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雷獣  作者: ごーまるな
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2022年4月13日 19時12分

「...ウト、...優人、優人!起きなさい!!」


聞きなれた声ではっと目を覚ます。天須羅の夜景を見ていたらいつの間にか眠ってしまったらしい。

なんだか随分懐かしい夢を見ていた気がする。

辺りを見渡すと両親と妹が俺を覗き込んでいた。


「雷獣に襲われたって聞いて、お母さん気が気じゃなかったんだからね!!!」


母親の大声は頭の傷に響く。


「だから電力公社は危ないって言ったのよ!お母さん何度も止めたよね?。最近は海人(かいと)も電力公社に就職するって言いだすし...。」


海人は俺の弟で、今は俺と同じ第三高専に通っている。沼津と天須羅は離れているため、流石にお見舞いには来れなかったらしい。


「母さん。今は西日本電力だって!何度言ったら分かるの。」


とりあえず電力公社はもう無いことを訂正する。


「まあ良いじゃないか。優人がやりたいって言って今の仕事に就いたんだから。それより雷獣を実際に見たのか?どんなだったんだ?」


父親は浜松の貧民街で電気技師をやっている。電気自動車やスマホの修理などを請け負い、街ではちょっとした有名人だった。電気屋なだけあって、雷獣には興味深々だ。


「お兄ちゃんこう見えて頑丈だからね。私は最初から心配ないと思ってたよ。」


妹の美琴(みこと)は公立の中学に通っており、兄弟で唯一の実家暮らしだった。

実家と言ってもトタン造りの平屋型集合住宅で、部屋も3つしかなく狭苦しい生活であった。


「まだ本調子じゃないからね。また実家に帰ったら話すよ。」


とりあえず今日は疲れたから早く眠りにつきたかった。


「まったく。国電でわざわざ天須羅まで来たのに。」


母親はあきれ顔だ。


「まあまあ、無事なことを確かめれたから良かったじゃないか。優人も今日は疲れただろう。俺たちは帰るからゆっくり休むんだよ。」


父親は昔から俺の意向をくみ取るのが早い。


「ええー。もう帰るの。せっかく初めてできた彼氏の話をしようと思ったのに...」


妹がふくれっつらな表情をする。兄として聞捨てならないことを言っていた気がするが、今は眠気が勝つ。


「これあんたが好きな豆乳プリン!冷蔵庫に入れといたから食べるんだよ!」


そう言い残して俺の家族は病室から去っていった。


台風みたいな家族だな。これは夢か?


そんなことを思いながら目をつむると10秒後には意識が遠のいていた。

≫でんりょくこうしゃ【電力公社】

正式名称「日本電力公社」。1931年から2019年までの間、日本の電力を一元管理していた公共企業体。地域の人はまだこの名を呼ぶ人が多い。

2019年4月に西日本電力と東日本電力へ分社。


≫こくでん【国電】

正式名称「日本国有鉄道」。日本の国有鉄道を管理している公共企業体。

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