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第五章 将の器 9

度々で申し訳ありませんが作品タイトルを変更させていただきます。

どうしても物語の要となる東天紅をメインタイトルに戻すべきだと思い至り、勝手ではありますが本稿よりこのタイトルで書かせていただきます。

読者様におかれましては引き続きご愛顧のほどよろしくお願い致します。

 ふとサンドラの背負った剣を見てスピカが微笑んだ。


「やっぱり親子なのね。形状は違うけどあなたもその剣を持ってるのね」

「あ・・・スピ・・・母上もオーヴァルブレードをお持ちなんですね」

「あの人が私にくれた唯一の贈り物なのよ」


 そう言って横を向くとハンニバルが気まずそうに咳払いをした。


「あー・・・スピカ、そういう話はせんでもいい」

「いいじゃないの。そうだ、せっかくだから馴れ初めの話をしようかしら」

「や、やめろ・・・!スピにゃん・・・」

「私、聞きたいです」

「俺より強い奴と戦いたい。それが初めて出会った時にハンきゅん・・・あなたのお父さんが言ってた言葉よ」

「あきれるぐらい父上らしい言葉ですね・・・」

「私の命を狙っている者は多い。国益の為、名を上げる為、脅威の排除と理由を挙げたらキリがない。それまでも、いや、今に至るまで事あるごとに刺客がやってくる。実はハンきゅんもその1人だった」

「父上が?」

「ええ、そしてハンきゅんはね、私を一目見るなりこう言ったのよ。お主より強い者は居るか?ってね」

「母上が弱そうに見えたのですか?」

「私もそう思ったわ。でも次に言ったのがお主ほど強くなくてもいい、その者を倒したらお主が負けたと認める強者は居らぬか?だったの」

「え?ええと・・・?」

「私はこの男は何を言っているんだと思ったわ。臆したのなら立ち去れと告げた私にハンきゅんは顔を赤くしてこう言ったの」

「や、やめろ!よりにもよってこんな所で言わんでくれ!」


 止めようとするハンニバルから身をかわしてスピカが続けた。


「お主を倒したくない。一目惚れしてしまったってね。私は笑ったわ。どこの世界に倒すべき相手に一目惚れする男が居る?」

「父上・・・」

「ぐ、ぐぬ・・・」

「しかも困った事に800年生きてきて最強の名を欲しいままにしてきたこの私がときめいてしまったの。半年ほども戦ったかしら。お互いに深手を負わせては再戦するために養生し、やがて枕を共にするようになった。そして生まれたのがサンドラ、あなたよ」

「そのサンドラと俺を置いて出て行ったのは誰だ?」


 ハンニバルの一言に沈痛な面持ちでスピカがつぶやいた。


「恨んでる?」

「・・・いや、それがお前の愛情だと分かっているから俺は自分の弱さを責めたよ」

「あなたが色々な所で私を捜してくれたのも知ってるわ。私を殺したと吹聴していた山賊団を皆殺しにしたって話も聞いたわ。すごく嬉しかった」

「や、やめろ。恥ずかしいだろうが」

「と言う訳でサンドラ、私たちこれから再会のラブラブ旅行に行くわね」

「ええ!会ったばかりなのに・・・それに父上はイリア村の長としての仕事もありますから」

「ああ、それならあなたとレントちゃんとでやっといて」

「村人が納得しません」

「するわよ」

「え?どうして?」

「イリア村の開祖は私の息子で事実上村を興したのは私よ。だから私が従いなさいと言えばそれで解決よ」

「え、え、え、え、・・・じゃあイリアって私の兄になるんですか?」

「そうよー。ついでに言っておくけど次に会う時は妹か弟が出来てるかも知れないからよろしくね」


 そう言ってくるりと後ろを向くとウルグァスト王に向かって宣言した。


「そういう事だからあなたたちは今すぐ撤兵しなさい。さもないと死ぬ事になるわ。だってこの中に居る誰を無作為に選んでも今すぐにあなたを始末出来る人ばかりなんですもの」


 スピカの言葉にうろたえながらも早急に判断できずに居るウルグァストの目の前でレントが咳き込んだ。それと同時にレントの身体から黒いタール状の液体が流れ出し、そこから巨大な化物が何体も這い出して来た。

咳き込んでいた口からも液体を吐き出し、そこから更に化物が増えて行った。


「済まないが離れててくれ!休息を終えた精霊が復活し出したらしい・・・巻き込まれる前に早く!!」


 レントが叫んだ直後、ウルグァスト王もまた手当てもそこそこに逃げ出し、叫んだ。




「撤収!全員撤収だ!!」

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