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私的哲学

消えたいと思う話

作者: 羅志

 ただ漠然と、消えたくなったことがある。

 自分という存在が嫌で嫌で仕方なくて、とにかく嫌いで。存在意義を感じなくて、周りにとっても害悪にしか思えなくて。自分のような怪物を親に育てさせてしまったと、産ませてしまったと、そう感じて。

 強く、強く、消えたいと思った。生まれたことさえなかったことになりたいと、存在の痕跡を消したくなった。

 けれど、死ぬのは怖かった。この世から消えるのには死ぬのが手っ取り早いけれど、死ぬのは怖かった。

 私にとって、死ぬことと消えることは、別だった。

 死んだら痕跡が残る。死体が残る。私がいたことになる。後始末やら、何やらを周りにさせてしまうから、迷惑をかけてしまう。生きていても傍迷惑で害悪なのに、死んだらより余計な迷惑をかけてしまう。

 だから、消えたかった。

 初めからなかったものなら、何の迷惑もかけない。だってないんだから。記憶も記録もなにもかも、存在が消えたらいい。ぱっと消えたなら、死ぬ恐怖もない。周りに迷惑しかかけない化け物なんて、初めからないほうがいい。


 この消失願望は、おそらく希死念慮といえるものなのだと思う。消えたいに混じって死にたいと思ったことがないわけではないから。いっそ誰か、私の代わりに私を殺してくれと思ったこともあるから。

 けれど、死ぬのが怖いのも事実。だから、私は死にたいというよりは、消えたいと思ってしまう。腕を切ったり引っ掻いたり爪を立てたりと、自傷するとしても、明らかに太い血管がそこに見えている手首を切らないのも、死ぬのは怖いから。

 

 最近は、割と落ち着いているから、あまりその衝動に駆られたりはしないけれど。

 きっと、また強く不安に駆られたりした時、私は消えたいと感じるだろう。

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