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第6話

「……ただいま」


 煌々と光る街灯を背に玄関の戸を開ける。


「おかえり。ご飯、机の上にあるから食べてね」


 お母さんは夜遅くに帰って来たことを何も言わなかった。遅くに帰ってくることが何度もあったし、追い詰められていることもよくわかってる。だから、自由にさせておこうとしてくれているのだろう。それなのか俺がこいつを連れて帰ってきたのに何も言わなかったのかもしれない。でも、俺にはそれがとてもありがたい。返事もそれなりにし、階段を昇って自室に入る。


「お前、名前とかって覚えているのか」


 椅子に座って、連れてきたロボットに話しかける。


「私の中のデータは全て削除されています」


 初めて会ったときのような壊れかけの音声ではなく、流暢できれいな男性の声が流れた。


「削除されてるってことは何も覚えてないのか」


「はい、そうです」


「じゃあまず名前をつけないとな」


 名前、名前か。パッと出てこないな。うーん。唸りながら悩む。どうせなら出会いとかと絡ませたものがいいよな。そして、一つの名前が思いつく。


「リボル、リボルにしよう。お前の名前はリボルだからな」


 悩んだ末思いついたのは、前の小説の主人公の相棒の名前のリボルだった。あの小説の主人公の言葉でこいつを助けた。だったらこいつは相棒になるはずだ。


「リボル。はい、その名前だと認識しました。私の名前はリボルです」


 この次はどうしよう。って、ああ。重要なことを忘れていた。


「リボル、小説って書ける?」


「もちろんです。どのようなテーマで書きましょうか」


「じゃあ、少年が相棒と出会って成長する物語を書いて」


「わかりました。パソコンに繋ぐとすぐに結果が見られます。少々お待ちください」


 命令が通った。今までそんなことを聞いても、できないと返ってくるだけだった。パソコンに繋いで結果を待つ。そして、数十秒もしないうちに文章が羅列されていく。

 ああ、俺はその文章の面白さに感動していた。俺の書く小説より何倍も面白い。ただ、文章がところどころおかしいところが見られる。つながりが変なところもある。だから俺はその小説を再編集することにした。食事も忘れて、ただこの小説をより良くするためにキーボードを打ち続けた。

 夜の闇もだいぶ深くなった頃、俺は小説を書き終えた。今まで以上の傑作ができた気がする。


「リボル、ありがとな。おかげでめっちゃいい小説が書けた。お前は今日から俺の相棒だ」


 そう言って俺は、手を差し出した。ただ、リボルは理解できなかったようで


「この手は何でしょうか」


「何って、握手するに決まってるでしょ」


「握手、ですか。わかりました」


 リボルの手が俺の手を握る。集中しすぎて熱くなった手が、リボルの冷たい手で冷やされていく。そして、俺はそのまま倒れるように寝てしまった。

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