03.
鈍痛で目が覚める。
そのまま飛び起きようとして今度は腕に鋭い痛みが奔った。
確か自分はこの森の主とも呼ばれるサベージベアーと戦っていたはずだ。
テンポの変わった突進をギリギリで躱し、しかし伸ばされた腕の一撃を受けてしまった。
その一撃により意識持って行かれたらしい。
状況の把握に努める。
腕を痛めたままで戦闘の継続は可能だろうか。
辺りが静か過ぎることに違和を感じながら、腰のポーチから虎の子の回復薬を取り出す。
ほぼ一瞬で傷を癒すことが出来る反面、その価格は今回の報酬と同額くらいだ。
治療に使うために回復薬の蓋に手を掛けたその時、意識が待ったをかける。
「?」
広場の端に黒い毛に覆われた、動かない小山。
息を殺すようにして持ち替えた通常の回復薬を煽る。
ゆっくりと十を数えても小山は身動ぎもしない。完全に息絶えているようだった。そしてその間に広場にもう一つ、いやもう一人倒れていることに気付く。
痛みが消えてからまずサベージベアーに近付き、事切れていることを確認。
次に倒れている人に近付き、脈と怪我の有無を調べる。
脈と呼吸は有り怪我が無いことを確認してから、再度サベージベアーに近付く。
左目にはナイフが刺さっており、致死傷となった傷口を検分する。
「すごい」
思わずため息が漏れた。
生きている間は鉄よりも硬いと言われるサベージベアーの毛皮。
それを綺麗に切断、絶命させている。
しかも一撃で、だ。
きっと毛皮は良い値段が付くだろう。
いろいろ思うことはあったが死体が消えてしまう前にメニューを呼び出し、収納を指示する。
もしかしたら収納に失敗するかもしれないという懸念は杞憂に終わり、無事に死体が消える。
その場には刺さっていたナイフだけが残された。
「さてと…………」
差し当たって身の危険は無いと判断。次に気になるのは倒れている人のことだがその前に近くに落ちていた自分の剣を手に取って三度素振りをしてみる。
剣身は特に問題は無さそうだったので刃先の傷を確認する。
こちらも問題は無し。欠けた箇所も見つからずまだまだ相棒として頑張ってくれそうだ。
だが逆にそうなると不可解なことが起こる。
剣を鞘に収めてから、かがんで倒れている人を観察する。
黒髪の少年。ギリギリ成人したかどうか。
身長もそれに準じるくらいだが、やや細身。
この森の中を歩くにしては余りに身軽な格好だ。
近くの村の出ならこんな奥までは入って来ない。迷うにしたってそれならもっと幼い子どもだろう。
「――――」
少年のベルトの鞘に、さっき拾ったナイフが綺麗に収まる。
メニューの収納から除外されたことからも、少なくともこのナイフは彼の物で間違いない。
もし彼が、私の剣でサベージベアーを斬ったのなら。
剣身も刃先を痛めずに切断する技量を果たして彼が持っているのだろうか。
状況的にはその可能性が高い。
だがそれならなぜ倒れているのか。
不明な点は多い。
答えを求めるのなら
「目が覚めるのを待った方がよさそうですね」