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偽義家族の観察1

いよいよ(偽)義実家に突撃です。

ええっ!?実家っ?家族っ!


偽装なのにそこまでしていいの?イヤ、ご両親は偽装とは知らないから普通に恋人、婚約者のフリを完璧にこなさなければいけないんじゃないかな?よーし!拓海の完璧な恋人を演じなければね。


拓海の嘉川への崇高な愛を守る為に、悲恋に身を焦がす尊き生き物を守るのが私の使命!


「お〜い、エレベーター来てるぜ」


エレベーターの中から拓海が呼んでいるので慌てて決めポーズを解いて、エレベーターに乗り込んだ。


拓海はスマホを見てから、私に微笑んだ。


「おっ、母さんはOKだな。じゃあ今週末空けておいて〜」


拓海のお母様!?確か拓海ママンは、おフランスのハーフよね?ジュリアーナさん(仮名)と会った時の為に今日は顔の美容パックでもしておくかな!


その日の夜、拓海はうちのマンションのフィットネスサロンに行って一汗かいてから帰って来た。


「良いトレーニング機器、置いてるよな~」


シャワーを浴びてからキッチンに来た拓海は苦笑いを浮かべながら麦茶を飲んでいる。


「何かさ、フィットネスに来てる住人のおばちゃん達に質問攻めにあったよ。どちらにお住まいなの?とかご結婚は?とか…まさかおばちゃんに狙われてたのかな?」


いや、マダム達ご本人じゃないと思うよ?娘とか姪とか孫娘とか…その辺りの女子を推薦しようとしていたんだと思うよ。


「8階に住んでいる相笠の婚約者ですって言ったら皆、笑顔でスーッと引いて行ったわ」


そりゃマダム達は私がこのマンションのオーナーだって知ってるものね。私の詳しい背景は分からないとしても、拓海はすでに金持ちの女に捕まっている…とみたはずだ。


私、拓海さんの偽物の婚約者ですけどね~


今日の夕食は豚の生姜焼きと肉じゃがとアンチョビガーリック風味のサラダ、わかめ味噌汁のメニューにした。


いつも拓海さんは幸せそうに食べてくれるね~作り甲斐があるよ。


それにしても拓海は本当に優しいね。私に声を荒げたこともないね。本当は嘉川と向かい合ってあ~んとかして食べたいだろうに、正面に座るのが偽物の私でゴメンね…


◇■◇


『愛の狩人』


××月××日(火)


会社に私とお見合いをする予定だった男が押しかけてきた。


出世の為に彼女を捨てるなんて、とんでもない野郎だった。拓海を見習って欲しい。日陰者になりながらも一途に嘉川への愛を貫いている男前だ。あんたとじゃ愛の深さも、悲恋の度合いもマッ〇ーホル〇と天〇山くらいの違いがあるんだからな。


追記


夜中、貴明兄からメッセージが届いた。『あいつは処分しておいたからな』処分ってなんだ?恐ろしいことを考えそうになったので、拓海の切なそうなイケメン顔を思い出しながらその日は眠りにつくことにした。


◇■◇


朝、起きるとランドリールームで拓海が洗濯をしていた。何時から起きてたんだろう?


「よっ、おはよ。この先の公園まで走ってマンションまで帰って来たら、丁度いい感じの距離を走れたよ」


朝から走って来たの?すごいね、愛を愁う生き物は。


「そうだ~引っ越しの日、再来週の月曜になったんだけど、ここに業者が入るけど大丈夫?」


んん?壁にかけているカレンダーを見る。再来週は振替休日になっている月曜日か。


「大丈夫だよ。カレンダーに印つけておくね。引っ越し業者さんには駐車場の業者用の大型スペース借りれるように申請しておくから…て伝えておいてね」


再来週の月曜日『拓海引っ越し』と前の週の日曜日は『拓海実家訪問』と書き入れておいた。


私が朝食の準備をしていると洗濯物を干して戻って来た、朝からイケメンさんは朝食の準備も手伝ってくれる。


「食材は足りてる?」


「そうだね、週末にまとめ買いに行かないといけないかな~」


「うん、分かった。土曜日は買い出しに行くか?その時に手土産も選ぶ?ホラ、うちの実家へ…」


私がポカンとしているので、拓海が慌てたように補足してくれて気が付いた。


あっ!ご実家への手土産!出来る嫁(偽)だと少しでも良い印象を持って頂かなければ…


「選ぶ、選ぶ~」


本当、気の利くイケメンだね。


その日のお昼休み


食堂でお弁当を食べていると高校の時の友達から「元気にしているか?」と連絡が入ってきたので、拓海のことを知らせると、他の友達からも追い討ちでメッセージが大量に来ていた。


