偽婚約者の観察3
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いよいよダブルデートの日になりましたよ。今日は『愛の狩人』日記のページを埋める出来事が満載のような気がするね!私が、ショルダーバッグにお財布やスマホを詰めているのを見ていた拓海が
「え~っ弁当無いのぉ!?」
と叫んだ。そんな拓海を私はキッと睨みつけた。
「あの遊園地はお食事も美味しいと有名じゃないのっ!ダボルゥデートゥと言えば、あ~んからのチュッチュを生で見れる絶好のチャンスじゃない?私のおばあちゃん感満載の煮物弁当を食している場合じゃないでしょう!?」
「自分でばーちゃん臭い弁当だと認めちゃってる…」
愛を詠う者、加瀨 拓海を鋭く睨んだ私に対して拓海は笑顔を向けてくる。くぅ…朝から爽やかだなぁ!私は初、異性とダボルゥデートゥの遊園地なので興奮して眠れなかったと言うのにさ!
「千夏、寝不足?」
「おうよっ!遠足前に興奮して眠れなかった小中高の旅行を思い出したわ!」
「なるほどね…だから協力してやろうか?って聞いたのに…」
「拓海は余計に眠れなくするつもりだろうから、ダメッ!」
すぐにその手の話を絡めてくる!夜も暴れん坊めっ!
遊園地までは拓海の女子力高めの車で移動している。今日も快適だな~と思っていると、スマホにメッセージがペロンと入る。
拓海の妹、三鶴ちゃんからだ。何だろう?
『あれから毎朝貴明さんが会社まで送ってくれるのだけど…何かお礼をしたい!貴明さんはどういうのが好みなのかな?教えて欲しい』
そしてお願い!と描かれたスタンプが送られてきた。
「なんだって!?」
「うわっ…なに!?大声出すなよ、びっくりした!」
すまないね…拓海は運転中だったね。
「いや…え~と、うちの貴明兄が三鶴ちゃんの送り迎えを毎朝しているようで…」
「えぇ!?そうなのか?アイツ…俺にも言えよな」
「もしかしてケンジがストーカー化して追いかけ回してるのかな…」
不意に思いついて呟いた後に、それを警戒して兄は送り迎えしているのかも…という考えに気が付いた。
「私が元カレにストーカーされてた時もお兄様達がガードしてくれてた…だから…」
拓海はハッとしたような顔をした。
私は三鶴ちゃんに、貴明兄はイカの塩辛が好きだとメッセージを送ったけれど…それを見た拓海に、贈り物に変なモノを教えるな!と怒られてしまった。だって貴明兄は本当に好きなんだよぉ…
さて遊園地にやって来ましたよ~本日は晴天なり!
「おーい来た来た~」
あっあれはっ!?
遊園地の入口で手を振る爽やかイケメンと頭を下げる可愛い女の子!私は興奮して走り寄った。
「はっ初めまして!相笠 千夏ですっ…」
嘉川が呆れたような顔で私を見下ろしてきた。
「何でお前ハァハァ言ってんの?キモイ…」
「うるせー嘉川に言われたくないわっ!オホホ…今日はよろしくね~」
「モト、気にするなよ。千夏のソレは通常運転だからさ」
「それもそうだな~」
それはどういう意味だよっ?
