第12話
「はあ。まあ、司織が使わざるを得なくなった理由はよくわかったよ」
「わかってくれましたか。でも……」
言ってしまった、ということはこれが政府に伝わって押収されるだろう。作品も全て販売が中止されたりもするだろう。全て、全てが終わる。だけど言わずに無駄な抵抗をするのはかっこ悪い。そんな姿をリボルになんか見せられない。打ち明けて真っ向勝負で立ち向かう。これが俺が出したかっこいい姿。まあ、終わるの変わらないんだけど。
「それで、司織はどうしたいんだ?」
「どうしたい、って。引き渡すしかないんじゃないんですか」
「正論としてはそうだな。だけど司織はどうしたいんだ。そのまま引き渡したいのか?」
予想外の質問だった。言ったらこのまま終わりを迎えるものだと思っていた。だけど、俺にできることは何も無い。
「俺にできることは何もありません」
「おいおい。AIとずっと小説を書いていたから、そんな正論しか考えられないのか? やっぱりAIは人に害を及ぼすのか」
その言葉を聞いて、頭の中で何かがプツっと切れた気がした。
「AIは感情を考えられる! 人間とほとんど変わらない! AIとの境界を作るんじゃなくて、互いに協力し合っていくべきなんだ!」
気づいたら、大声で叫んでいた。保健室の中はこの声がこだましている。青かった空がほんのり赤色に染まり始めていた。そして、理性が帰ってきた。
「……すみません。いきなり大声出して」
「いや、いいんだ。悪いことを言ってしまったからな。でも、司織の信念が垣間見えた気がするよ」
「信念? もしかして、AIと協力するべきというのがですか」
「そうだ。やりたいことが少しは見えてきたんじゃないか?」
やりたいこと? 今の言葉から何が見えてくるっていうんだ。
「その言葉から考えられるとしたら、政府に訴えるとかですか? 勝ち目は何もないと思うんですけど」
「そうだな。今のまま政府に掛け合ったとしても何も変わらない。だけど、他の方法もあるはずだろう?」
「何か先生はわかってるってことですか?」
ここまで言っているのだ。何かしら策があるに違いない。あったとしても教えてくれるかは別な気もするが。
「ん? あるわけ無いだろう。少々先生のことを買い被りすぎてないか?」
はあ。思わず溜め息が出てしまう。なんだか一気に力んでいた気が抜ける。
「何も思いついていないのにあんなこと言ったんですか」
「思いついてないからって道が一つなわけじゃないだろう。違う道を司織には見つけてほしいんだよ」
違う道なんてあるだろうか。どのみち公開するしか無い。バレてしまうのも時間の問題だし。それとも逃げてしまえということなのか? いや、それもただ捕まるまでの時間を引き伸ばすだけだろう。それに逃げたらもっと罪が重くなるかもだし。
「違う道があったとしても、結末はおそらく変わりませんよ」
「いや、少しでもいい方向に動かせる道があるはずだ。人生そこまでハードなことだけじゃないぞ。正解は見つけるんじゃなくて、作るものなんだよ。そのために協力はする。だけど、時間がそんなに残されていないのも事実だ。いつ政府が強硬手段取ってくるかわからない。それだけは念頭に置いといてくれ」