改めて拓海の報告会を開催するよ、とメッセージを送って緑茶を啜っていると、きつねうどんを食べる草野君が視界に入った。


ああ、久々淡い恋心を観察出来るチャンスだね。尊い…それで~そんな草野君が大好きな美和ちゃんはどこだ……え?ええ?


美和ちゃんは…山下さん(ちょっとオタク系)と楽しそうに昼食を食べている!?ええ?どういうこと?


「あっ…相笠さんも気が付いた?人事部の山下さんと営業部の佐原 美和さん付き合い始めたんですって〜」


私が見ている視線に気が付いた後輩の市川さんの発した言葉に愕然とした。


「み、美和ちゃん…草野君のこと好きじゃなかった?」


「やっぱりそうだよね?どうしてかな?」


川上さんも初々しい美和ちゃんの片思いに気がついていたらしい。本当だよ…あの尊い恋に何があったの?


暫く、美和ちゃんの恋の行方を皆でコソコソと話しながらお弁当を頂いた。


その日の夜、早速友達に呼び出されたので、拓海に断りを入れてから仕事終わりに飲みに出かけた。


高校からの友達三人に囲まれる。


拓海の事は前からイケメン同僚としてチラチラ話題にはしていたので、根掘り葉掘り聞かれるということはなかった。


お見合いを避けたくて拓海に頼んだら、じゃあもう俺と付き合っちゃえば~と言われて同棲しているまでの件を説明すると、友達達は顔を真っ赤にして身悶えていた。


「じゃあ、俺と付き合っちゃう?イケメンに言われたいよ~!」


「写真見せろ!」


写真…?あったような…急いでスマホのアルバムの写真を検索する。


「会社の旅行で…二年前のぶどう狩りの、あったこれだ」


あれ?この写真よく見ると、拓海と私のツーショット写真じゃないか。そういえば自撮りをしていたので、手に持ったぶどうをフレーム内に収めようと携帯のレンズの位置ばかり気にしていたけど…拓海をよく見れば私の肩に手を回しているし、おまけに私の頭に顎乗せてるよ!


