偽義家族の観察4
脱衣所からリビングに戻ると、テレビのバラエティー番組を見てゲラゲラ笑っている三弟妹達がいた。
「あ、ちーちゃん~月曜日、たくにぃの引っ越しなんでしょう?俺、手伝うよ~」
悠太君がリビングに入って来た私にそう声をかけてくれた。おや?優しいね悠太君!
「あ~でも業者さんに頼んでいるし、大丈夫だよ~悠太君は試験勉強してなさいよ」
「うえぇ…嫌な事思い出させるぅ~」
試験と聞いて悠太君は綺麗な顔を歪ませた。私は、アレを思い出して顔をしかめている悠太君に声をかけた。
「だったら明日、用事なかったらバーベキューの材料買いに行く?明日は屋上でパーリィしない?」
「うおっ!BBQ!?」
「うわっやりたい!」
凛香ちゃんも一緒に賛同してくれた。三鶴ちゃんも手を叩いている。
そしてお風呂から出て来た拓海も賛成してくれたので、明日は加瀨兄弟達と遠方のショッピングモールにお出かけです。
嬉しいなぁ〜お兄様達とは並んで和気あいあいと買い物をする…という雰囲気では無かったし、現役高校生とお出かけだよぉ〜どれだけキャッキャするのか是非とも観察させてもらわなくては…
「じゃあもう寝るね〜おやすみ!」
悠太君がそう言って先に部屋に戻って行った。三鶴ちゃんと凛香ちゃんはどうやら同じ部屋で眠るらしい。恐らくだが傷心のお姉ちゃんを独りぼっちにしないようにだろう……兄弟愛!尊い!
「じゃあ、私達も寝るね~たくにぃと千夏ちゃんは夜はこ・れ・か・ら!お楽しみだねぇ」
り…りぃ…りんかちゃぁぁあんん!?いやちょっと!?それだけ言ってさっさと部屋に逃げるのやめてよ!
「……」
三弟妹が一斉にいなくなり、拓海お兄様とリビングで2人きりにさせられました………え~と?
「じゃあ、私も寝るね~おやす……」
拓海に肩をガシッと掴まれた。
「ほらほら~?俺達、婚約間近の恋人同士だし?」
だ…だから何だって言うんだよぉぉ…よぉ…よぉ…
何故か私の部屋に連れ込まれた…これは拉致だね!そうだよね?
「そ、そうだ!トイレに行こうかなぁ!?」
「そこにあるだろ?」
しまった……私の部屋はバストイレを完備していた。
拓海はためらう事なく私の部屋のリビングから寝室へと移動すると、1人で寝るには大きめのダブルベッドに腰をかけてしまった。
どうしてダブルベッドを買っちゃったんだっ私ぃ!これではいつでも同衾カモン!な状態だと思われる!
「いやぁ~千夏はダブルベッド派なんだな…いい加減にこっち来いよ」
ぎゃあぁぁ!!イケメンが気の無い女子に言ってはいけない禁止ワードだよっそれはっ!
・こっち来いよ
・普段と違うけどそれもいいな
・俺、好きだな
これは勘違いが勘違いを生むから絶対言っちゃいけないんだからなぁ!
拓海の方を見ないように体をくねらせていたが、千夏…と声をかけられて渋々拓海の方を見た。
拓海が私の向けて手を差し出しておられる…!眩しいっ…
拓海のイケメン吸引力に引き寄せられるように、伸ばされた拓海の手の方へフラフラと近づいて行った。そして拓海が私の手を取ると、引き寄せながら私を抱き込みダブルベッドに倒れ込んだ。
ふおぉぉぉ魅惑の胸筋っ!!コレが噂の雄っぱいかぁぁ!?弾力凄いっ!拓海様からイケメンの香り(主成分はフェロモン)が漂って来る。
「ふ……柔らか…これはヤバいな」
拓海がそう言ってますが、ヤバイのは私の方でぇイケメン様の腕に抱かれて絶対興奮して眠れないと思うんだよ!思うんだよ…思う…拓海の体…あったかいなぁ………
◇■◇
『愛の狩人』
○○月○○日(金)
三鶴ちゃんが私の忌諱する行いの『二股』をされた上に、彼氏にフラれるという最大の屈辱を受けて憔悴していた。そのケンジとやらはとんでもない男だね。きっと天罰が下るからさ!しかし支え合う美形加瀨兄弟は美しいね…見ているこちらが浄化されそうだよ。
イケメンの褒め殺しキタ―――!ヤバイ何だアレ…あの言葉と笑顔でピザトースト10枚は食べられるね!
