第10話
ようやくプロットが作り終わった。何日経ったかは気にしていない。日にちを見てしまったら、自分の才能のなさに絶望してしまいそうだからだ。これからようやくしっかりとした小説に変えていく。プロットがあるから、いつもリボルに作ってもらって小説を書くのと同じ条件だ。違いがあるとすればプロット時点での作品の面白さくらいだろう。リボルの作るもののほうが全然面白い。それがわかっていてもこれ以上この物語を面白くする手立てを俺は知らない。だから、これで書くしかない。
「俺にはこれしかないんだ。絶対にばれちゃいけない」
自分を脅して、スイッチを入れなおし仕上げに向かう。窓から見えるのは曇り空だけだった。
*
「か、書き終えた……」
あれから幾ばくかの夜を越え、作品が完成した。自分だけで書いた作品としては、一番とまではいかなくとも、二、三番目には良いものだ。リボルと共に書いていたのもいい練習になっていたよう。ただ、リボルと書いたものと比べると全然良くない。伏線もあるけど、ないのと同じくらい薄い。だけど、いくら書き直してもこれが限界だった。これで認めてもらえるかの不安は大きい。それは、……あとで考えよう。寝ずに書いていたせいと、書ききった安心感で机の上に倒れるように寝てしまった。
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ガチャ。
扉の開いた音で目が覚める。目の前には心配そうな顔をした先生が立っていた。
「大丈夫か?」
「まあ、ちょっと。ずっと書いてたので眠くなって」
「まったく。ちゃんと休めって言っただろー。……その感じ小説はできたのか?」
「ええ、一応は書き終わりました。出来は、それなりです」
「おいおい、司織の小説はいつも上手くて面白いぞ。そんな謙遜しなくても」
先生のその言葉が刺さる。自分の力だけで今まで書いてこなかった。それを期待して読んだら失望されるんじゃないか。そのまま色々バレて、ああ頭が痛い。なんだか吐き気もしてきた。目の前がクラクラする。
「おいっ! ああもう、やっぱだめじゃないか」
先生の焦る声を最後、意識がプツリと切れた。
*
目を開くと白い天井。さっきまであの部屋に。いや、あれは夢でいつも通りリボルがいてくれるなんて、わけでもなさそうだ。明らかに家ではない。そして、薬品の独特の匂いが鼻をかすめる。おそらく保健室だろう。
「起きたのか。よかった。大叶も司織が倒れたって知って心配で見舞いに来てたぞ。やっぱり無理はいけない」
「そうだったんですね。それより先生はここにいていいんですか?」
「……ああ。司織に大事な話があるからな」
大事な話。おそらくあの小説のことだろう。長くここで寝ていたわけだし、先生が読んでいても何ら不思議は無い。バレてしまったのだろうか。ただ、それだけが心配だ。
「司織が寝ている間にあの小説を読んだよ。上手かったし面白かった。やっぱり司織は文がきれいだ。あれは上手いと呼ばれるレベルの小説だよ」
「じゃあ、大丈夫ってことですか?」
少し安心できた。これだけ褒められていれば十分なレベルに達しているということではないだろうか。
「ただ、いつもの小説っていう感じじゃないんだよ。ストーリー構成も場面転換も登場人物についても。どこかいつもと違う。なあ、本当にAIを使っていないんだよな。本当のことを言ってほしい。どうしてそんなことをしなければならなかったのかとかも。すぐに政府に引き渡すようなことはしない。どこまでも、司織の味方だ」
「……、」
「すぐには言う決意ができないかもしれない。話す決心がついたら話してくれ」




