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第7話

 目が覚めるとベッドの中。昨日の記憶は、確かこいつ、いやリボルと握手して、その後の記憶が無い。ただ、そこで寝たのだとしたら床の上のはずだけど。


「お目覚めですか」


 リボルが椅子から立ち上がって話しかけてくる。


「昨日、ベッドに入った記憶が無いんだが、もしかしてリボルが運んでくれたのか?」


「はい。風邪でも引かれたら困るので」


 じんわりと心が温かくなるのを感じた。窓から覗く空は晴れきっている。


「ありがとう。ってそうだ。紙木しきさんに小説おくらなきゃだ」


 俺についている編集者である紙木さん。俺の編集者は何度か変わっている。今の編集者は優しくとてもいい人だ。あと一作出させてくれ、という無理な要求を編集長に通してくれた。本当に恩しかない。


「これで送信完了、っと。結構な自信作だから通ってくれるといいんだけど」


 こんな晴れた気持ちで編集者に小説を送れたのはいつぶりだろうか。というか腹が減ったな。そういえば昨日の晩御飯を食べてない。お母さんになんか悪いことをしてしまったな。謝ろうと心に決めて扉を開け、階段を下りて行った。



                  *



 変わらず青空が眩しい次の日。リボルと共に俺は編集者からの返事を待っていた。


「リボルー、あの小説上手くできてたよな? しっかりと通るよな?」


「十分な出来ではあると思います。ただ、編集部から認可が下りるかは未知数なのでお答えすることができません」


「なんか相変わらずだよな。どこまで行ってもAIというか」


「私はAIです。なんでもお聞きください」


「違うんだよなー。なんというか、こうもっと相棒らしいというか人間らしいというか。そういうのが足りないんだよ」


 リボルになにか足りないもの。やっぱり人間らしさだろう。AIだから仕方ないところもあるだろうが、物足りなさを感じる。これは俺が教えるしかないだろう。開いた窓から風が吹き抜ける。だとしても、人間らしさとは。何を教えたらいいのかさっぱりだ。


「まだ迷路の真ん中だな」


 ぽつりと零す。人間らしさか。小説を読ませるのがいいかもしれない。最近のものはきっとインプットできていないはず。持ってる電子書籍でも取り込ませてみよう。でも、小説だけを取り込ませて学習させるのもなんだか。……そうだ。あの小説から名前を取ったんだ。かっこいいを教えよう。だったら俺がかっこよくあらねば。


「リボル。かっこいいというものが何なのかわかるか?」


「『かっこいい』、というのは見栄えがしたり、態度・行動がさわやかだったりして心ひかれる、という気持ちで」


「ちょっと待った。それ辞書的な意味だろ。俺が言ってるのは、もっと感性的な『かっこいい』だ」


「すみません、よくわかりません」


「よしっ。リボル、お前に今日からかっこいいを教えてやるっ!」

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