【追記】
雄っぱいを初めて堪能した!あれが胸筋か…拓海の広背筋の綺麗な事~うっとりするわ!しまった…折角引っ付いて寝れたのに雄っぱいをモミモミしておけば良かったよぉ~愛を統べる者、愛の巡礼者の名折れだ!
◇■◇
あれ?
何か冷えるな…と思って体に感じる冷気に目が覚めて、気が付くとダブルベッドの上に1人で寝ていました。
枕元の時計を見ると朝の6時過ぎだ…あれ?
そしてベッドから出るとローテーブルに置いてあるスマホを手に取った。メッセージが来ている、拓海からだ。
『おはよう、走ってくる』
送信時間は朝の5時半だ。また走っているのか…あのイケメン様は何者ですかね?あれ?私の偽物の恋人兼婚約者だったかね?
そうだったね、私は普段からお休み10秒で眠れる女だったってことをすっかり忘れていたよ。興奮して眠れない……なんてこたぁーなかったね、いつも快便快眠女だった…
拓海に抱っこされた後、いつものよーーうにすぐに爆睡したんだ…自分の体を見下ろす。
特に変化無し、不自然な痛みも無し。ある意味拍子抜けだ。
まあ…偽の恋人だし?それこそ両方いけるであろう拓海だって好みってものがあるのだろうし。
「まあいいか!よっしゃーー起きますか」
大きく伸びをすると薄手のセーターにジーンズに着替えて朝食の準備をした。今日はホットケーキにいしよう~まずはデザートの果物準備しておこうかな?
拓海に抱っこして眠っていたからか、かなり爆睡出来ていたみたいで、朝から体が軽い気がする。
鼻歌を歌いながらゴールドキウイと葡萄の皮を剥いていると…7時過ぎに拓海が帰って来た。
「ぜぇ…ぜぇ…おはよ…」
「おはよ…なんでそんなに息切れしているの?」
拓海は呼吸を荒げながらキッチンに顔を出してから部屋に戻って行った。顔色悪いね…どうしたのさ?
暫くして、悠太君が起きて来て…拓海も着替えて部屋から出てきた。
拓海、まだ顔色悪いけど?
「にぃちゃんなんか顔色悪いね…昨夜…何か…あった?」
悠太君が何故か私をチラチラ見ながら拓海に聞いている。昨夜…は…
「何かあったの?」
「え?」
私が拓海に聞くと拓海も悠太君も同時に聞き返してきた。ん?どういうこと?私が寝ている間に何かあったの?
「拓海とベッドに入ったでしょう?それで……拓海の腕の中で…爆す…」
「うわわぁ!?いいよっちーちゃん!全部言わなくていいからぁ!?」
何故だか悠太君が大慌てで私の言葉を遮ってきた。
「え~寝てただけよね?」
「うわわっ!?」
煩いな…悠太君、落ち着け…
「お前は爆睡してたよな……はぁ……」
拓海は長い溜め息をついていた。何故溜め息?……あああ!これはあれだ!
「もしかして…私が寝ぼけて拓海を蹴ったりぶん殴ったりしちゃったの!?」
「あ…いや、それはないけど…千夏が俺に引っ付いてて離れないから、俺も千夏の体を触ってしまって困った状況になってい…」
「うっわわっ!たくにぃも言わなくていいよっ!」
ちょっと悠太君…?悠太君が騒いだので拓海が言いかけた、引っ付いて…の後の部分が聞き取れなかったよ。取り敢えず、寝相が悪くて拓海に迷惑かけたのじゃないなら、いいか……ん?待てよ?
ああぅ!?もしかしたらぁ!?
「拓海の雄っぱい揉んじゃったのぉ!?」
「おっぱい!?」
「おっぱいぃぃ!?」
思わず手をワキワキと動かしていると拓海と悠太君の視線は私の胸へと集まっている。私のおっぱい?
