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第五章 金床神の地下王国 12

 神殿前広場での酒盛りは大賑わいだった。


「人間の造るウイスキーってのは本当に味が良くて強い。まったく最高だ」

「いやいや、ドワーフのビールこそ最高にうまいぞ」

「そうか?あっはっはっは!!」

「よぉし、オレ歌っちゃうぞー!」

「おお、一緒に歌うぞォー!」


ボンガーボンガーヤイガガーナボンガァーーー

サンガーミスチーヤイガガーノ、ソンバーミスチーオンガガーナー


「ん?なんか目がぐるぐる回ってるぞ。ドワーフのビールは強えなぁ」

「おおう、ワシも何だか足元がぐらぐら揺れるわい」

「あっはっはっはー」

「がっはっはっはー」


 大いに盛り上がっている中、轟音と共に神殿の扉が吹っ飛んだ。

何事かと目を向けた先に取り乱したレントとイプイスが立っていた。


「もうすぐここは火山の噴火で崩れ落ちる!ここにいる全員、今すぐ逃げるぞ!!」


 一気に酔いが醒めた団員とは対照的にドワーフたちは暢気なものだった。


「おおー、人間の兄ちゃん、あんたもここに来て飲もうじゃないか、ほれほれ」

「そうそう。ここは滅多に地震も起きないし崩れたりはせんよ」


 レントが言葉を返そうとした途端に強い揺れと共に大きな鍾乳石が落ちて神殿を破壊した。

さすがにこれにはドワーフたちも唖然として言葉を失った。

イプイスが声を張り上げて言った。


「彼の言うことは本当だ!崩れ落ちる前に必要最低限の物を持って全員避難するんだ!!」


 目の前の光景と信奉する神様自身の言葉にドワーフたちが事態を理解した。


「長老全員、それぞれのブロックの人員確認だ!」

「大陸側への尾根道を行くぞ。さぁ、急ごう」


 突発的な事態にも関わらず、キビキビと行動に移るドワーフたちを頼もしく見ていたイプイスが、難しい顔をしているレントに気付いた。


「大陸側・・・か」

「レントさん、どうしました?」

「オレは大陸側には行かん」


 レントの目は大きく揺れる石船を見据えていた。

溶岩流がうねって高波が立っている。まして頭上からは崩れた岩盤や鍾乳石がそこかしこに落下していた。


「まさか・・・向こう岸へ?石船で?」

「ああ、オレたちは戻ってやる事がある。船着場に居るドワーフたちの仲間の事もあるしな」

「そうですか。・・・ではここでお別れですね」

「ああ、会えて良かったよイプイス。ドワーフたちの事は任せたぞ」

「私も神の端くれです。全身全霊、命ををかけてでも彼らを地上に連れ出します」

「なんだ、神様も死ぬ事があるのか?」

「ありますとも、一時的にとは言え具現化した肉体は滅びます。いや、死ぬ気は毛頭ありませんがね」

「なるほどな。もし行く当てが無ければここからまっすぐ西にあるイリア村に来てくれ。もちろん全員だ。歓迎するよ」

「レント様・・・お心遣いありがとうございます」


 イプイスに別れを告げ石船に向かおうとしたレントの前にドワーフの男が立ちふさがった。

船着場で身を隠すマントを着ていた石船の船長だった。


「案内が必要だろう。ワシが一緒に行こう」

「いや、お前もみんなと一緒に大陸側に逃げろ」

「ばかやろう!海を舐めるな!!」

「海じゃねぇよ」

「うるせえ!ワシが船長だ!ワシが案内するんじゃ!!」

「駄々っ子かよ!わかったよ、進路は任せたぞ」


 レントはそう言うと団員たちが呼ぶ声に急かされてドワーフを担いで船へと走った。

ドワーフを船に放り投げると船尾に駆け寄り、レントが自らの身体をロープで縛り付けた。


「櫓を漕ぐ必要は無い。オレが動力になる」

「団長、ホントに大丈夫ですか?」

「任せておけ。こう見えてオレは魔力の多さだけは自信があるんだ。最大出力の浮遊掌で船を走らせる!」

「えー・・・オレ嫌な予感しかしないんですけど」

「いやオレもだよ」





「やかましい!さっさと全員船にしがみつけ!」

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