第13話
「今日は一旦帰りなさい」と先生に言われたので、リボルのいる家に帰った。何日も学校に閉じこもっていたけど、周りの世界は何も変わっていない。今までの世界のままだ。青い空が雲の隙間から見える。
「ただいま」
玄関を戸を開ける。返事はない。お母さんは仕事に行っているようで靴が無い。自分の部屋まで進む。扉を開けると、椅子に座ったリボルがいた。
「帰ってきましたか。おかえりなさい」
「ただいま」
「なんだか暗い雰囲気出していますね。なにかあったんですか」
「リボルと協力して小説を書いてるっていうことがバレかけているんだ」
「とうとうですか。もう処分は決まりそうですか?」
「まだバレたと確定したわけじゃないから。……それよりもう一緒にいられなくなるかもしれないんだぞ。もっとこう、悲しい、とか寂しいみたいな感情ないのかよ」
「私はAIなのでそのような感情はありません。ただ、残念だとは思います」
リボルは外を眺めながら答える。なんだか寂しそうな顔をしているように見えた。
「なあリボル、どうしたらこの状況を抜け出せると思う?」
「何をしても変わらないと考えられます」
「……だよなあ。先生は他に道があるはずって言ってたけど、どれ選んでもって感じはするよな」
「ですが、司織はいつも私の想定外のことをします。いつもみたいに司織の言う『かっこいい』道があるのでは無いのですか?」
「『かっこいい』、ねえ」
ベッドに腰かけたまま、天井を見上げる。リボルを連れて帰ってきた日と何も変わっていない。白い天井に茶色の小さなシミがある。リボルも思いもしない違う道があると言っている。みんな俺に過剰な期待を抱いていないだろうか? 俺は、ただの強いように振舞っているだけの人だ。なにか特別なものを持っているわけではない。
「……俺は何かを持ってるわけじゃないんだ」
ぽつり、と心の奥底の弱いところが零れ落ちた。
「何を言っているんですか。特別なものを持っているじゃないですか。私のことを助けてくれたのは、誰でもなく司織ですよ。そして、ここまで私のことを面倒見てくれたのも司織です。優しさと芯の強さがあります。私はよく見てきました」
「そう言ってくれてありがたいけど、それで何か変えられるか?」
「はあ、いつまで経っても弱気のままですね。初めて会った時とまるで違います」
「俺はリボルと一緒にいなきゃ何もできないんだよ。一緒にいなきゃなんないんだよ」
どこにぶつけていいかわからない感情を吐き出す。ああ、自分が嫌いになりそうだ。
「では、一緒にいなければならないという考えを変えてみませんか」
「どういうことだよ」
「今度は私が司織を助けるってことですよ」