入学式
カーテンの隙間から差し込んだ光が少しだけだ、顔を照らし、その眩しさに思わず手で光を遮る。それから1分ぐらい経つと、流石に目が冴えてくる。
スマホの電源を付けて時間を確かめると6時32分と表示された。6時50分にアラーム付けてるから、もう少しだけでも横になっていようと思ったのだが、その願いは淡く崩れ去った。ベアを勢いよく開け放った義理姉さんの姿が偶然目に入ってしまったからだ。
「おっはよー!起きーーーーーて!」
そしてそう言いながら義理姉さんは勢いよく俺の方に飛び込んできてーーー。
「ぐほぉ!」
寝てる俺にダイブしてきた。まさか飛び込んで来るとは思ってなかったため、避けれるはずもなく、お腹にかなりの衝撃がくる。
「いや〜、今日から一緒の学校に行けると思うと楽しみで楽しみで部屋に来ちゃった!......お腹大丈夫?」
「大丈夫じゃねー!」
入学式の朝はあまりロクでもない始まり方だった。
「全く、朝から災難だったぞ」
「まぁまぁ、そういうのは気にしたら負けなんだよ」
俺は小学校からの親友、斉木 直人と一緒に学校に向かっている。
そして、その話題の種である義理姉さんはというと、「私は生徒会の関係で先に行かなきゃいけないから、先に行ってるね!」
と言って先に学校に行っている。まぁ、その方が平穏でいいのだが。
「そういえば、お前の姉さんって生徒会長なんだろ?」
「そう言ってたな」
「容姿よし、スポーツよし、勉強よし、普通に考えたら凄すぎる姉さんだよな?」
「確かにな」
「ただ、致命的な事にブラコンなんだよな。それもかなりの」
俺は無言で頷く。ちなみに、直人は俺の姉さんがブラコンである事を知っている数少ない人の一人だ。コイツも昔は義理姉さんを意識してた筈なのにな。ほんと、性格って大事だよね。
俺が4歳で、姉さんが5歳の時に、俺の父親と姉さんの母親が再婚した形でなった姉弟。つまり、義姉と言う訳である。
俺もその姉がここまでのブラコンになるとは思いもよらなかったが......。
それから少しすると学校が見えてきた。校門を通る時、校門前に立って挨拶をしてくる生徒が何人か居た。生徒会役員だろうか?
そんな事を考えながら俺達は入学式の会場の体育館に向かった。
体育館の場所は入試の時も来たことがあるから迷わずに辿り着くことが出来た。
体育館に入り、自分のクラスの列の椅子に座る。既に半数の人は来ていて、それから10分程時間が経つと、全員集まったのか式が始まる。
『これより、入学式を始めます』
こういう行事は眠くなるんだよな。なんとか眠ることなく式は進み、新入生代表挨拶となった。登壇上がるのは......へぇー、同じクラスになる女子なのか。
それも軽く聞き流した俺の耳にある種の、一番恐ろしいものが聞こえてくる。
『生徒会長挨拶』
ステージの上に登る義理姉さん。義理姉さんを見て新入生が何処からともなく煩くならない程度に騒めき出す。だが義理姉さんがステージに上がると、その騒めきは収まる。なんというか、本当に凄いんだなと思うけど。俺の願いは1つだけ......。頼むから変なこと言わないで!
「私は、この学校の生徒会長をしている東雲 未音です。この学校への入学式をーーー」
......良かった、普通の挨拶をしてる。こういうところでは真面目にするって分かってても、どうしても悪い考えが頭に浮かんでしまう。だけど、チラチラとこっちを見るのはやめてほしいかな。俺の近くの男子とか小声で「今、俺の方チラチラ見てなかった?」とか言ってるから。
生徒会長挨拶も無事?に終わり入学式は終わりとなった。
俺たち新入生は自分のクラスに移動となった。さて、変なクラスメイトが居ないといいが......。