「違うっ違うっ!私のおっぱいじゃなくてっ拓海の雄っぱいを私が激しく揉み上げて…」
「そんなことしてねぇよ!」
拓海が真っ赤になって猛抗議をしてきた。本当かな?心の奥の願望が手に伝わって雄っぱいを触り、偽恋人をこれでもかこれでもかと凌辱し…フハハフハハハハ…!
「ふ~ん…じゃあ、朝ごはんが出来るまで待っててね」
拓海を凌辱する妄想はやめておいて、朝食をつくることにした。本日の妄想劇場は終了です。
「ち、ちーちゃん何作ってるの?」
「ホットケーキだよ」
「やべぇ可愛い!」
悠太君の発言に首を捻った。可愛いか?やべぇも意味がよく分からん…取り敢えず休日の朝と言えばのんびりまったりの朝食に限る。さあ~てホットケーキ焼くぞ!
本日の朝食はホットケーキ、メープルシロップかけ。そしてコーンスローサラダ、ヨーグルト果肉入り、ベーコンエッグ。お飲み物はお好きに~
朝、起きてきた三鶴ちゃんは目が腫れていたので保冷剤をタオルに包んで渡してあげた。
「ありがとう…」
三鶴ちゃんはタオルを目に当ててリビングのソファに座り、天井を向いていた。目の腫れが引くように、恋の痛みもすぐに無くなればいいのにね…くうぅぅぅ切ない…
そして私と加瀨兄弟は遠方のショッピングモールへと揃ってお出かけした。
BBQの食材の魚介類や野菜、大きなステーキ肉、骨付き肉…沢山買って帰った。はしゃぐJKとDK達…尊い。あまりに可愛いのでお洋服を買ってあげた。あら?まるで親戚のおばちゃま化しているだって?…間違いない。
因みにアウトドア用品の何が必要か全然分からなかったので、拓海と悠太君に全部お任せしておいた。そうそう一応屋上のコテージにはアウトドア用?のようなオーブンと燃料だけは常備してある。
時々、サンマとかトウモロコシとかイカをBBQオーブンで焼いたりしていたのだ…勿論おひとり様で独りで食べていたけど……何か?
夕方から屋上に上がり、BBQを楽しんだ。お酒も飲んだ、イエーイと叫んでみた。私…今リア充だわっ感動!隣を見れば美形美女美形美女の揃い踏み…あぁ、幸せ。
「骨付き肉焼けました~!」
「やったぁぁ!」
「かぶりつくぜぇ!」
うん…うん…皆美味しそうに食べている。そしてBBQの食事の後は花火をした。これぞリア充満喫!しかしお酒飲み過ぎたかなぁ…眠い。そう言えば前、拓海に酒は飲み過ぎるな~とか言われてたなぁ…
一応フラフラしながらも後片付けをした…と思う。誰かに万歳しろ…とか言われたので手を挙げた記憶もある。ん~?背中が温かい…体全体が温かいなぁ
「はぁ……気持ちいい」
「そうか」
「あれぇ?拓海ぃ?」
「何?」
ぶれていた視界が段々クリアになってくる…ここ、どこだ?体を柔らかいもので擦られている?
「ありゅれ?お風呂?」
ん?私は自分の体を見た。酔いが段々冷めてくる。
は、裸…裸族でリンボーダンス…違う違うっ!肌と肌がごっつんこ!拓海が私の裸体を洗っている!?
「ひっぐゆうう、れあおんでいじゅ…!?」
「何言ってるのか分からんよ…ここは風呂場だ、俺が千夏の体を洗っている以上だ」
「わっ…ひ…ぎゅ……」
拓海は私の柔らかいボディたわしで、禁断の胸周りを洗っている……がっ!そこに一切のエロは感じない。何だかそれはそれで屈辱だ!本当に汚れを落とす為にたわしで体を擦っている。
そうですか…そうでしょうね。下半身まで拓海さんの手が当たりましたが、またしてもエロイ気配は無し!清々しい!
「ほら、お湯かけるぞ」
シャワーを体にかけられた。気持ちいい…これは病みつきになる。
「頭も洗うか?」
「はぁい…」
殆ど無意識で答えていた。拓海は鼻歌を歌いながら私の頭を洗い出した。
「あぁぁぁ…ぎもぢいぃ…」
頭洗われるの堪らんね~拓海の指圧が頭皮に沁み込むわ~あ、そうだ!