「はい…これが加瀨 拓海。同い年」


女子3人が一斉にスマホの画面を覗き込んだ。


「ひえぇぇ!どこのモデル!?」


「外国の人なの?目が緑色だよ!?」


「いいなぁ~私にもイケメン落ちて来ないかな!」


皆の反応が素直でいいね。


「イケメン様なのはそうなんだけど、友達の延長みたいな気楽さがいいんだよね」


「うらやま!」


まあ、確かに目の保養だけど、私は偽装結婚(予定)なんでね。羨ましがられる要素はこれっぽっちも無い訳ですよ。


自分の恋愛は諦めているとはいえ、やはり少しはトキメキやら胸キュンの恋心を味わうような恋人同士→婚約者→結婚。こういう流れに乗りたかったよね。


今更言っても仕方ないけれど…何だか泣きそうに…くうっぅ!手に持っていたグラスに入った夏みかんサワーを一気飲みした。


「ふぃ~~!すみませんっカルアミルク下さい!」


「ちょっと、ちーちゃん大丈夫?あんた、お酒強くないでしょ?」


「うん…うん…」


うっかり友達…南田 小夜に相槌をうった時に首を縦に大きく振ってしまったので、目が回る?クラッときそうになった。


その後、皆の恋の話を聞いたり、何故だか拓海に電話しろーと言われて電話したりして…気が付いたら居酒屋に迎えに来てくれた拓海に手を取られて店から外に出ていた。


「めがまわる…」


「大丈夫か?」


拓海の肩にもたれて何とか立っている状態だ。ふらつくぜ…


「やだ~本当すみませ~ん!」


「わざわざありがとうございますぅ!」


「今度は拓海さんも一緒にぃ~」


皆の数オクターブ高い声がキンキンと遠くの方から響いて聞こえている。


「あれ…もう終わりぃ?」


「もう終わりだよ?それじゃここで失礼します。ホラ千夏、真っ直ぐ歩けよ」


「うらやま!」


 皆に何か言われてるみたいだけど、手を振られたので振り返して、拓海が引っ張る方向へ歩いて行く。


「どこいくのぉ?」


「車に乗って来てるから、気分は悪くないか?」


「だいじょーぶ」


繋いだ拓海の手をブンブン振り回すと、拓海が恋人繋ぎに手を繋ぎ直してきた。


「もう外で飲むなよ?」


「どうして~?」


「危なっかしい…」


「え?」


拓海に聞き返そうとして顔を上げた時、視界が塞がった。あれれ?私、拓海に抱き締められている?


暖かい…身長差があるから私の体がすっぽり拓海の体に包まれている。


「拓海…?」


「……」


暫く拓海は私の体を抱き締めていたけど


「千夏、酒臭ぇ~」


と笑いながら私の体を解放してくれた。


「ちょっと!乙女に向かってぇ酒臭いってぇ?」


「ほらほら~乙女ならしっかり歩け!」


拓海に腰を支えられて、何だか拓海に怒鳴っていたのは憶えている。家に帰って乙女だから~とか怒りながらお風呂に入っていたのも憶えている。


朝、眩しくて目が覚めた。あ…薄いレースのカーテンしか部屋にないから眩しいんだ…?


あれ?昨日私どうしてたっけ? ゆっくり体を起こした。


「それがどうして拓海さんの部屋で寝ているのだ…ええ!?拓海の部屋ぁ!?」


因みに私が今、居るのは拓海の部屋だけど、部屋の主はいない。


キョロキョロしていると枕元に自分のスマホがあり、拓海からメッセージが入っていて『走って来る』とあった。


朝6時12分…あいつは何者だ?いや、会社の同僚で偽彼氏で偽婚約者で偽旦那になる予定の人だけど。


のっそりと拓海の布団から這い出ると、急いで隣の自分の部屋に戻り、仕事用の服に着替えた。


そう言えば、まさか拓海と私…一線を越えたの?


んん?


自分の体の様子を見てもそんな感じはない。当たり前だ、私は偽物だ。そんなことにはならない…はずだ。


取り敢えず落ち着こう。


朝食の準備をした。大和芋を下ろし、出汁で溶いた。鰺の開きをグリルで焼き、お弁当用に鮭もついでに焼く。だし巻き、豚しゃぶしゃぶも作って置いて…ポン酢タレとゴマダレを調合していると拓海が帰って来た。


「おはよ~」


「おはよ、昨日ゴメンね…えっとお布団占領しちゃって…」


拓海は汗を拭きながらキッチンに入ってくるとニヤニヤしている。


「お~まあいいけどさ。お前、ホント外飲みは気を付けろよ。寝るまでウダウダ騒いで、俺の布団に入ってくるしさ~」


「!」


とんでもないセクハラじゃないか!いやそれを通り越して犯罪だよっ!?


