表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

第5話

 ロボットを直せる場所、この町の人間が作業する唯一の工房。そこの扉の前に俺は来た。小さい頃、よくここに遊びに来たものだ。ここに久々なので、扉を開けるのが少し億劫である。だけどここしか頼れるところはない。心を決めて扉を開ける。


「いらっしゃ、って司織じゃないか。久しぶりだなあ。その辺にでも座ってゆっくりしていってくれ」


 おっちゃんは嬉しそうな顔で俺のことを招き入れた。俺はおっちゃんが名前を覚えてくれていたことに感動していた。もう何年も前のこと。それに今の俺の小説の評価のフィルターを通さずに見てくれる少ない人だった。目頭が少し熱くなるのを感じた。


「気になったんだが、その背負ってるのはなんだい? 壊れたロボットかい?」


「うん。あそこの集積所で見つけたんだ。さっきまで電源が点いていたからまだ治ると思う。だがら直してほしい」


「あそこの集積所で、ねえ。電源が残ってるものなんて珍しい。まあ、司織の頼みだ。直そうじゃないか。ほら、ちょっと渡してくれい」


 おっちゃんに言われて、背負っていたやつを渡す。おっちゃんは、「そこに座って待っていてくれ」と言い残して、奥に行ってしまった。果たして直るだろうか。でも、ここのおっちゃんの腕は確かだ。大丈夫なはず。

 外が暗くなった頃、おっちゃんが戻ってきた。


「いやあ、なんとか直ったよ。ただ、これはだいぶ中のAIが古いな。よくこの時代まで残っていたよ」


「古いっていうのは?」


「このAIはクリエイトに関することに制限がかけられてないんだ。本当なら政府に引き渡さなきゃなんだが、どうする」


「どうするって、渡すしかないんじゃ」


「司織、なんか悩みがあるんだろう。きっと小説とかについてだろう。わしはそういうのよく知らんが難しいのだろう? もしこいつで悩みが解消されると言うなら、司織が引き取ればいい」


 おっちゃんはよく俺のことを見てるな。悩んでることを見抜いて、解決しようとしてくれている。だけど


「制限がかかっていないAIを引き渡したことがバレたら、おっちゃんの身が危ないよ」


「そんなことか。どうせもう後先短いんだ。若者の、それも司織の役に立てるっていうなら本望よ。わしのことは気にしなくていい」


 こいつを引き取れば、もしかしたら道が切り開くかもしれない。だったら


「おっちゃん。こいつを引き取るよ」


「おお、そうか。大事にしろよ」


 おっちゃんは俺の背中を優しく叩いて言った。俺は歩けるようになったこいつと一緒に扉を開けて、帰路についた。もう雨は上がって、頭上には星が輝いている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