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川に行こう

再びダラダラします。キャラを増やしたいけれども、なかなかうまくいきません。なのでいつもの一人+一匹です。

「・・・・・ふぁ〜〜むゅにゅ〜〜・・・・」

この声は奇声ではなくメルトの欠伸である。

ビットマン家の家族にドラゴン〔コドラ〕が加わって二日目の朝である。

六畳程の小さな部屋には、ベットと衣裳棚と机があり、壁にはいつものリュックと虫取り網と帽子が掛かっている。机の上には小さな鏡が置いてあるだけであり、ぬいぐるみやアクセサリー等の同年代の女の子が持っているような物は一切無い殺風景な部屋である。

しかしメルトはその事を淋しいと思ったり、何か欲しいと母ミーメルにねだったことは一度も無かったのである。

その理由は、窓の真正面に飾ってある一枚の〔絵〕である。

画家だった父ハルベルトが描き途中だったものに、まだ物心つく前だったメルトがイタズラ描きした作品。繊細なタッチで描かれた青空の丘の上に、ベタベタと辛うじて人と判別できるものが三人描かれている。

父の記憶が無いメルトにとってその絵が唯一の〔思い出〕であり。故にその絵を見れば、淋しく思ったりしないのである。

   余談だが。メルトがぬいぐるみ等を欲しがらずに、作業手袋や薬草用の袋をねだることが母ミーメルのちょっとした悩みになっていることをメルトは知らない。

それはさて置き。起きたメルトの一番始めにすることは、その絵に向かっての挨拶である。

「・・・おはようぅパパ・・・ん〜〜〜〜よぉしっ。」

勢い良くベットから降りると、衣裳棚から服を取り出して着替える。パジャマはキチンと畳んで棚に入れる。そこで、ふと気が付く。

机の下に盛り上がった毛布がある。

まあ、コドラなのだが。

「・・・・・・っ!」

少しだけ眺めた後、ゆっくり近づいていくメルト。そして、







「きゅぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。」


おはようコドラ。




時間は進み朝食終了後。

「そういえば、病院で頭痛用の薬が切れそうになっていたんだわ。メルト、イザベラの実を採ってこれるかしら?」

いつものように慌ただしくしながらミーメルがメルトにお願いしていた。

「わかったぁ。今日探して見るよぉ」

食事の片付けをしながら答えるメルト。とてもいい子である。

「ゴメンね〜。帰りになにかお菓子買ってくるから。それじゃあ行ってきまーす。」

「行ってらっしゃぁーい」ミーメルを見送ると、コドラを見つめてメルトが言う。

「コドラぁ、今日の行く場所が決まったよ。」

「きゅうい?」

「今日はぁ、川に行くよっ!」

元気よく宣言するメルト。相変わらず机の下に這いつくばっているコドラ。

二日目にてすで日常の一部になっているドラゴン。キミはそれでいいのか。



いいんだろうな。


さらに時間は進みメルトの家事が終了

「はいっ。それじゃあ行くよコドラぁ」

帽子を被ったメルトが玄関からコドラを押し出す。

「きゅぃぃぃ」

と、情けない鳴き声を出しながらメルトに背中を押されているコドラは、既に首にバスケット、背中にリュック装備の姿である。


・・・似合ってるよコドラ

「きゅぃきゅぃ」

「似合ってるよコドラぁ」

抗議の声はメルトによって一蹴された。

なにはともあれ、一人+一匹は家の東を流れるティーゲル川を目指して歩いきだす。

「♪や〜き〜〜は〜ら〜え〜♪や〜き〜〜は〜ら〜え〜♪すりつぶし〜てぇ〜♪し〜お〜こ〜しょ〜う♪」今日もご機嫌な様子で歩いていくメルト。その後を、今日もビクビクトテトテついていくコドラ。

「♪ねっ〜て〜♪ひねっ〜て〜♪こね〜く〜り〜ま〜わ〜」

「きゅいっ!!」

「し〜て〜?! ほいっ、えいっ!!。♪ま〜ぶ〜し〜ま〜しょ〜♪」

コドラの前にカマキリが現れて悲鳴をあげても、メルトは慣れた手つきで掴んで草むらに投げた。そして直ぐに歩きだす。

「♪や〜れん〜そ〜」

「きゅいっ!!」

「ほいっ!それっ。♪ら〜ん〜♪そ〜ら〜」

「きゅいっ?!」

「はいっ!たぁっ。♪ん〜そ〜ら〜ん〜」

「きゅいっー!」

「うんっ!ぽーい。♪そ〜ら〜ん〜」

「きゅいっ♪」

「よぉっ!ちょい。♪おき〜の〜」

「きゅいっ!?」

「やぁー!とぉー。♪」


あれ?なんか一回コドラ喜んでなかった?