まあ…いいか。初々しく微笑みながら嘉川を見上げる有紀ちゃんは可愛いし、そんな有紀ちゃんを見ている嘉川も格好いいし…おまけにそれを見詰める、拓海の眩しそうな顔…
悲恋だっ悲恋がここにあるーー愛と悲しみの恋愛物語がここに…ガサガサ…
私の鞄を弄っていた手は拓海に押さえつけられた。
「こんな所で日記を出すな」
「……ふぁい」
仕方ない…コッソリとふたりWITH拓海のスリーショットを撮って後で思い出して萌え転がることに…スマホを構えようとしているとまたも、拓海に手を押さえられた。
「それは盗撮だ」
「さーせん……」
そのまま拓海に手を取られて嘉川の後を付いて歩く。
「チケット買うか?」
長蛇の列が出来ているチケット売り場に行こうとした嘉川に、私は…はい、とチケットを渡した。
「なにこれ?」
「株主優待パス…」
「…!」
「兄から預かった。これで一日パス発行してもらえるから…」
使えるものは株主(兄達)でも使うぜ。さーて乗るわよぉ撮るわよ~
私はさり気なく有紀ちゃんに近付いて声をかけた。
「有紀ちゃんは何人くらいの園児さんを受け持ってるの~?」
「はいっえ~と…」
嘉川とのツーショットもいいけれど、一生懸命に答えてくれる有紀ちゃんせんせーの可愛らしい笑顔が堪らんねぇ~
「嘉川~ホラホラッ!有紀ちゃんと~はーい撮るよぉ」
フフフ…嘉川のスマホを借りての撮影…はぅ!この嘉川のスマホの中には嘉川と有紀ちゃんの愛の軌跡が…
「千夏……」
「さーせん…」
愛を見守る者、拓海が私の後ろで目を光らせていたのだった…
「モト~俺と千夏も撮ってよ」
「はいよ!」
遊園地の入口で拓海ともツーショット写真を収めた。いいね、リア充だね。
しかし愛を育み合うカップルはいいね…笑顔も眩しい。
その後は私は『見詰め合うふたり♡』とか『恋人繋ぎではしゃぐふたり♡』とか嘉川と有紀ちゃんの熱い熱い愛の芳香を感じながら心のシャッターを連写した。実際の写真も撮った。
「ああっ幸せっ本当に幸せっ!こんな初々しい愛を詠う恋人を間近で見れるなんて~」
お昼の時間になり、遊園地のすぺしゃるランチを頂きながら同じくランチを食べる嘉川と有紀ちゃんにうっとりとした微笑みを向ける。
「千夏さんって変わってますねぇ~」
はい、充分に自覚してますよ、有紀ちゃん!
「こいつは、人の恋愛を聞いて悶えてるような変態だからな」
「おぃ!嘉川っ…変態なのは否めないけど、乙女に向かってだな…」
「はいはい、千夏、あ~ん」
私の隣に座っていた拓海が私の口にポテトを突っ込んで来た。
「ちょ…ぐっ…ポテト美味しい…そうじゃないよ!私があ~んしてどうするのよ!?嘉川…いや有紀ちゃんっ嘉川にあ~んしてあげなよ!」
「きゃっ…!」
「おいっ…」
有紀ちゃんと嘉川は顔を赤らめた。そうそうっ!これこれ…恥じらい頬を染めるふたり♡いいわっ!
「ねぇ…嘉川と有紀ちゃんの愛の囁きボイスを録音しちゃダメ?」
あまりに嬉しくて拓海にそう聞くと拓海に真顔で
「それは盗聴だからダメ」
と、すげなくバッサリ却下された。愛を統べる者(自称)だけど軽犯罪法に触れる訳にはいかないよね。
その後は待ち時間のかかる乗り物に乗ったり、お茶を飲んだりしているうちに夕方になったので、お土産を買うことにして園内のショップに向かった。
私はさり気なく、嘉川と有紀ちゃんの斜め後ろに陣取り
「これ園長先生にお土産にしようかな~」
「お母さんにこれ買って帰ろうか?」
とか話している恋人の萌え会話に聞き耳を立てていると、私の隣の陳列棚にいる女性二人の話し声が聞こえてきた。
「あの人めっちゃカッコイイ!」
「あ~ホントだ!モデル?1人かなぁ」
何ぃ?誰の事だ……と女性達の視線の先を見ると、拓海がいた。熱心にお土産を見ている。確かに土産を見ているだけなのに、高尚なモノを手に持っているかのような品格がある。
そんな高尚な生き物の拓海が顔を上げてこちらを向いた。
「きゃああ!めっちゃカッコイイよ」
「声かけようよ!」
私の近くにいる、女性二人は逆ナンパを拓海にしようとしているようだ。
「千夏、これどっちがいい?」
わふぅ…拓海が笑顔で私を呼びましたね…この場面で私が出て行ったらこの子達に
「なにあれ?うっわ…彼氏カッコイイのに女…チンチクリンじゃん」
とか
「あれが彼女?ナイナイ!あはは…」
とか言われそうだ。
「千夏~?」
「ふぁい…」
イケメンさんが呼んでいるので、ヨロヨロしながら拓海に近付いた。
「ホラ千夏、どう?」
ド定番のクッキーかチョコレートのどちらかと迷っているようだね。
「クッキーかな…」
「お前…今、食べたい方を選んだだろ?」
何もかもイケメンにはズバッとお見通しだぁ!……なんだろうか?
