《風》は《雲》を呼び嵐となる
ヒルダーとアルが再来します。でもぐだぐだです。
「行ってきまーす。」
「いってらっしゃぁーい《きゅぃるーー》」
いつものように母ミーメルをメルトとコドラ。
今日も天気のいい平和な朝である。
いつものように食事の片付けと掃除を終えたメルト
「お茶でも飲むコドラぁ?」
「きゅぃーー」
本当に平和である。が、
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッズダンッズダンッズダンッドカッズガンッズガンッズガンッズガンッ、ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンイッタァァァーー!!
そんな平和を壊すかのような凄まじいノックが鳴り響く。コドラは机の下で飛び上がると急いでメルトの後に隠れる。まあ、そのメルトは
「お客さん?誰だろう?」
などと言いながら玄関に向う。
だがメルトよ、そんなノックをする人は一人しかいない。
「きゅぃーーきゅぃーー」
と、必死に開けないでと懇願するコドラ。余程昨日のこてが堪えたらしい。
だがそんなことはおかまいなしに、ガチャンとメルトが扉を開ける。そこには、右手をさすりながら若干涙目になっているヒルダーと、その後ろで片手を上げるアルがいた。
「いらっしゃぁい。ヒルダーちゃんアルちゃん」ヒルダーは、笑顔で二人を迎え入れるメルトの後ろに隠れているコドラを見つけると、指差して叫ぶ。
「よし!、ちゃんとコドラもいるわね。なら昨日約束したとうりに遊びに行くわよ!!」
いや、約束はしてないぞ
「いや、約束はしてないぞ。」
ナイスだアル
「いいよぉー。それじゃあ準備するからちょっと待っててねぇー。」
そこはスルーなんだなメルト。
「あっ!!そうだメル。大事な話があるわ!!よく聞きなさい!!」
「なに?ヒルダーちゃん」
「メルの後ろに」
「あ〜〜、立ち話もなんだし、とりあえず家に入って話そうか。おじゃましていいか?」
「いいよぉー。いらっしゃーーい♪」
「ちょっとっ!なに勝手に話し進めてんのよアルッ!!ちょっ!!二人共まちなさい!」家の中に入っていく二人と一匹を叫びながらヒルダーが追って中に入る。
家の中に入ると、メルトがお茶を出して二人に座るのをすすめる。意外とこういうことはしっかりしてたりするのである。
「それでぇ、話しってなにヒルダーちゃん?」
三人が椅子に座ると改めてメルトが尋ねる。
「えーーと、コホンッ。話しっていうのはそこにいるコドラのことよ!」
「きゅぃ?」
いつもの定位置である机の下から顔だけ出していたコドラを指差すヒルダー。コドラは驚きながら首をかしげる。
「コドラがどうかしたの。」メルトも首をかしげている。
「単刀直入に言うわ!!コドラを隠しなさい。」
簡潔すぎる。
「・・・なんでぇ?」
案の定メルトは頭に疑問符を浮かべている。
「なんでって。えっと、その、いろいろ危ないからよ!!。」
いろいろ言葉が足りないぞヒルダー。メルトの頭上に《?》がたくさん浮いてるじゃないか。
言い終わったヒルダーはメルトがだしたお茶なんか飲んでいる。
それで終わりかよ
と、
「・・・苦っ!!」
むせた
「薬草茶だよぉ。体にいいんだよぉ」
顔をしかめるヒルダーにすかさず説明するメルト。その頭上からはもう疑問符が消えている。
もっと悩めよメルト。
「よしっ、それじゃあ遊びに行くわよ!!」
もっと説明しろヒルダー。
「きゅいっきゅい」、
もっとしっかりしろコドラ。
と、
「あ〜〜〜、そんな説明じゃ駄目だろヒルダー。」