「た…た、拓海に無体な事をしちゃったの!?」


「いやいやどう考えても俺の方が腕力も体力もあるから、防げっから!こっちは嬉しいけど~?」


「何?何だって?」


丁度お鍋が沸いたので、そっちに意識が向いて拓海が話したことを聞き逃していた。


拓海は口を尖らすと、別にいいよ〜と顔を真っ赤にして部屋に戻って行った。


そして拓海はイケメン営業さんに変身して戻って来た。


「朝御飯〜おおっ山掛け丼?」


「大和芋だよ〜好みで増量してもらえるようにおかわりは自由です!お好みで生卵とワサビ、きざみ海苔どうぞー!」


拓海はうんうんと頷きながら、丼を食べている。鯵の開きも食べている。


「これ山掛け蕎麦にしたい〜」


「いいね、今度しよっか」


本当、普通の新婚さんみたいだね。全然ケンカも無いし、気心知れてるからお互いのタイミングでのんびりと生活出来てる。


そして週末になった。


今日は明日、拓海の実家にご挨拶にお伺いする時に持って行くお土産を買いに行く予定だ。出かける準備をしながら拓海に聞いてみた。


「お母さん、何が好きなの?」


「ん?んん~?レバーが嫌いなのは知っている」


これだから男の子って…うちの義兄達もきっとお母様の好物なんて知らない。


「洋菓子ならクッキー、和菓子ならお煎餅。無難だけど間違いない!」


と言う無難なチョイスの手土産を、某デパートで選ぶことにした。という訳で、拓海と某デパートのデパ地下までやって来ていた。


いやいや~デパートのお菓子売り場は目移りするね~…んっ!?その時に妙に人だかりが出来ているお店があることに気が付いた。よく見ると…


「何ぃ?期間限定?ええっ日本初出店!?…ん?NY発!?」


私は走り出した…イケメン様を置き去りにして…


「……クッキーか煎餅にするんだろう?」


拓海が腕を組んで呆れ顔で私を見ている。私はそんな拓海をキッと睨んだ。


「今、並んでいるお店の列は視察だよっ視察!今後の参考の為に列に並んでるのっ!クッキーや煎餅の店は逃げないけど、限定は売り切れる心配があるから…」


「……はっきり言えよ。食べたいんだろ?」


私はNY発!日本初出店!最後尾こちら!と書かれたプラカードを持ったお姉さんが居る最後尾に並んだ場所から、ちょっと遠くにいる拓海に向かって頭を下げた。


「ハイ、タベタイデス」


拓海は溜め息をつきながら近づいて来ると、一緒に列に並んでくれた。プラカードを持ったお姉さんや私の前に居る女性2人組が小さく悲鳴をあげている。


「これは今日食べるだろ?生ものっぽいし…あ、そうだ。日曜なら三鶴やあいつらが居るかも?お土産はクッキーの方がいいかな~」


「ミツカ?」


「漢字の三に鳥の鶴で、三鶴。24才の妹。それにその下に弟と妹と上には兄貴がいる。兄貴は結婚して家を出てる。妹と弟は高校生」


「5人兄弟!」


「千夏の兄さん達よりはインパクトは薄いけど」


「それどういう意味だよ」


「だって2人共、俺にメッセージ送ってくるよ?恋人差し置いてお兄さん達の方が飲みに行こうとか誘って来るなんて、千夏よりマメだよな?」


なにやってんだぁぁ~あのボケ義兄達はぁ!?


◇■◇


そして本日はいよいよ拓海の実家にご挨拶に行く日だ。


メイクは派手でないだろうか?この薄い水色のワンピースはOKだろうか?


「拓海、変じゃない?」


「大丈夫だっていつもの仕事のメイクより、盛れてるよ」


「何だかそれ微妙な褒め方だよ!仕事の時は駄目なのか?それとも今が派手過ぎるのか?」


「はいはい、着いたよ~」


閑静な住宅街の割と大きな家…大きなワゴン車が停まっている。拓海のご家族の人数が多いからかな?


一台分空いている所に車を停めて、拓海の後に続いて玄関先に立った。


「ただいま~」


はーい、と声がして…おおっ!拓海さんに似ているママンが出て来た。美人だね!お義母さんがおフランスとのハーフなんだね。


「いらっしゃいませ、母のマリーユです」


ジュリアーナではなかった…マリーユママンだった。


「初めまして、相笠千夏と申します。これつまらないものですが…」


お義母さんにハハーッとクッキーのお土産を渡していると、お義父さんと…あの子が三鶴ちゃんかな?がニコニコしながら歩いてきた。三鶴ちゃんは外国人要素は少なめなお顔立ちだね。


「いらっしゃーい。千夏ちゃんだね。上がって上がって」


「写真の人だ!初めましてっ三鶴です」


写真の人?んん?と思って拓海を見ると拓海は真っ赤になっていた。


「おい、ミツッ!余計なこと言うなよっ!」


怪しい…


「タクにーちゃんお帰り~」


私達が室内に入ると、高校生くらいの女子が居た…この子が下の妹さん?


「初めまして相笠 千夏です」


「あ…凛香です」


ペコン…と頭を下げると凛香ちゃんはササッと2階に上がってしまった。


「高校生だから~あんなもんですよ。ねぇ、ママ」


「照れちゃってね~ごめんね」


三鶴ちゃんとママンが今の凛香ちゃんの心情を説明する。凛香ちゃんさ、もしかしてブラコンとかじゃないのかな…ハッ!