「なーんだ彼女持ちかぁ」
「そりゃそうだよ…」
おや?なんだかそれほどの批判を受けずに、逆ナン二人組はどこかへ行ってしまったみたいだ。
「じゃあクッキーにするかな?」
とか拓海が再びお土産を見出したので、私もお土産に手を伸ばした。あ…このキャラクターのタオル可愛い。あまりキャラグッズを持っていないけど…こういう所に来ると購買意欲が増すよね。
「お義兄さん達に買わないのか?」
「……拓海、あの能面2人組がこんなきゃわゆいグッズに囲まれて似合うと思う?吐きそうよ…」
「お前、お兄さんをもっと労わってやれよ…」
「あ、自分がお兄ちゃんの立場だからそう思うんだよね~?私も拓海がお兄ちゃんならもっと労わってあげるよぉ」
「……俺は兄じゃねえよ」
拓海が私の手を引き寄せてきて、手を掴んで…恋人繋ぎにしてきた。
あれ?拓海、なんだか真剣な顔をしている…
拓海は暫く私の顔を見詰めていたけれど、手を解くとそのままクッキー数箱と私が手に取っていたタオルなどのキャラクターグッズを、買い物かごに入れるとレジに持って行ってしまった。
「ひえぇ…こんなとこで、ブチュッとかガバッとかになるのかと焦ったわ!」
「イケメンって恐ろしいね…ショップの中が映画のワンシーンみたいだった」
そんな声に後ろを向くと、商品棚の向こうから嘉川と有紀ちゃんが身を隠しながらこちらを覗いていた。一体いつから見てたんだ!……おいっ!私が愛を詠う者の主役側に回ってどうするんだぁ!
夜…遊園地のパレードを皆で見た。嘉川と有紀ちゃんを横目で見ると肩を寄せ合い、うっとりとしているみたいだ。
うん、尊い……と素直に愛を奏でる者達の讃美歌を聴いていたいのだが、私の横に立つ、拓海さんがまたも手を握ってきて体を密着させてくるから気が散って仕方ない。
拓海の顔を見ようかと思っているのだが、何だか恥ずかしくなって顔を上げられない。だって拓海は、手を繋ぎながら親指で私の指先とか手の甲とか撫でまわしてるんだもの…これって相当エロくないかな?
誰にも聞けないけど…
そしてパレードが終わり、私達も遊園地の入口に向かって移動した。嘉川と有紀ちゃんは電車で帰るという、送って行くよ~と拓海が言うと嘉川が
「こらこら無粋だぜ~」
とか言っていた。拓海が何かに気が付いたのか、ニヤニヤしているけど私も何となく気が付いた。
愛を囁く者達だから寄り道して帰ったって別にいいんだけどさ!
嘉川と有紀ちゃんとさようならをして、私達は駐車場に停めた車まで移動した。私の少し前を歩く拓海が振り向いて、笑顔で私に手を差し出した。ほとんど無意識のうちに拓海の手を取っていたのだが…その手の温もりに何となく自覚した。してしまったのだ…
ああ…私、拓海の事が好きなんだ…こうして手を繋ぐのも肩が触れるのも…緊張しているけど嬉しい。これって好意の好き…だよね。ああ…そう…でも自覚したと同時に失恋してしまったことにも気が付いた。
拓海は嘉川が好きなんだった…
手を繋いだ私の様子がおかしいことに気が付いた拓海が、足を止めて私を顧みた。
「千夏…トイレに行きたいのか?」
ムードの無いことを言うな!多分私が泣くのを我慢している顔だからだろう…
「そ…ぅじゃ…なぃ…」
拓海が近付いて来た。心臓が煩い…違う違う…近付くな!