黙って様子を見ていたアルが片手で頭を抱えながら二人+一匹の間に入った。
もはや君が最後の砦だアルバート君。
「あ〜〜、いいかメルト。コドラはドラゴンだ。で、本来ドラゴンは恐ろしい生き物だ。俺達はコドラがいい子なのは理解できるが、ほかの人間も理解できるとは限らない。むしろ理解されないだろう。その場合どうなるか。まず町中大騒ぎだ、そして衛兵やら自警団がやってきてコドラを殺そうとするだろうな。
もしかしたら城から学者がやってきてコドラを連れ去ってくかもされない。
そうなったら嫌だろ?最悪メルとメルママも殺されるかも、まあ、殺されることはないだろうがこの町に住み続けるのは厳しいだろうな。まてよ、逆に神聖なドラゴンを拉致したとして火あぶりの計になるかも。そーしたら俺達も同罪として裁かれるかもしれない。だからこそコドラがいることは絶対にバラしちゃいけない。教会の神父さんや病院の院長でもだ。もちろん俺達も絶対に秘密にする。親父とお袋にも言わない。メルママだって誰にも話してないはずだ。話しただけじゃ信じないかもしれないが見られたら一巻の終わりだからな。それこそ、オレとヒルダー、メルママ三人だけの秘密だ。わかったか?」
「「「・・・・・」」」
「んっ?どうした。」
ポカーンとする二人+一匹に今度はアルが首をかしげる。「・・・アルがそれだけ喋ったの久しぶりにみたわ。」
「・・・よくわからないけどわかったよぉ。」
「・・・きゅい?」
三者三様の反応を見てアルは
「・・・たまには喋るさ」と呟くと薬草茶を飲み顔をしかめる。
「・・・とりあえず、コドラのことは誰にも言わないよぉ。」
「そうしなさい。それに誰か家に来てもコドラを見せたらだめだからね!」
「わかったよぉ。コドラもわかったぁ?」
「きゅい!」
首を縦に振るコドラを見て、どうやら理解したらしいとヒルダーは判断する。
コドラに語っているメルトを見て、大丈夫かとアルは不安がる。
やがてヒルダーは立ち上がり
「よろしい!!それじゃあ話しは終わり!。おもいっきり遊ぶわよーーー!!」
と、天井を突き破る勢いで宣言する。
「「おーーー《きゅぃーー》」」
と、元気よく、やる気無く、ビビりながらの声も続いた。
「さぁ外に出るわよっ!」元気よく飛び出したヒルダーを追ってアルがため息を吐きながら玄関に向かい、嫌がるコドラの背を押しながらメルトが歩いていった。
で、庭に集まった三人+一匹であった。
「んでヒルダー。昨日から遊ぶ遊ぶ騒いでたがいったいなにがしたいんだ?」
当然の疑問を口にするアル。ヒルダーは何故か偉そうにフフンッと鼻を鳴らすと
「本来は普通に遊びたかったんだけど、予定を変更してある実験をします!。」
と、宣言した。
もともと予定なんか無かったろ、というアルの呟きは華麗にスルーしてヒルダーはこう続けた。
「実験内容は・・・・・・・・ドラゴンの生態調査っ!!!!」
ズバンッとコドラを指差した。
「おぉーーー♪」
いや、メルト。おぉーじゃないよ、おぉーじゃ。なにガシッとコドラを逃がさないように掴んでんのっ
「よかったねぇコドラぁ♪」
よくないよくない。コドラ困ってる。初めてメルトに恐怖を感じてるから。
「・・・好きにしろよ。俺はもう知らん。」
諦めないでアル。君だけが頼りなんだ、コドラを救えるのは君だけなんだ。
「それじゃあ、まず初めは・・・」
待ってくれヒルダー。まだコドラに心の準備ができてない。あと、背後のオーラがなんかヤバイ
「きゅぃーーきゅぃーー」
お前も涙目になって鳴いてないで逃げろよ。カタカタ震えるなんて本当にドラゴンか?
