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みんなでつくるせかい  作者: フハマ・サペウ・ムソバ
はじまりのはじまり
2/2

始まりの存在達

 そこは薄暗い広場だった。薄暗い以外に特徴のあるものはなく、その広場の中心に楕円形の机がある。その机から発せられる微かな光のみが唯一の光源だ。そこには様々な見た目をしている者達が椅子に座っており、一様に沈黙している。その様子はそれぞれ違っておりどこか一点をジッと見つめている者、暇そうに頬杖をついている者、目を瞑ったまま下を向いている者、ニヤニヤしながら周りを見ている者など十人十色だ。


「さて、全員揃ったようですから始めましょうか。」


 そう切り出したのは一番最後に誕生した者だった。腰まで伸びた黒い髪とキラキラと輝く薄い赤色の目をしていて、黒いコートと黒いハイレグの水着のような物を着ている。


「そうね、始めましょう。」


 そう返事をしたのは1番最初に誕生した女だ。こちらは背中まで伸びたウェーブのかかった金色と緑色の中間のような薄い色味の髪と濃い緑の目が特徴的だ。身体のラインを覆い隠すようなローブを着ている。


「はい、まずは私達の存在意義についてですが、皆さんご存知のようにお父様の意識がある間に安らいだ気持ちで過ごしていただき意識がなくなる時も穏やかな気持ちで眠っていただくことです。」


 これは流石に誰でも理解している。まずそれぞれの意識が鮮明になった時に頭の中に入ってくるのだ。1人でいることへの苦痛と自分が作った世界が目覚めた時にはなくなってしまっていることへの悲しみを。自分達に与えられた情報はこれだけであるが、創造主の心の安寧はこの場にいる全ての存在の共通のおもいだった。


「確かにそれはわかっている。だが、どうすればいいのだ?俺達がどうすべきか話してくださる前に母様は眠ってしまわれただろう?」


 次に口を開いたのは赤色の短髪、金色の瞳赤銅色の肌を持ち4本の腕を持つ大男が膝まで覆う腰布一丁の姿だ。


「そうだよね、その辺の誰かに何をやってもいいなら適当にやるけど父様相手にそんなことできないよ。」


 気だるそうな態度で青い上下のスーツと赤いスーツベスト、白いネクタイを身につけた金髪で水色の瞳を持つ少年も意見を話す。額から1本の角が生えているのが特徴的だ。


「ええ、だからこそ逆に選択肢は狭まってくるでしょう。長期の眠りが必要なお父様と違い、我々は睡眠は不要です。ですから我々で世界を作りそこに生きる生命達の営みを物語としてまとめ、献上するのです。」


当然ながら反論は出る。


「なぜそれが正解であると言えるのか。」


「その手法の根拠は?」


「もし創造主様のご要望と違ったらどうするの?」


「それが正しいとしたらどうすればいいのかしら?」


 などその場にいる様々な者達からの声が挙がった。


「確かにお父様は私達を創造し、自らの気持ちを伝えた後眠りにつかれてしまわれました。何のために私達を創造したのか、何をすればいいか、また何をして欲しかったのかと一切お話をされずに。ですがお父様は何度も世界を作り生命の営みを見ようとされていました。つまりそれこそがお父様の最も見たかったものです。」


「それじゃあ、世界を作るとしてどんな世界を作ればいいんだ?創造主様がどんな世界を作ってきたかなんてここにいる全員わからんだろ?」


 全身赤いローブを着て顔はもちろん体型もよく分からず、高いのか低いのかよくわからない声で性別も判別できない者が話す。


「それについては大丈夫でしょう。お父様が強く願っていたのは、創造した世界の中で生命達の営みを見たいという点です。ですからそれぞれ好きな世界を作っていけば問題ないと思います。むしろ多種多様な方が喜ばれると思いますよ?例えば我々数人で1つの世界を作り神として君臨しその世界を運営してもいいでしょうし、逆に1人で複数の世界を運営してもいいでしょう。」