「千夏…俺達も帰りに……寄る?」
怒りと羞恥と…悔しさと悲しさで震えた。
「その気も無いのに誘うなぁ!」
あまりにも大声で叫んだので、周りにいた人達がこっちを一斉に見た。
拓海は慌てたようにして私の肩を抱いて、移動しようとした。私は拓海の腕の中で藻掻いた。
「な…なに?どうしたんだよ?」
「拓海の馬鹿馬鹿!ついでに私の馬鹿馬鹿ぁ!?」
完全に泣き出してしまった私を車の中に連れて入ると、拓海は助手席で縮こまっている私の体を抱き寄せようとしていた。
私は腕を突っ張ってなんとか距離を取ろうとしているけれど、力負けしてしまった。
「千夏…急にどうしたんだ?泣いてちゃ分かんないだろ?」
そう言いながら拓海が私の頭にキスしてくる。やめろっ!
「やめ…そん…やめてっ!」
拓海は体を離すと…何も言わないでいる。もうここまで言ったら…全部言おう、そうすればすっぱりと諦めて仮面夫婦でもなんでもやってやる!もう決めた!
「拓海は本当に好きな人がいるんでしょう!?だからこんなことダメだよっ!偽物の夫婦は頑張るけどっこんな私が喜ぶようなことしちゃダメだよっ!だから触れちゃダメな…」
「俺の好きな人って誰だよっ!」
「…っひ!」
車の中に拓海の怒声が響いた。拓海が私の腕を取ると自身の方へ引き寄せた。拓海…凄く怒っている…
「俺がっ好きなのは…千夏だ!前からそうだっ!ずっとそうだ!文句があるかっ!?」
「……え?」
今、何て言ったの?
「千夏が俺の事を好きじゃないのは分かってる!それでも偽物でもいいから一緒になりたかった!時間が経てば本当の恋人同士になれるんじゃないかって期待もしてた!」
あまりの衝撃に涙も止まった。拓海が私を好き?本物の恋人同士?え?あれ…嘉川は?嘉川の事好きなんじゃないの?
「よ…え…好きな…」
「好きなのは千夏!ずっと千夏!もう5年は好きだけどっ?重くて悪かったなっ!」
なんだか怒っている拓海の言葉を一つ一つ頭に入れて…理解していった。
嘉川のこと好きじゃなかったんだ―――!
「え?私…え?」
拓海は私の顔を両手でぐいぃと持ち上げると自分の顔の前に持って行った。首が抜ける……
「いいかっよく聞けよ?新人研修の時から、相笠っていいな~と思ってた。でもお前を飲みに誘ったら他を誘え…って言っただろう?ショックだった…俺、女に断られたこと初めてだったし」
「なんだそれ!」
「今は黙ってろ!その後は誘ってくるのは拒まずに付き合ってたんだけど…忘れられるかと思ってたけどやっぱりダメだった。一旦お前が良いなと思ったら…ずぶずぶと千夏沼に嵌った」
「私は沼扱いか!」
拓海はガバッと私の唇に噛みついた。ええ、噛みつく勢いで口を塞いできたよ。暫く呼吸も出来ないようなキスをした後やっと唇を離した拓海は目をギラつかせている。
「お前が逃げても捕まえるからな…もうフリとか偽物なんて言わせないからな。お前も沼に引きずり込んでやる」
ヤンデレ…ヤンデレがここにぃ!沼に引きずり込むなんてあんた沼の主かっ!
