《暴風》と《暗雲》
だらだらだらだらしてます。今回は新キャラが登場します。
「きゅぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
今日も朝からコドラの悲鳴が響くビットマン家
いつものように食事を終え、いつものように片付けをするメルト
「行ってきまーす。」
「あれ?ママぁ、イザベラの実は持ったぁ?」
「あっ!、忘れてたわ!。」
ドタドタドタドタドタドタドタドタ・・・・ガサゴソ・・・・ドタドタドタドタドタドタドタドタ
「よしっ!それじゃあ行ってきまーーーす。」
「行ってらっしぁゃい。」
「きゅいー」
いつものように慌ただしく出勤していくミーメルを見送る、メルトとコドラ。片付けをするメルトに、机の下で這いつくばっているコドラ。今日もビットマン家は平和である。
「今日は何処に行こうかなぁ。ねぇコドラぁ、何処か行きたい所あるぅ?」
「きゅいぃー?」
いつものようにのんびりまったりしている。
「メッセの花はもう咲いたかなぁ?見に行ってみようかなぁ」
「きゅぅ?」
っと、
ドンドンドンドンッ
強く玄関の扉を叩く音が響いた。
「「!?」」
同時にメルトとコドラは扉を凝視する。
ドンドンドンッドンドンドンッドンドンドンドンッドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンンドンドンドンドンドンドンッバキィドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッガンッドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッイタァドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンズダンッ
どんだけ叩くんだよ。しかも途中に変な音?が混じっていたし。
「?お客さんかなぁ」
いや、メルトよ。まともな客ならあんなに扉は叩かない。
コドラに至ってはカタカナ震えるながら目をつぶり、これでもかと全身を床に這いつくばせている。しかも、ジリジリと扉から離れいっている。
いや、コドラよ。そこまでビビるのもどうかと思う。そんな室内の状況を知らない来訪者は扉を叩き続けながら叫ぶ
「コラーーーッ!!!!!!居るんでしょうメルトーーーーー!!!!開けなさーーーーーーいーーーーー!!!!!!!!。」
「あっ!ヒルダーちゃんだぁー♪」
知り合いなのっ?どう聴いても強盗か借金取りにしか思えない感じだけど。
などというまに玄関まで歩いていったメルトは、なんら躊躇もなく扉を開けた。
「ッ!!!!」
急に扉が開いたため、扉を叩き続けていた来訪者はその場で前屈みにたたらをふむ。
「いらっしゃぁいヒルダーちゃん。」
満面の笑みで挨拶をするメルト。
ヒルダーと呼ばれた来訪者は体制を立て直すと、
「こんにちはメル。遊びに来たわよーー!。」
先程まで騒音を響かせていたことなど気にせずに、平気な顔で挨拶をした。
その姿は、全体的に上品な雰囲気を漂わせた薄い赤の服を上下着ており、メルトよりいくらか背が大きく、
つり目がちな瞳と金髪ポニーテールが特徴的な少女であった。
っと、ヒルダーの後ろから一人の少年が現れた。
「アルちゃんも来たんだぁー」
「おーーーすっメル。久しぶりー」
アルちゃんと呼ばれた少年はどこか眠たそう表情をしており、青の上着に黒のズボン姿をしており、ブラウンと黒が混ざった髪をしていた。なによりその瞳は、まるで死んだ魚のように生気が無かった。そんな対称的な二人であるが、実はメルトの友達である。
ポニーテールのヒルダーと呼ばれた少女の名前は、ヒルデガルド・ニュルンベルクといい、友人達からは愛称のヒルダーと呼ばれている。上品な雰囲気を漂わせていながらも男子以上に豪快な性格をしており、ついたあだ名が《暴風のヒルダー》である。
死んだ魚のような目をしたアルと呼ばれた少年の名前は、アルバート・ケッセルリンクといい、友人達からは愛称でアルと呼ばれている。いつも眠たそうな表情をしているのが特徴で、何を考えているのかわからないため《暗雲のアル》のあだ名がつけられている。
そんな二人であるが、ヒルダーの家がこのマンシュタインの町ではなく北にある城下町にあるため。たまにしか遊びに来ない。アルはマンシュタインの町に住んではいるが、雑貨屋を営んでいる親の手伝いと根っから出不精なため、ヒルダーの誘い(半強制的)がない限りはメルトの家までやって来ない。
とはいえ、ちょくちょく城下町からやって来てはアルと一緒(拉致して)にヒルダーがやって来るため三人の仲はかなりよかったりする。
「ちょっと待っててねぇ。今片付けを終わらせちゃうからぁー。あっ、入ってくつろいでいいよぉ。町から来るのに疲れたでしょう。」
二人を招き入れるメルト。
って、あれ?なんか忘れてるようなー?