しかも、そういってる間になんかヒルダーが準備してるし。てっ、それは・・
「ドラゴンの好物調査!!」
ヒルダー・・・そんだけふってそれかい。
「おぉーーー♪」
メルトも盛り上がるなよ。
「きゅい?きゅい?」
コドラ、安心しろ。結構楽そうだ、
「・・・・・はぁ」
ため息は幸せが逃げるぞアル
てなわけで、ドラゴン(コドラ)の生態調査開始である。
調査1 好物
「・・・なあヒルダー」
「なに?アル」
「なんで、比較する食材が、鳥肉、豚肉、トマト、ニンジン、クッキー、サーモンの切り身なんだ?」
「うちの台所にあったの。」
「・・・・・そうか。」
「きゅいきゅい♪」
「おいしいぃコドラぁ?」
「ドラゴンはニンジンが好きと!!」
「・・・ちょっとまて」
調査2 目
「ドラゴンってどれくらいの視力か調べるわよ!!」
「いーいコドラぁ。あの山の頂上には何本杉の木がある?」
「・・・いや、俺にも見えないから」
「きゅいきゅいきゅい」
「三本だってぇ」
「・・・メル、お前ドラゴンの言葉わかるのか?」
「確かに三本あるわ。よし、ドラゴンの視力は強力とっ!!」
「・・・ヒルダーの視力は人外だ。」
調査3 筋力
「何人まで乗れか調べるわよ!!」
「・・・・・お前が乗りたいだけだろ?」
「一番、メルト乗りまぁーす。」
「きゅーーーー!」
「伏せちゃダメだよコドラぁ」
「筋力はあまり無しとっ!!」
「・・・・・筋力以前の問題じゃね?」
調査4 尻尾
「きゅぃーーーー」
「尻尾は敏感っと!!」
「・・・・・踏んだら誰だって痛がるだろ。」
「コドラぁ大丈夫ぅ?」
調査5 ドラゴンブレス
「ドラゴンっていったら炎を吐かなきゃね!!」
「コドラぁ、家は燃やさないでね♪」
「きゅるぅーきゅるぅーきゅるぅー」
「・・・・・煙もでないぞ」
「鳴き声は以外とかわいいっと!!」
調査6 翼
「ほら!飛ぶのよドラゴン!!」
「コドラなら飛べるよぉ」
「きゅる?」
「・・・・・その大きさの翼じゃ無理だろ。」
調査7 性別
「・・・・・で、ドラゴンの性別見分ける方法知ってるか?」
「知らないよぉー♪」
「不明っと!!」
「きゅい?」
調査8 戦闘力
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・きゅい?」
調査9 牙
「きゅ・・・きゅ・・」
「結構するどいわね!」
「・・・・・しかもピカピカだ。」
「寝る前に私がいつも歯磨きしてるよぉ。」
「・・・・・すごいなメル」
「ドラゴンは歯磨き可能っと!!」
調査10 言葉
「・・・・・なあ、もしかしてコドラは人間の言葉が理解できるんじゃないか?」
「そうなのコドラぁ?」
「きゅい?きゅるきゅぃーーきゅ」
「難しい言葉はわからないけど簡単な言葉ならわかるってぇー♪」
「人の言葉を理解できる程には知能が高いっと!!」
「・・・・・・・・・・・・・・いや、今ーメルの奴コドラの言葉を翻訳しなかったか?・・・」
「・・・・・そろそろ陽が暮れるぞヒルダー。」
「ウソッ!まだ調べたいことがあるのにっ!!」
結局、20以上の不毛な調査をした(された)三人+一匹。気が付けばもう、空が赤くなり始めていた。
「きゅぃーーーー」
コドラは疲れ果てて這いつくばっている。
「しょうがないわ!!続きはまた今度にしましょっ!帰るわよある!」
そう締めくくると、帰り支度を始めるヒルダー。呆れた表情でそれを眺めていたアルだがやがて、はぁーと、もはや今日何度目かわからないため息をつき、同じように帰り支度を始めた。
心なしかいつも以上に目が死んでるきがする。
そりゃなあ、あんだけ振り回されたらなぁ。お疲れ様である。
やがて二人は
「また来てねぇーー」
というメルトの声に見送られて帰っていった。去りぎわに
「「コドラの事は誰にも言うなよーー(!!)」」
のハモった叫びを残して。なんだかんだで仲が良いというかなんというか、ナイスコンビなのは確かである。
「それじゃあ私達も家に入ろうか、コドラぁ。」「きゅぅい」
そして母ミーメルが帰宅して夕食後
「ねぇメル?」
「なにママ」
「昨日今日とずいぶんコドラがふらふらだったけどなにかあったの?もう寝ちゃったわよ。」
「ヒルダーちゃんとアルちゃんが来て遊んだから疲れちゃったんだよ。」
「そう。あのねメル、もしかしたら手遅れかも知れないけど大事な話しがあるの。」
「なぁーにママ?」
「コドラの事だけど、絶対に町の人達に話しちゃダメよ。もし・・・・・・」
なんだかんだで考えることはみんな同じなのかも知れない。そう感じたメルトだった。
「ママぁ。ヒルダーちゃんとアルちゃんも同じこと言ってたよぉー。」
「そうなの?・・・・・・・・・なら安心ね。」
メルトは友達に恵まれているのかもしれない。そう感じたミーメルだった。
とりあえず、
よかったね、コドラ
「きゅい?」
そういえば、東洋の龍には逆鱗があると言われますが、西洋の竜には逆鱗ってあるんでしょうか?まあ、コドラにはなさそうですが。