ゲーマーカップルとその周囲
「―――なぁ」
「何?」
ふと僕は、隣にいる彼女に問いかける。
「僕たちはこれで付き合ってると言えるのだろうか」
割と真剣な悩みだった。
僕と一緒にゲームをするのは恋愛的な意味での彼女。
ただしその彼女だが、僕の知る“彼女”と言うものとは対照的である。
よくイメージする彼女という存在は、笑顔で、一緒にいるとドキドキするというようなものだが、僕の彼女は反対と言う言葉が一番と言っていいほどである。
目にクマはないが、だるそうに猫背。今は冬なので、上着を羽織って、少し伸びてちらりと見える手にはゲームコントローラ。肩が当たりそうな距離なのにどうしてこんなにもドキドキしないのだろうか。漫画に出てくるあの文字は嘘なのではないかと疑ってしまう。
先程の問いに対して、少し間をあけて答える。
「―――これも一つのカップルの形なんじゃないの」
そう答えた瞬間、テレビ画面に「K.O.」の文字。僕は負けてしまった。
うん。確かに仰る通りですよ?そうですとも。でも僕らの知ってるカップルとは全然違うじゃないか。だってそうだろ?出会って数分後に対戦ゲームし始めるカップルはこの世のどこにもいないと思うよ僕は―――。
――ゲーマーカップルとその周囲――
~ゲーマーカップルと思い込み少年のチェス~
どうも皆さんこんにちはぁ!!この天ッッ才少年の私、薫様に会えたことを光栄に思うがいいぃ!
え?何?全然嬉しくないって?―――それならこの俺様がどんな辛い日々を乗り越えているか教えてやろう。
朝、学校に登校するわけだが、教室に入った後、やつらはそのにいるのだ…。
俺様の学校生活を辛くする元凶どもがッ!
「まーたお前…」
「何?文句あるの?」
そう!あのカップルだ!
その場の空気をよくも悪くもするカップルだ。
「んで、何作ってんの」
「見てわからない?チェスの駒よ。あと盤」
「紙で作る必要あるか…?」
「学校に持ってこれない以上、作るしかない。それも普段は持ってきていいもので」
「小学校のころにそんなことやったような記憶が…」
これがあのカップルの会話の一部である。どうだあの会話は!全然イチャイチャしてないじゃないか!これじゃ彼女いない歴=年齢の俺としても何かモヤモヤして仕方ないんだ!
―――そんな毎日は今日で終わりさ…。終わらす策を練ってきたからなぁ…。
「ということで!今日、二人にはカップルの何たるやを知ってもらう!」
「はぁ、別にいらないと言いますか―――」
「いるんだよ!おみゃーらには必要なんだよォ!」
後ろにいる彼女の方も、反論してきた。
「それを教えられたところで、私達がどうこうなるものでもないでしょ。ただウザいだけだから、やめてくれない?」
「キィィイイイ」
正論だ。正論過ぎる。あっちが変わってくれなきゃどうしようもないぃ…。
―――いや、それは俺がまだ言ってないから。だとすると変わるのでは?まだ可能性は残されているはずだ…。ならどうやって聞かせるか…。
「ふへ…。ねぇ、どうしたら聞いてくれる?」
「だから聞かないって…」という彼女の言葉も聞かず、俺は聞き続けたさ―――。
そして彼女は一つの条件を出してくる。
「―――そうね、じゃあ今完成したこのチェスで私に勝てたら聞いてあげる」
ちぇす?
駒はどこかで見たことのある白黒の将棋の駒そのものだった。何という完成度ッ!
くそぉ、どうする…。ルールは知らないし…。
「ちなみにルール破ったら、破った人の負けで」
ああぁぁぁああ。やばいやばいやばみが凄い…。
「わ、わかった。少しだけ時間をくれ。五分でいいから」
すぱぱっと携帯を取り出し、チェスのルールを調べる。
ほむほむ、この駒はこう動いて、取る時は斜めだけ―――。
俺は天才だ。勝てないわけがない。そうだ、俺が今まで積み上げてきた経験は全部無駄じゃない。これからも、生き続ける限り、道は続く…。
「よ、よし、じゃあ始めるぞ」
「先行はあげるわ。好きに動かしなさい」
へへっ。俺は天才だぁ。こいつの彼氏が俺を可哀相な目で見ているが、そうしてられるのも今の内だぜ…。
―――10分後―――
「な、何故だ…。天才の…神にも等しきこの俺が…ナズェ…」
「ルールを知っただけで長年やってきた人に勝てるなんて思わないことね」
隣の彼氏が言う。
「寧ろそんなことできたら本当に天才だろうけど…」
「ぐっ、次は覚えてろよォー!!」
教室を飛び出した。
「あ、逃げた」
「まるで中ボス辺りが吐きそうな台詞ね」
「―――弱そう」
「現に弱かったじゃない」
「こらこら彼女よ。ガラス並みのハートを持つ彼に対してそれは可哀相だろう?」
「そうね。“ガラス並みのハート”だものね。以後、気を付けるわ」
「うむ。それが彼の為だ。―――見てて悲しい彼のな…」
「ほんっと、彼は可哀相よね。自分を天才だと思い込むなんて」
「―――以後気を付けるんじゃなかったのか?」
「………」
俺が出て行った後、彼らはこんな会話をしたという…。
―――誰が中ボスだコッルァアアアア!