「おじゃましまーーーあ、あ!!!!!!」
「ごめんください。って、ヒルダー。入り口につっ立ってないで早く中に入れよ。」
「・・・あ、あ、あれ・・・」
「あん?・・・は!?・・・」
あっ!コドラの存在すっかり忘れてた。
「ワニだぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「・・・でかいトカゲだな・・・」
「ちがうよぉーコドラだよぉー。ワニでもトカゲでもなくてドラゴンなんだよぉ」「きゅるぅーーー。」
ヒルダーがあらんかぎり叫びながらメルトの手を引っ張って外に逃げようとし、アルはじーーーとコドラを見つめ、メルトはヒルダーに引っ張っられながらもその場に踏ん張りつつドラゴンだから大丈夫だよぉと根拠と意味がないことを喋り、コドラはヒルダーの叫び声に驚いき飛び上がってから部屋の中をぐるぐるパニックになって走り回り、そんなコドラを見て再びヒルダーが叫び声を上げる。
すごくカオスな空間が出来上がった。
しばらくお待ちください。
便利な言葉である。
「ぜぇーーぜぇーーぜぇーーぜぇーーぜぇーー。」
「はぁーーはぁーーはぁーーはぁーーはぁーー。」
「ふーーーーーむ。」
「きゅーーきゅーーきゅーーきゅーーきゅーー。」
荒れ果てた部屋に三人と一匹が座りこんでいる。
机はひっくり返り、椅子はちらばり、食器は散乱し、本は散らばり、調味料や野菜が転がり、部屋中ホコリが舞っている。なんというかまさに嵐の後のようである。
「ぜぇーー、つまり、ぜぇーー、このドラゴンは、ぜぇーー、メルの家族、ぜぇーー、な訳ね?。」
荒い息をしながらヒルダーがメルトに訪ねる。
「そう、はぁーはぁー、だよう。はぁー、とっても、はぁーはぁー、いい子なんだよ。」
今にも倒れそうにしながらメルトが答える。
「ふーーーん、メルらしいというかなんというか。」唯一息が上がっていないアルはコドラを眺めながら呟く。
「きゅぃーーーー。」
コドラは知らない人間が二人もいるため冬の寒空に捨てられた子猫の如く震えてうずくまっている。そんなコドラを見てメルトは
「どーしたのぉコドラぁ?アルちゃんもヒルダーちゃんも友達だよ。ほら仲良くしなきゃ。」
そう言ってコドラの背中を二人の前に押し出した。
てか、復活速いねメルト。ヒルダーはまだ息が上がったままだよ。
それはさておき
「ぜぇーーぜぇーー、ぜぇーーぜぇーー・・・た、たまになんだけどさーアル。」
「なんだ?、ヒルダー」
「ぜぇーーぜぇーー。メ、メルトって、ぜぇーー、たまにスゴく大物に思え、ぜぇーー、ない?」
「ふーむ、大物というよりも細かいことを気にしないだけじゃないか?」
「ぜぇーー、ぜぇーー、そ、そうね。ぜぇーー、まあ、ぜぇーー、メルトらしいと、ぜぇーー、いえばらしいわね。ぜぇーー。」
「まあ、真似できることじゃないな。」
「あはは、ぜぇーー、さすがにドラゴンは、ぜぇーー、私も、ぜぇーー、無理だわ。」
方や息も絶え絶えに、方や眠たそうに会話する二人。その視線の先には、
「ほらぁコドラ。ちゃんとアルちゃんとヒルダーちゃんに挨拶してぇ。伏せてないで立ってぇ。顔を上げてよぉ。」
「きゅぃーーきゅぃーー」
「動いてぇー。ほら歩いてぇー。」
「きゅるぅーーーー。」
仲良くじゃれ合う一人+一匹がいた。
「ぜぇーーぜぇーー、なんかさー、ぜぇーー、アレ見てると、ぜぇーー、あんだけ騒いだことが、ぜぇーー、馬鹿らしく思えない?」
「ふーーーーーむ。確かに思えるな。」
「でしょ。ぜぇーー。それなら・・・」
「?」
床に座り込んでいたヒルダーは、ヨシッと勢いよく立ち上がると。ビシィとコドラを指差し。
「よく聞けドラゴンッ!!あたしの名前はヒルデガルド・ニュルンベルク!暴風のヒルダーよ!!あんたがメルの家族だってんなら、今日からあたしとあんたは友達よ!!!」
高らかにそう宣言した。
指差されたコドラは突然大声をだしたヒルダーに驚き固まっている。メルトは
「ドラゴンじゃなくてコドラぁ」と関係無いことを言い、アルは片手で頭を抱えた。
「そんでこっちの死んだ魚の目をしたのがアルバートよ!!いつも暗そうにしているから暗雲のアルって呼ばれてるわ!!」
フフン♪と、腰に手をあてて胸を張るヒルダー。
「あ〜〜もう好きにしろ。」
と、やる気の無い声で呟くアル。そんなアルなど眼中に無い様子で、ズカズカとコドラの目の前まで歩いていくと、
「ヨロシク!!」
ズズズィッと手を差しだした。
「きゅっ、きゅぃー?」
一瞬の静寂の後にコドラが驚きの声を上げる。
「よかったねぇコドラぁ」と、どこまでものほほんとしたメルトに対して
「・・・はぁ〜〜」
溜め息を吐くアル。
手を差しだしたままのヒルダーは無言でいいじーーーとコドラを見つめる。
