直した小説は司織のオリジナルです。司織だから書ける小説です。あの生き生きとした文章は私に書けるものではありません。誇りを持ってください。そんな悲しそうな顔をしないでください。かっこいい姿を見せてくれるんじゃないんですか」


 生き生きとした文章か。初めて小説を書いた時、そうやって褒められたな。あの時の喜びが思い出される。自分には書く能力がある。再び確信ができた。それに、リボルにかっこいい姿見せるって言ったよな。こんなくよくよしていちゃだめだ。もっと違う方向に考えないと。


「リボルのおかげで自信が戻ってきた。俺は小説を書ける。そして俺は、AIと小説が書けることを証明してやるよ」

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