第五章 金床神の地下王国 13
全ての団員が乗り込み、我が身と船長を鉄の盾で覆うと船にしがみついた。
「団長!いつでもいいですよ!」
「よおし、行くぞぉぉぉぉおおお!!」
レントは両手を下に向けると一気に浮遊掌を放出した。
溶岩の飛沫を飛ばしながら、あっという間に船着場から沖へと船が飛び出した。
驚いた船長が信じられないと言う目をして言った。
「・・・こりゃ大したモンだ。これなら行けるぞ!」
「だろ?」
「よおし、さっそくだが右に旋回だ」
「よっしゃぁ」
気合と共に浮遊掌を逸らした途端に船に衝撃が走り、船長の怒声が飛んだ。
「バカヤロー!右って言ってんのに左に曲がるな!」
「えー!右って言われたから右側に力を入れたんだけど・・・」
「後ろを向いてるお前の右は俺たちにとっちゃ左なんだよ!」
「あー、なるほど、次から気をつけるよ」
「危うく次が無い状況だったんだがな、まぁいい。取り敢えずこのまま真っ直ぐだ」
「オーケィ、船の損傷は無いか?」
「ちょっとひび割れたがどうってこたぁ無い。溶岩が勝手に穴を塞いでくれるさ」
溶岩の荒波の中を走る船にしがみつきながらアークが驚嘆の声を上げる。
「こりゃ凄ぇな。高速帆船だってこんなにスピード出ないぞ」
「そりゃいいが溶岩の荒波の中ってのは生きた心地がしねぇよ」
「俺は尖った鍾乳石の塊が落ちてくるのが恐ろしいぜ」
「お、おれ船酔いで具合悪くなってきた」
団員たちが船にしがみ付きながら話すのを聞いて副団長のマルコスが発破をかけた。
「団長1人に仕事させて何だお前ら!」
「いや、でも俺らに出来る事が無いんで・・・」
「だったら景気付けに歌でも歌え!ほら、さっさと歌え!」
マルコスの怒鳴り声に萎縮しながらもアークが歌いだした。
ボンガーボンガー・・・
それに合わせて全員が大声で歌いだした。
ボンガーボンガーヤイガガーナボンガァーーー
サンガーミスチーヤイガガーノ
ソンバーミスチーオンガガーナー
ボンガーボンガーヤイガガーナボンガァーーー
団員たちの歌声を聴いていた船長の胸に何かがどっと溢れてきた。
なぜだか分からない。分からないがこの歌声が若かった日々の思い出と共に人間への不信を拭い去った。
人間だがこいつらは友になれる。命をかけて信じる事ができる。そう思えたのだった。
歌を聴きながら船長が袖で目を拭ってつぶやいた。
「チッ・・・下品な歌を歌うんじゃねーよ」




