2022年4月13日 16時33分
ジーーーッ
耳をつんざくような大きな音とともに辺りが真っ白になった。
ドサッと何かの重量物が落ちる音。俺は静かに目を開いた。
俺はまだ生きている...?
目の前には眼の光を失った雷獣がぐったりと横たわっている。
ピクリとも動かないことから、絶命しているのだろう。
しばらくすると上からゴトンという音がした。
「大丈夫ですか?」
聞いたことのない女性の声だ。
上方を見上げると、俺と同じ制服を着た女性がこちらを心配そうに覗き込んでいる。
手には刀のようなものが握られており、柄の先端から電線のようなものが伸びている。
ザー
-天須羅警備指令より東山警備3、状況はどうか。
彼女は胸元の無線機に視線を落とし、応答する。
-こちら東山警備3ですが、カテゴリー1の雷獣を現地にて発見。技術系の当社社員を襲っていたため、地絡剣で活動停止させました。社員は命に別状は無さそうですが、額から血を流しているため、救急車の手配をお願いします。
-天須羅警備指令了解。ケガした社員の所属と名前をお願いします。
-了解、今から聞き取ります。どうぞ。
再び彼女は俺の方に視線を向ける。
「天須羅支社の方ですか?しゃべることはできますか?」
ようやく落ち着いてきた俺は、かすれた声で彼女に言う。
「天須羅支社配電部配電1課、技術営業2係の滝内です。助けていただいてありがとうございました。」
彼女はニコッと笑い、俺の方に手を差し伸べる。
「私は東山変電所警備係の竹下です。無事でよかった!」
俺はふらつく手で彼女の手を握る。
安心したからか、俺の目から涙があふれだす。
15年ぶりの男泣きであった。
≫ちらくけん【地絡剣】
対雷獣制圧用武器。雷獣の皮膚を破る特殊な加工がされており、柄の先からはコードリールが伸び、先端を接地して使う。剣で雷獣を貫くと雷獣内の電気がコードリールを伝って地面に逃げ、活動停止させることができる。