ヤンデレ拓海は…手をブルブルと震わせている。何故震えるんだ…と思ったけど気が付いた。
さっきまでの私と一緒だ、私に拒まれると思っているんだ。自分の事を好きじゃない…これは偽装婚約で恋人…
ああ、私の馬鹿…気が付けば良く見れば分かることだった。こんなに近付いてくれる人が私の事を嫌っているなんてない。好意が無ければ好きじゃなければ…こんなに激高しない。
私は拓海の手に自分の手を重ねた。拓海の手がビクッと震えた。良いのかな?言っても大丈夫かな?まだ半信半疑だったけど、一言一言に力を籠めて拓海に言った。
「拓海大好き、沼は嫌だけど…これから一緒に本物の夫婦になってくれる?」
「……」
拓海は車の中で絶叫していた。それから私にチュッチュした後に遊園地の駐車場を出た。車を発進させて興奮したままの拓海に誘われて高速道路を降りて、煌びやかな建物に入った。
勿論、中に入るのは初めてだし私も興奮していたのだけど、私より大興奮していた拓海は女子幻滅ものの泣きながら土下座をして…
「千夏が好きすぎて辛いぃぃ…嬉しいけど死にそう…」
と一人ヤンデレ祭を開催していた。あのレベルには行きたくない…沼は勘弁だわ。
その日
私は人生初の『らめぇ』を連発してしまった。それもこれも、いきなりヤンデレてしまった拓海が悪いのだと思う。
この日から拓海は偽装婚約&結婚の相手ではなくて、本物の婚約者で結婚相手になったのだった。
それにしても嘉川のこと好きなんだね~なんてうっかり言わなくて良かったよ。
☆ ☆ ☆
そんな急転直下の出来事から暫くして、今やっと本物の恋人らしい付き合いを始めたこの頃…仕事から帰って来た拓海がニヤニヤしながら鞄を弄っていた。
「へへっ見ろよ…じゃーん」
じゃーんと言って差し出したブツを見て、驚いた。
「けっ…結婚情報誌!?どうしたのソレ…」
「駅前の本屋で買ってきた」
「買ってきたぁ!?」
どんな顔して…いやそのイケメン面を晒して買ってきたんでしょうけど…どうしたの?
拓海は本を開けて、何か紙を取り出すと私に渡してきた。こっこ…これはかの有名な某雑誌についている婚姻届!?
「フフフ…女子ならコレだろ?」
「いやあんた女子じゃないだろ?」
「まあまあ…それでこれをいい夫婦の日に書いて役所に出さないかな~と思ってさ!」
拓海がニヨニヨとした顔で私を見ている。いい夫婦の日……11月22日!?カレンダーをガバッと見た。
今は11月の初旬……
「入籍なんていつでもいいんじゃないの?」
と私が言うと拓海が顔色を変えた。
「記念日だよっ!?いい夫婦の日…いいじゃないかよ!」
いや……何をそんなにムキになる?
「結婚式は一応…来年だよね?」
「ああっ!お義母さんに式場は押さえたからって連絡もらっている」
「早っ!?ていうか私また知らないよ!?なんで拓海とお母様達がバンバン決めてるのよ!」
「入籍だけは先に済ませたいって言ったら、うちの親もお義母さんもOKしてくれたよ?」
またも勝手に決めてっ!…これもヤンデレパワーなのか…外堀を埋めるのが早すぎる…
「さあさあ早く書いて…保証人は俺の親に頼んでるし、いい夫婦の日に一緒に出しに行こうな!」
「……」
拓海が夢見る女子のようにウキウキして浮かれている。こんな風な浮かれ状態になるとは予想していなかった。よく言うよね?誰かが浮足立ったり緊張していると、その他の人が返って冷静になるとか…
今まさに私がその状態だった。私だけでもしっかりしなくちゃ…
私は『愛の狩人』日記にしたためた。
◇■◇
11月某日
拓海が某雑誌を駅前の書店で買ってきた。奴めは浮かれてピンク色の婚姻届に早速名前を書き入れている。いい夫婦の日に入籍するって…?
なにこれ?イケメンじゃなくて別の生き物を見ているような気がしてきた…
やっと偽装じゃなくなりましたが、もう少し続きます。