~ゲーマー彼氏と片思い女子~
私、渚には好きな男性がいます。同じ学校の、同じ学年の、同じクラスの、隣の席です。
その人は格好良く、授業中に少し見える彼は輝いています…。
とある天才の人からの話によると、なんでもゲームがお好きなのだとか。
ゲーム、と言ってもいくつも種類があります。はて、どのことなのでしょう…。
テレビゲームと言えば誰しもやったことはあると思いますが、私が思うに彼は普通じゃない筈です。だって、あんなにも周りとは違うオーラを持っているんですもの。一般的な人とは違う筈です―――。
じゃあボードゲームでしょうか。そういえば、“すごろく”とかも、ボードゲームの一種なのでしょうか。私は詳しくないのでわかりませんが…。
ゲームと言うのは奥が深いのですね…。
とある日の朝、私は意を決して話しかけることにしました。
「あ、あの―――」
「はい、何でしょう?」
「あ、ぃ、いえ、その―――いい天気です、ね?」
「なんで世間話なのかと何故疑問形なのかという二つの突っ込む点があるのですが、非常に迷っています。どうしたらいいでしょうか?」
どうしてなのでしょう…。ドキドキして、いつも通りに話せません…。
「あ、ぃえ―――。その、髪綺麗ですね…」
「初対面の人に対して言うかのような言葉なのと、今まで隣の席だったから初対面じゃないだろという二つの突っ込み点が以下略」
どっ、、、、どど、どうしましょう―――。
なんていえばいいんでしょうか!?どうしましょうか!?
「え、えとぉ、えとぉ!」
「お、おいどうした……?」
「え、あ、そのぉ!“すき”ですぅ!!!」
「――――――え?」
「ぇ――――」
はゎゎゎゎあああああっはは!!
違う違う違う!そんなことを言いたいんじゃないんですぅ!!
どうしたらいいのでしょう!?因数分解!?誤解を解く!?三平方の定理ぃ?ううぅぅ、焦り過ぎて必要ない単語までぇ―――。
「と、とりあえず落ち着け。確かに今のは“すき”があった。ありがとう」
「へ?」
「いやぁ、教えてくれなきゃヤバかったな。マジ助かった」
彼の意外な行動に対して、私はどう反応すれば…。
「なんで、しゃがんでるのです?」
「君が教えてくれたんだろ?この“隙”を狙ってくるヤツがいるかもしれないと」
あっ―――――。
まぁ、このままでいいですよね…。でも―――。
“好き”を“隙”ってどんな勘違いでしょうか。無理がありませんか?そして何かやらかしたのでしょうか?警察に見つからないようにとかそんな関連の話なのでしょうか!?
―――それとも、わざとやっているのでしょうか…。
私にはわかりません。
~ゲーマー彼氏の最近の悩み~
僕には悩みがある。
例の彼女の悩みもあるのだが…、それの他にもう一つ―――。
「なぁ、そんなにジロジロ見られると―――」
「ひぇ!は、はいぃ!」
最近の悩み―――。隣の女子が最近、ずっとこちらを見ている。
なんだ?何故こちらを見るんだ?悪いことしたか?嗚呼神よ、何故このようなことに――。
―――いや、やったぞ。やってしまったことがあるぞ…。
この前………。
『え、あ、そのぉ!好きですぅ!!!』
『と、とりあえず落ち着け。確かに今のは隙があった。ありがとう』
―――あの茶番かぁああああ!
自分でも馬鹿だなとは思うが仕方ないじゃないか!だってそういうやつって大抵焦ったりして言ってしまうっていうお約束的なアレだろうがぁ!なら少しでも勘違いとか、鈍感なんだとかそんなことしないと相手が恥ずか死ぬだろうが!
でも真剣に受け止めなかったのは本当申し訳ない…。
つまり――――アレが原因かっ!!
授業中、食事中、休み時間から、学活の時まで…。目が合うと花がパッと開いたかのように笑顔になる…。
―――どうしても暗殺する奴の悪い笑顔にしか見えん…ッ!
ダメだ。このままじゃタダでさえ成績悪いのにさらに落ちる…。
いや元から悪いんだけども。
「あ、あのさ。そんなにジロジロ見てくるけども、顔に何かついてる?」
「え?あ、いえ!―――あの、そんなに見てましたか、私」
「うん。ずっと」
隣の女子は顔を手で覆っていた。
顔はリンゴかと突っ込みたくなるぐらい真っ赤にして…。
いやね?確かにあの場面は『あ、ごめん。もう彼女いるから』って言うところなんだと思うよ?むしろそうする方が彼女の為でもあると思うけど、そんなの無表情で言えるかよ相手が可哀相で言えねぇわ何か茶番しないと表情も変えられないんだから仕方ないだろわかって誰か。そして僕を助けて―――。
前から考えてたストーリーです。
といっても一部なので、また作るかもです。