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第五章 殺戮者の矜持 3

 将軍が立ち去ってからおよそ2時間。先ほどの騒ぎのせいで店の夫婦も酔客もレントを遠巻きにして恐ろしげに眺めていた。賑やかな音楽も喧騒も無く、である。

老婆の姿に扮したルネアが眠りこけるレントを遠目に眺めながら背中越しに小声で猟犬につぶやいた。


「うーん・・・レント様の行動形式が少しわかって来た気がします」

「どういう事ですか?」

「わざと目立つように振る舞い、戦う前には必ず腹ごしらえをする。恐らくこれから死ぬか気が済むまで暴れるつもりだと思うわ」

「腹ごしらえしない時や出来ない時はどうなんです?」

「気が済むハードルがずいぶんと高くなると思うわ。そうね・・・バーガンディーの時のようになると思うわ」


 バーガンディーと聞いて猟犬が青ざめた。

経過報告は聞いて知っている。あの時は魔獣に姿を変えたとは言え暴れてはいない。理性で暴走を抑えていた為に暴れてはいないが村中を恐怖に突き落とし、近隣の鳥獣が怯えて姿を消している。

だがここは正真正銘の敵地であり、誰に対しても何の遠慮も要らないのだ。


「我々は生きて帰れぬやも知れませんな」

「あら、怖いの?」

「とんでもない。ただ出来れば最後まで見届けたいものです」

「それにしてもアルム鋼の二路とはね。あんな物、例え大業物と言われる剣になってもレント様にしか扱えないわ」

「まさに。・・・総帥はアルム鋼の言い伝えをご存知ですか?」

「あら、聞きたいわ」

「この大地の中心には地熱により溶けて白熱したアルム鋼が大量にあって、その磁気で太陽を巡っていると聞いた事がございます」

「およそこの世の中で1番重いとされている金属だから有り得る話ね」

「それとは別に溶岩流の中にあっても溶解しない為、大昔のドワーフたちは石で造った船で溶岩流の中に漕ぎ出し、石で造った網でアルム鋼をすくい上げていたと言う話もございます」

「世界で1番固く重く熱に強い希少金属ならでわの話ね」


 と、店のドアが開きフードを被った4人の男たちが入って来た。

店内を見回しながらレントの近くまで歩いてくるとテーブルの上に置いてある双龍を鷲掴みにした。


「よし、お前らずらか・・・な、なんだこれ?」


 目を覚ましたレントが剣を持ち上げられずにうろたえている男の首根っこを掴んで床に押し付け、その上に双龍を2本とも乗せた。


「お前うるさいよ。人の物盗むならもう少し静かにやれ」

「う、うるせぇ、こ、殺せぇー!」

「まぁいいや。おい、お前らも仲間なんだろ?見捨てて逃げるな。こっち来い」


 突っ立っている3人を手招きしてイスに座らせると主人に大声で声をかけた。


「あるじ、悪いが肉皿を10人分とワインを5本頼む」


 レントはテーブルの上に金貨を3枚置くと4人を面白そうに眺めた。


「お前らずいぶんと痩せてるなぁ。ちゃんとメシ食ってんのか?」

「バカにしてんのか?ちゃんとメシを食えてる奴が盗人なんかするか!」

「あははははは、まぁそう言われたらそうだ。まぁいい、今は腹いっぱい食うことだけ考えろ」


 盗人に飲ませ食わせするレントを眺めながら猟犬は理解に苦しんだ。

気まぐれにも程がある。いったい何のメリットがあるというのか?

それは盗人たちも同様でキョトンとしながらも半ばヤケになって肉と酒を胃に流し込んだ。

およそ2時間後、けたたましい足音と共に兵士の1団が駆け込んできた。


「泥棒が出たと言うのはここか?」

「おお兵士さん方、こっちこっち。この4人です」


 横目に様子を伺っていた猟犬が飲んでいた酒を吹き出した。


「ル、ルシフェルと蠍旅団・・・」

「あらぁ、最近見ないと思ったらこんな所に居たのね」


 兵士長の格好をしていたのはクロロ、そして兵士の格好をしている7人全員が蠍のメンバーだった。


「お前ら飲み食いはもう充分か?さあ牢屋に行くぞ」

「な、、!お前俺たちをハメやがったな!」

「1人じゃ勝ち目がないから油断させて兵士を呼びやがったな!」


 盗人の怒鳴り声に冷ややかな目を向けるクロロたちを他所にレントが面白そうに言った。



「お楽しみはこれからだ。なぁに、俺も一緒に入ってやるから安心しろ」

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