 彼女は自身満々に話す。あたかも予め正解を知っていて全員の意思を誘導し、まとめ上げようとしているかのように。

 実際の所その場にいる者達のほとんどは困惑していた。自分達を創造した存在から与えられた力はとても強く、ここから別の次元へ侵略行為をしても苦もなく事を為すができるだろうし、神を名乗ってどこかの次元を支配することも可能だろう。そして単純な力だけではなくそれぞれ異なる権能も与えられ正しく天上の存在であった。


「とにかくまずは行動することが大事です。お父様が次に目覚められるのが数年後なのか数百年後なのかはわかりませんが、次に目覚められた時に我々がいるだけなのと我々がいて尚且つ物語を献上したとなれば後者のほうが倍喜ばれるでしょう。」


 創造主の感情のみを教えられそれに対して何を成すべきか、この力を何に振るうべきかわからなかった者達は彼女のその堂々とした態度に安心し同意しつつあった。


「やり方はそれでいいとしてさぁ、あたし達がその世界に直接降りて直にそこの生命と触れ合ったりしてもいいんだよね?」


 そう発言したのは見た目は薄い紫色の肌をした全裸の少女だ。しかし6本の腕を持ちそのうち4本が彼女の胸部や局部を隠している。


「はい、大丈夫でしょう。むしろそれはそれでお喜びになられるかもしれません。それとお父様はとても優しいお方なので、よほどのことがないかぎりお怒りになることはないでしょうし、仮に好みの物語ではなかったとしてもその世界を壊せとは言わないでしょう。世界が壊れてしまうことの悲しみは1番理解していらっしゃいますから。」


「そうだよねぇ、それならあたしは自分を頂点にした世界を作ってみようかなぁ。」


 その言葉をきっかけに私はこういうのを作りたい、俺はこうしたい、一緒に世界を作らないか?など様々な意見が飛び出した。ある程度意見を出し合い落ち着いた頃合いを見計らって締めくくりの挨拶が行われた。


「それでは皆さん良い創造を!私は役割の関係で世界を作ることはできませんが、助力は惜しみません。例えば先程の複数人での世界の運営を行う場合に運営の1人として手を貸すなどのことはできますので、何かあれば気軽に話してくださいね。ただし無断で私の存在を利用したなどのことがあれば、その分の罰則を払ってもらいますので。」


 その言葉を皮切りに解散となり、1人また1人と姿を消していった。残ったのは最初の女と最後の女の2人だけになった。


「いよいよ始まりましたね。」


「そうね、これから忙しくなるわ。」


 2人はお互いを正面から真っ直ぐ見据えて会話をしている。


「私達はお互いに特別な役割を与えられている。またその役割による特権もね。」


「ええ、そうですね。」


 しれっとした態度でニコニコと笑みを浮かべる最後の女に対して最初の女は念を押すように話を続ける。


「幸いな事にその特権は私達の意思で使えるようなものじゃないから他の子達を抜け駆けすることはできないわ。」


「もちろんです。それに私達の役割と特権はあの場にいた皆さんご存知のはずですから。」


「念のための確認よ、私達は他の子達よりやることが多いということのね。」


最初の女は一息ついてから話を続ける。


「最後に言っておくけど、私とあなたの個人的な目的は同じだと思ってるわ。その上で私達が創造された本来の目的を遂行しつつ、役割をこなさないといけない。とても大変な道のりになると思うけど、降りるつもりはないわよね?」


「言うまでもないでしょう?逆にそちらが降りませんか?」


「私が降りると言うと思う?」


 最初の女も微笑みながら返事をするとお互いに笑顔で見つめ合う。最初の女は小さいため息をつくと席から立ち上がった。


「どちらにせよしばらくは協力して主様の御心を満たす必要があるわ。お互い頑張りましょうね。」


 そう言うと最初の女は広場から姿を消した。残ったのは最後の女だけになった。


「絶対に成就してみせる、私の…」


 その一言と共に瞳の輝きを強め、口角を上げると彼女もその場から消えた。


 そして誰もいない薄暗い空間だけが沈黙に満たされた。

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