これもまた尊き想いの一種じゃないか!?実兄に対する禁断のぉぉ…ガサガサとバックの中を探っていたら、拓海に肩を掴まれた。


「お前また発作が起きてたんじゃないか?落ち着け」


発作とは何事だっ!尊き生き物達の愛の軌跡を書き綴るのが私の使め…


「千夏ちゃんケーキ食べるかい?」


「はーい、頂きまーす!」


私の使命はお義父さんから告げられた甘い食べ物の誘惑にあっさり負けた。


その後は穏やかにご挨拶が交わされた。色々と心配していたけれど加瀨家は心温かく出迎えてくれた。


「でさ~今年中には婚約して来年には式を挙げたいかな~とか考えてて…」


と拓海が言い出すと、お義父さんとお義母さんは居住まいを正すと


「じゃあ結婚するのね?」


とニコニコしながら聞いてきた。


「はい」


私と拓海の声が重なって、何故だか三鶴ちゃんが写メを撮っている。どういう状況?


「新居はどうするの?」


ワクワクしているようなマリーユママンに聞かれて拓海が、私に視線を向けてきたので私が代わりに答えた。


「簡単にご説明しますと、私の実母は赤ちゃんの時に死別していまして、父がその後に再婚した方が…今私の母代わりをしてくれています。実はその義母とも父は離婚をしていまして…私は実父とは疎遠ですが、その血のつながらない義母と義兄が私の方の家族のような立場です。両親達の離婚で私の養育や慰謝料やら財産分与やらで揉めたので…私は現在住んでいるマンションを貰い受ける形で落ち着いてます。結構広いマンションなので、拓海さんもこちらに引っ越して来てもらうことになってます」


「千夏ちゃんマンション持ちすごっ!」


三鶴ちゃんが驚いたような笑顔になっている。


因みにマンションはどこなの?という話になったので結婚もするのに隠すのもな…とマンションの住所を教えた。三鶴ちゃんは〇ーグルのストリートビューを見たようだ。歓声を上げた。


「やだーめっちゃカッコイイ!千夏ちゃん家、広い?私泊まりに行ってもいい?」


「勿論いいよ~部屋余ってるしさ」


「千夏は余計なこと言うなよ。ミツは来なくていいよっ」


私はやけに反対する拓海をジロッと睨んだ。


「何が余計よ?いいじゃない~三鶴ちゃん泊まりに来てくれたら嬉しいよ」


「俺も泊まりたい」


え?誰だ…と声のした方を見たら……きゃあ!拓海が紺ブレ着てるっ!?やばっ!


「あれ?悠太(ゆうた)、部活は?」


この子が弟?ふわ~~拓海が紺のブレザーの制服着ているようにしか見えない!


「今日、練習試合の予定だったんだけど、あっちの学校の都合で試合中止になった」


悠太君は私にペコンと頭を下げると、三鶴ちゃんの横に座った。マリーユママンがキッチンに向かった。


「悠太とミツ姉が泊まるなら私も行きたい」


んん?今度は2階に上がっていた凛香ちゃんがリビング入口に立っていた。


「もう、お前ら来るなよっ新婚の邪魔するなっ!」


「まだ新婚じゃないーぃ!」


三鶴ちゃんが茶化してくれたので笑いが起きた。兄弟仲いいね、楽しい~


夕方近くになって…お義父さんが夕食も食べて帰りなさいと言って、出前の寿司を取ってくれた。そのお言葉に甘えて拓海の家でヌクヌクと夜まで過ごした。


お酒を飲んでないけど、幸せ酔い?みたいな精神状態になっていてとても楽しかった。悠太君(高1)と凛香ちゃん(高3の受験生)とも少しだけ仲良くなれたみたい。


お泊りの時に何が食べたい?と高校生2人に聞いたら「焼肉」と返ってきた。何でも上の(しゅう)さんと拓海が家を出てから家族内の女子率が高くなった加瀨家では、がっつりメニューの登場が少なくなっているらしい。


「お父さんと女共の胃袋に合わせたメニューばっかでさ~俺はジジイじゃねぇ!」


悠太君、お土産のクッキーを一人で食べていた。まだ食べ盛りだもんね…お泊りの時は焼肉食べ放題メニューにしてあげようかな?

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