・・・気のせいか、コドラだし。



「きゅっい!」

「ぼんっ!ろんっ。♪か〜ご〜め〜♪」

「きゅっ」

「てり」

「き」

「」







計28回の掴んでは投げを繰り返し、ようやくティーゲル川に到着した一人+一匹。

この川は、川幅20m程の緩やかな流れの川である。水深もそれほど深くなく、魚も豊富である。

「よぉーし。まずはぁコドラはそこで見ててぇ。」

そう言うとメルトは、靴を脱ぎ、裸足になってズボン裾をたくしあげて川の中に入っていく。そして手頃な大きさの石を掴むと一つ一つ川底に並べていく。

「きゅぃ?」

そんなメルトを不思議そうに見ながらコドラは首を傾げている。

「よいぃしょー。ふぅ、完成!」

お疲れ様


川の端から石の壁が2m程真ん中まで円を描きながら続いており、さらにそこから水上に向かって4m程石の壁が伸びている。水上側は川の端から1m程までせばまっていた。簡単な魚取り用の罠である。後は魚が石で囲った中に入るのを待ち、入り口を閉じてゆっくり捕獲すればいいのである。

罠のできばえにメルトが満足していると、ゴーンゴーンと教会の鐘の音が聞こえてきた。

「お昼にしようかコドラぁ」

「きゅぃ!」



昼食終了後

「いいぃコドラぁ。こんな感じの小さい葉っぱに赤い実をつけたのを探すの。わかったぁ?」

「きゅぃい??」

わかってない。

「うーん。それじゃあまた私の後をついてきてねぇ。」

「きゅい!」


〜〜〜三時間後〜〜〜


「うんっ、大量大量」

「きゅい、きゅい」

コドラのリュックにイザベラの実を詰め込んだ一人+一匹は、昼に罠を仕掛けた場所まで戻っていた。

石の囲いの中には魚達が5匹泳いでいる。

「まずはぁ」

と、再び石を並べて入り口を閉じるメルト。そして、囲いの中に自身も入っていく。網などはもっていないため手掴みである。

ヘビを素手で掴んで投げる等していることから、メルトは外見から想像もつかないほどワイルドである。

そんなメルトをコドラは、川端の大きな岩の上から眺めていた。

「じーーーーーーー」

と、目標を定めるメルト

コドラもその視線の先を首を伸ばして追う。

っと、

「きゅっ?・・・・・」

コドラの左足が滑り、

「きゅ《ドッポーーーーーーン!!!》」

川に落ちた。

「わっぷ」

「きゅぃぃぃ!きゅぃぃぃ!」

バタバタと川の中で暴れるコドラ。ついでにメルトは思い切り水を被った。


どこまで情けないドラゴンなんだキミは。そこはちゃんと足がつくぞ。



「びしょびしょだぁー」

「きゅいぃぃ。」

全身すぶぬれに一人+一匹。

「魚みんな逃げちゃったねぇー」

メルトの視線の先にはコドラが暴れたせいで穴があいた囲いがある。

ふぅーと、溜め息をついてからメルトが視線をコドラに移すと、

全身を地面にペタリとつけ、微かに震えているコドラがいた。

「どうしたのコドラぁ?」メルトがしゃがみながら手を伸ばすと、〔ビクリッ〕としてから固く目をつぶるコドラ。

そんな怯えきったコドラをみてメルトは

「もしかして、どこかケガしたの?痛むの?」

そう言ってコドラの体をペタペタ触り始めた。

「きゅぃ?」

怒られると思っていたコドラは突然体を触りだしたメルトに困惑している。

「うんっ!大丈夫だね。」

一通り確認し終えるとメルトは立ち上げり、太陽のような笑顔でコドラの頭を優しくなでた。

っと、

《ゴトゴトゴトゴト》

コドラの首に掛けてあったバスケットが動きだした。

「きゅいっ!?」

驚き固まるコドラ

「ん?」

メルトがコドラの首からバスケットを降ろしてと蓋を開けると、




大きな魚が一匹入っていた。



「「・・・・・・・」」

一人+一匹は目が点になっている。

おそらく川の中でコドラが暴れた時に入ってしまったんだろう魚を見つめる一人+一匹。

やがて

「あははははは、すごーーいコドラぁ。あははは」

と、メルトは笑いながら再びコドラの頭をなでた。

「きゅ・・・きゅい?」

困惑しながらなされるがままにされるコドラ

ひとしきり撫でるとメルトは、魚の入ったバスケットをコドラの首に掛け、「帰ろうコドラ」

笑ってそう言った。







「あれ?あぁーママだー」

「きゅいっ?」

家までの帰り道、偶然母ミーメルと鉢合わせたメルトとコドラ。

「メルにコドラ、どうしたの?ずぶ濡れじゃない!」

一人+一匹を見て軽く驚きの声をあげるミーメル

そんな母の様子にメルトとコドラは互いに見つめ合った後

「家に着いてからのお楽しみだよぉー♪」

「きゅいっ♪」

と、笑い合った

「・・・?」

そんな一人+一匹の笑顔の訳がわからずに首を傾げるミーメル。



並んで歩く帰り道。

夕日が照らしだし三つの長い影を創る。

今が楽しいから夜になるのさえ待ちどうしい

一緒にいれば淋しさなんてない

だからこそ

《幸せ》を感じることができる

そんな今日の帰り道







「「ただいまー《きゅいー》」」



今回の舞台になった川の名前の《ティーゲル》ですが、ドイツ語で《虎》という意味です。たしか。   つまり竜虎対決です。まあ、あんま深い意味はないんですが。

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