その視線はもはや睨んでいると言ってもいい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いや、恐いってヒルダー。
「きゅっ?、きゅっ!、きゅっ・・、きゅっ!?、きゅっ、」
そんでお前はビビり過ぎだコドラ。
「きゅぃーー」
助けを求めるようにメルトを見るコドラ。だがメルトはニコニコしてるだけである。
「きゅるぅー」
次にアルを見るコドラ。だがアルは諦めた表情で見つめ返すだけである。
「きゅう」
最終的にヒルダーを見るコドラ。だがヒルダーは真っ直ぐコドラを見つめるだけである。
「・・・・・もうっ!!」
やがて痺れを切らしたのか、ヒルダーは差しだした手をそのままコドラの右手(右前足)まで伸ばしてガシッと掴むと。
「よっ、ろっ、しっ、くっ、!」
そう言いながらブンブンブンブンと乱暴に振った。
「きゅぃきゅぃきゅぃ」
無理矢理握手されて困惑するコドラをよそに
「友達っ♪、友達っ♪」
と、上機嫌のメルト。一方アルは、コドラと目が合うと
「あ〜〜〜、よろしく。」と、投げやりに挨拶をした。
やがて満足したのか、コドラから手を離したヒルダーは一同を見渡すと、
「ヨシッ!!それじゃあドラゴンとも友達となったところで
「ご飯にしようかぁ」」
セリフを盗ったらダメだよメルト。
「ちょっ・・・もうっ、なら食べたら遊びにいくわよ!!」
「「おーーー《きゅぃーー》」」
なかばやけくそ気味に叫ぶヒルダーと、適当に叫ぶ二人+一匹。しかし君達は気付いてる?
部屋は荒れ果てたままだよ。
結局。食事中にアルが気付いたため、部屋の掃除だけで陽が暮れてしまった三人+一匹だった。
「またねぇーアルちゃんヒルダーちゃーん」
「今度はちゃんと遊ぶんだからねー!!そのドラゴンも連れて来なさいよーー!!」
「じゃあなー」
帰っていく二人を玄関から見送るメルト。コドラは疲れ果てたのか家の中で寝ている。
「しっかし驚いたわねー。まさかドラゴンがいるなんて夢にも思わなかったわ!」
元気に手を振るメルトを背に帰り道を行く二人
「まーなー。てか予想できる人間がいたら会ってみてーよ」
二人の会話はもちろんコドラのことである。
「普通だったら逃げるか衛兵とか自警団に通報すりわよ!さすがメルトっていったとこかしら。」
興奮さめやらぬ様子で語るヒルダー。それに対してアルはふと疑問を口にする。
「・・・何でドラゴンを受け入れたんだ?初めてみた時はあんだけビビってたじゃねーか。それをいきなり握手して友達なんて。」
しかしヒルダーは何気ない感じに
「だって、いい子じゃんコドラ!」
と言った。
「そりゃあ、初めて見た時は驚いたけど、メルトが受け入れてるのにあたしが受け入れない訳にはいけないじゃん!。それにドラゴンっていっても子供みたいだし、気弱そうだし。」
とつとつと語るヒルダーを横目にアルは考える。
本当にあのドラゴンは安全なのか、いずれメルや自分達に牙を剥くをじゃないか。実は危険なんじゃないのか。衛兵に通報した方がいいんじゃないか。かのドラゴンの親がやってきたりしないのか。もし、やってきたらどうするのか。
そんな思考の渦に入り込んだアルにヒルダーの声が聞こえてきた。
「何よりあたしが気に入ったーー!!!!」
その一言でアルは考えることを辞めた。
「・・・適わねーな。」
ボソッと言った言葉は前を歩くポニーテールの少女には届かない。夕焼け空に流れる《雲》は、西から吹く《風》に逆らうことなく東に向かってゆく。それがまるで自分のように思えて自嘲気味にクスリと笑った。
と、
「そうだっ!よく聞いてアルッ!!」
再び思考から呼び出されるアル。ポニーテールを振り回して振り返った少女は
「メルの家にコドラがいるのは誰にも喋っちゃダメだからっ!!わかった?」
と言った。
「・・・何故?」
不思議がるアルにたいしてヒルダーは説明し始める。
「だって、もしドラゴンがいるなんて町の人達が知ったらパニックになるわよ!噂って怖いんだから。しかも城から学者がやってきて連れてっちゃうかもしれないし、下手したら兵士がやってきて殺されちゃうかも!!」
「・・・まあ、確かにありうるな」
「でしょう!!だからコドラのことはあたし達の秘密だからね!!」
「それは別に構わないが・・・メルはその事を理解してんのか?今日のようすだと隠す気ゼロだぞ。」
「・・・・・・本当だ!!ヨシッ!こうなったら明日またメルに会って説明するしかないわ!!」
こぶしを振り上げて力説するヒルダーを眩しそうに見ながら、アルは三度目の思考する。
「・・・明日も騒がしくなりそうだ。」
あーーーー。新キャラに後半主人公の出番が奪われたぁ。こうなったらメルトに頑張ってもらうしかな。ちなみにヒルダーの名前は結構適当です。アルはちゃんと元ネタがあります。もちろん関連性はまったくありません。