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第1話

「今回も助かったぜ、相棒」


 梅雨が明け、暑さが本格的になってきた頃、隣で小説を出版社へ転送している相棒に話しかける。


司織しおりはいつも締め切りギリギリなのに、少しも学ばないのはなぜでしょう。AIが小説執筆に加担しているなんて世間にばれた暁には終わりですよ。あとそのかっこつけてる感じ、イタイ奴みたいなのでやめたほうがいいですよ。いつまで厨二病なんですか。もう高一生でしょう」


 こちらのほうを振り向くこともせず相棒―リボルはあきれた声を返した。いつ見ても思うがなかなか整った顔立ちをしている。


「そんな冷たいこと言うなよ~。お前のこと俺が拾ったってのに」


「またその話ですか。何度も聞かされてもう飽きましたよ」


 面倒くさそうな顔を俺に残して、リボルは部屋を出て行ってしまった。さっきの話のように、リボルは俺が拾ってきたロボットだ。ロボットとは思えないほど豊かな表情をするがな。この世界は技術が発達し、ロボットの見た目も行動も人間とほとんど遜色なくなった。そしてほとんどの仕事はロボットに置き換わっていった。その中で、人間の仕事を守るためにロボットやAIに携わらせてはいけない仕事を定めた。例えば作曲家、書道家、画家、そして小説家。「新しく創ること」というのは人間しかできないことだ、という考え方からそうだ。もしAIなどにその仕事をさせているなら重刑に処されることになっている。だから学校で習うことといえば、そのような創作についてばかりだ。俺はその中でも文才があるとして、本を出版できている。誰も俺がAIと協力して執筆しているとは知らない。なんで法を破ってAIを使っているのかといえば、AIが「新しく創ること」はできないという考え方に納得できないからだ。


「何をそんなに考え事をしているんですか」


 リボルがいつの間にか部屋に戻ってきていた。手にはコップが乗ったお盆がある。


「お、ちょうど喉乾いてたんよね。てんきゅー、ってお茶じゃん。ブラックコーヒーがいいって前も言ったのに」


「苦くて全然飲めなくて、結局ミルクと砂糖をドバドバ入れているでしょう。ブラックコーヒー飲むのは、別にかっこいいことじゃないと何度言えばわかるんだか」


「はああー、ブラックコーヒー片手に読書とかかっこよさの塊だろ。お前、かっこいいってのを知らないんだな?」


「かっこいいというのは『格好が良いこと。見た目が良かったり、デザインが優れていたりする様子を幅広く表す。見栄えがしたり、態度・行動がさわやかだったりして心ひかれる、という気持ち。例文としては」


「待った。辞書的な意味はもういいぞ。男のかっこよさってのは辞書的に表せるもんじゃないんだよ。なんだろうな。こう、生き様というかさりげないところに表れるもんだ」


 俺が思う最高にかっこいいポーズをしながらリボルに諭す。だというのにリボルはわからない、といった顔をしている。これは俺がしっかりと教えなければ。


「よーし。お前にかっこいい男というのを教えてやろうじゃないか!」


「後にしてください。まだ執筆しなければならないものがあるでしょう」


「えー。それまだ提出まで一週間くらいはあるじゃん」


「そう言ってさっきみたいなことになるんですよ。ほら、立ち上がらないで机に座っててください」


 リボルに言われ、仕方なく執筆を始めた。

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