「たくいもあらま、あらっれあげりょうかぁ?」
ヤバイ急に呂律が回らなくなってる…けど、拓海は理解してくれたようで嬉しそうに微笑むと
「おお、頭洗ってくれ~」
と言ってくれた。私の頭を洗い終わった後に交代して拓海の頭を洗ってあげた。拓海もふぅ…と感嘆の溜め息を漏らしている。
「あ……こりゃ気持ちいいな~」
「れしょ~?いりょねぇ…こんりょから洗いっこしようね…」
「………ああ」
んん?拓海の頭を洗っている時に身長差があるので、立って洗っていたんだけど…立ちくらみがぁ!?ぐらついて拓海の背中にしがみついてしまった。
「おいっ!?大丈夫か?」
「ん~りゃいりょーぶ~りゃいりょ~ぶ」
また眠くなってきて瞼が降りてきた。
…
……全裸です。皆様こんばんは…全裸で自分の部屋のベッドの上にいる私です。隣にはイケメン偽恋人の加瀨 拓海がいる模様です。拓海は私に背中を向けているので寝ているかは分かりません。
どうしようかと迷ったけど…ゆっくりと起き上がって拓海の体に当たらないようにしながらベッドの上を移動し、ベッドを降りチェストの引き出しを開けて下着を取り出した。
今更だけど装着しておこう…パジャマはロンTで大丈夫だろう…
私は起きたついでに洗面所に行ってお花を摘み、歯を磨いてからベッドに戻った。
拓海は…寝ているのか?……今なら少しくらい触っても起きないのじゃないだろうか?
拓海の凌辱妄想劇場の幕開けを感じた。雄っぱいを触ろうか?一応声かけをしてみようか?イカン!鼻息が荒くなる…これでは変態じゃないか!(今更)
若干ハァハァ言いながらも、ベッドに戻ると拓海の真後ろに寝転がった。背を向ける拓海を背中から視姦した。
あそこに雄っぱいがあるのか…筋肉に覆われた雄っぱいはどんな弾力だろうか。
「フヘ…フヘヘヘ…」
しまった、ついうっかり声が漏れてしまっていた。気のせいか、拓海がビクッと体を動かした気がする。起こしちゃったかな?ソオッと声をかけてみよう。
「拓海…起こしちゃった?」
「……」
寝てるのかな?そうだ、雄っぱいも触りたいけれど…目の前の背中の広背筋だよ!これを触らずして何を触るのかっ…
私は大きな拓海の背中、広背筋に向かって手を伸ばした。やっぱりかたーい!
「っわわわっ!?何するんだよっ!?」
「っえ?起きてたの?」
拓海は飛び起きながら、私の方を顧みてきた。暗がりなので顔の表情が分からないけど…この際だから頼んじゃおう。
「拓海の雄っぱい触らせてよ~一度は触って見たかったんだ」
「おっ…お…俺の胸か?何でそんなものを…」
「筋肉の付いた雄っぱい下さいな!」
拓海がボスッ…と音をたてて再びベッドに寝転がったようだ。顔が見えないので手を伸ばして拓海の体ににじり寄った。
「…っ!」
拓海が息を飲む音が微かに聞こえた。この辺に顔があるかな~というところに手を差し出していくと、上手い具合に拓海の顎辺りに手を出したようだ。
唇…顎…喉仏…うわ凄い。それに首回り…これも硬い筋肉かな?ああっ鎖骨で…雄っぱいだぁぁぁ!
「おい…千夏、誰が触っていいと言ったかな?」
「グヘヘ…もう触っちまったよ…雄っぱい程よい弾力があって、ス・テ・キ!」
急に暗がりで体が抱き寄せられた。
拓海の雄っぱいの上に私の顔が当たっている状態です。まだ雄っぱいを離したくないので、左手でモミモミしているままです。
「…っ…お前、この痴女っ」
うほぅ!?心抉るその呼称!
