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雷獣  作者: ごーまるな
14/34

2022年5月9日 12時55分

「滝内さーん!ちょっといいですか?」


昼休みが終わろうとしていたところ、後輩の米田に話しかけられた。


「午後なんですけど、大池(おおいけ)の例の事務所の901に行ってもらうことって出来ませんか?」


901は供給停止業務。すなわち電気代を払わない人の家まで行って、電気を遮断する仕事のことだ。

契約は「従量電灯C」、契約者名は「掛川(かけがわ)任侠連合(にんきょうれんごう)事務所」となっていた。


「これ俺殺されない?」


大池にある暴力団事務所は有名で、地元の人もあまり近づかない。


「大丈夫ですよ。SGが1人ついていってくれるらしいです。」


SGの護衛がつくなら有難いな。


「それは心強いな。1番強そうなやつで頼む。」

「滝内さんの彼女を手配しておきました。美由ちゃんが一緒に行ってくれるらしいですよ。」


俺は吹き出す。


「ちょっ!米田!まだ彼女とはそんな関係じゃ...」

「冗談ですよ。ドライブデート楽しんでくださいね。」


............


玄関前に出ると、美由が外で待っていた。


「午後からよろしくね。」


声をかけると美由はニコッと笑いかけてくれる。


「あなたは死なないわ。私が守るもの。」


某アニメの名言を美由は披露する。さすが高専卒、アニメと漫画とゲーム知識には長けているみたいだ。


2人で西日本電力のロゴ入りの軽箱自動車に乗り込む。

俺の社用車は、先月の事故で廃車になったため、新車になっていた。

美由は装備が色んな場所に引っかかって窮屈そうだ。


狭い車内で2人きり。シャンプーの良い香りがほんのり漂ってくる。俺の心臓は高鳴っていた。


「開局無線入れるね。」

「うん。」


今日の美由は口数が少ない。不思議に思いつつも、基地に連絡を入れる。


ザー

-天須羅配電司令、こちら天須羅配電15です。どうぞ。


少し間を置いて、無線機が話中のランプを灯す。


-天須羅配電15、こちら天須羅配電司令です。どうぞ。

-えー、15ですがこれより大池の901、竹内と警備課の竹下両名で出向します。

-配電指令了解。気をつけて出向くださいどうぞ。


「行きますね。」

「よろしく。」


アクセルを唸らせ、俺は西へ向けて車を走らせた。


「運転上手いね。」


しばらく経って美由が口を開く。


「修行期間中は毎日指導員と同乗してたからね。運転は鍛えられたんだ。」


新人の時は駐車場所とか運転方法で、指導員によく怒られた。あの時は訓練所の次くらいにきつかったことを思い出す。


それにしても今日の美由は変だ。いつもの元気が感じられない。彼氏にでも振られたのかな。彼氏いるか知らないけど。


「お!そろそろ着くよ!」

「うん。」


一回事務所の前を通り過ぎ、脇道に入ったところで車を停車させる。


「降りようか。」


車を降りて、危険表示のカラーコーンを車の左右に置く。

竹下は警護装備の準備をしていた。

俺は内線工事用の腰道具(こしどうぐ)とヘルメット、革手袋を装着し、2人で事務所へ向けて歩き出した。

≫ないせんこうじ【内線工事】

建物内の電気の流れを整備する工事。電気メーター周りの工事のことを言う。電柱や電線、機器関連の工事は外線工事という。


≫こしどうぐ【腰道具】

電気工事作業に使う道具を装着するベルト。西日本電力には内線工事用と外線工事用がある。

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