「そうだぁ…フハハ!私は痴女だっ変態だ!」
「開き直りやがった…たちが悪いなお前、よし分かったよ。だったらお前の胸も揉ませろよ」
「へ?」
「お前だけ俺の胸に触ってセクハラしているのはおかしなものだろう?俺にも平等に権利を与えろ」
ん?う~ん…確かにそうだ。私だけ拓海の雄っぱいや背中を撫でまわしてお前は私に触るな…はおかしなものだ。
「そうだね、フェアじゃないね~よしっはいっ!バーンと触って頂戴よ」
「……これはこれで萎えるな」
暗がりで全然見えないはずなのに、拓海の心底馬鹿にしたような顔が目の奥にくっきりと浮かび上がっているように感じる。
おもむろに拓海の手が私の胸の上に乗った。フニフニと揉まれている。
相変わらず拓海の顔は見えない…思い切って拓海にもう少し近付いてみた。
わー…近付くんじゃなかった…真剣な表情で私の胸を見詰めている拓海の顔がドアップで見えた。目が怖いわ…瞳孔が開いているよ。しかもハァハァ言ってるし…あのイケメンの拓海がだよ?
モミモミ……
何度でも言うようだが、私はお休み10秒で眠れる女だ。拓海の雄っぱいをモミモミしながらいつの間にか眠ってしまっていたようだ…
アラーム音で目が覚めた。私は拓海の雄っぱいに顔を寄せて眠っていた。因みに左手は雄っぱいに手を置いたままだった。欲望駄々洩れだ…
拓海は私を抱き抱えたまま枕元のスマホを見ている。ああ、スマホのアラーム音だったのか。寝起きの拓海は色っぽいですね…あれ?拓海も私の胸をモミモミしていないかな?
「お…はよ…今何時?」
「ん~?7時過ぎ…明日、引っ越し業者が前のマンションに来るから今日は準備しなきゃな」
拓海が起き上がったので、私も一緒に起き上がった。私の胸をモミモミしていた拓海の手は今はお尻をモミモミしているようだ。これ……おいっ!とツッコむべきなんだろうか?完全に怒るタイミングを逃してしまった。
私はベッドから出ると、カットソーとレギンスパンツに着替えた。引っ越し荷物を運ぶのに動きやすい服装をしないとね。つい、うっかりと拓海のいるその場で着替えてしまったけれど、全裸は何度も見られているので今更だろう。
拓海も気にしていないのか、部屋から何も言わずに出て行ってしまった。
無反応過ぎる…これがお互いに揉み合いっこした朝の対応なのか…
「仕方ないか…」
所詮は偽恋人で偽婚約者だもんなぁ。胸を揉んだって大した意味はないんだろうし、考えるだけ無駄か。そう思いながらも若干落ち込んでいる自分がいることに気が付いた。
日曜日の朝…
悠太君と三鶴ちゃん、凛香ちゃん達は実家に帰って行った。こんな時ほど皆に居て欲しかったけれど…私的には気まずいまま、明日の引っ越し準備をする為に拓海と2人で拓海のマンションに向かった。
既に持ち運べるものは持って行けるように、段ボール箱に詰めている。拓海に聞きながら小物を詰めた段ボールを拓海の車に積んでいく。体を動かしていると気まずさも少しずつ緩和してきているような気がする。
「明日大きな家具を出したら、ここの掃除は俺がするから千夏はあっちで受け取り頼むな」
拓海と一休みをしようと、車で近くのファミリーレストランに来ているのだが拓海から渡されたA4用紙に段ボール①(コート類)はクローゼットへ…段ボール②(本類)は本棚に…段ボール③(下着)は白のチェストへとかそれ以外にも細かい指示が書いてある。
さすがマメだね。
「これ…届いた荷物、私が開けて片付けておいてもいいの?」
「いいよ、してもらえたら助かるわ~」
下着も触っていいのだろうか?触られて困るものはないのだろうかな?あ…そういうのはもうこっちに持ってきているかな?
「分かったよ~適当に片づけてはおくけど、後で確認してよ?」
「了解!」
ファミリーレストランの席で向かい合わせに座り、ランチを食べる私の偽恋人の加瀨 拓海。胸を揉んでおいてこの爽やかさは何だろうかね~
私は秋のキノコてんこ盛りパスタを食べながら未来の偽旦那様と微笑み合った。
拓海も千夏も暴走しています。