第三章 軍旗強奪祭り 7
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本当にありがとうございます。
あ、別に最終回ではないですw
ファウンランドの王城を囲む城壁は1辺が約5キロ、内部が6層、通路幅は約5メートル、各方角ごとの通路にはほぼ500メートルに1つ仕切りがあり、大勢の兵が一気に通れないようになっている。
その北通路の東端に近い仕切り部屋にサンドラとセーラが居た。
「剣と剣のやり取りじゃないのか?」
「今日に限っては残念じゃが木剣か棍、または徒手格闘でやって貰うしかないのう。」
「木剣では勝負がつかない。が、格闘ならまぁいいだろう。」
「ハンニバル仕込みの掌打波かね?」
「父上とやり合った事があるのか?」
「いや、共同戦線ってやつさ、あの人の掌打波は凄かったね。ドメもドーシも容赦なしの戦場技だったよ。」
「フェ・・・・若先生、掌打波やドメ・・・とは初耳ですがどんな技なのですか?」
2人の会話にサンドラの供の1人が問いかけた。
「あー、掌打は知ってるだろう。掌の底の方で相手を打つ技だ。」
「はい。」
「掌打波は指先が相手の体に当たるぐらいの至近距離から打ち出す。その際に自分の得意とする系統魔法の波動を打ち込む。電撃波、冷撃波、高温波など、だな。」
「な、そんな技があったのですか。」
「お前たちが日々鍛錬している掌打はその基本を身に付ける為の物だ。」
「それでは、ドメ、ドーシと言うのも・・・・」
「半歩前に踏み出して身体を貫通させるように打つのがドーシ、身体をひねって打つと同時に引き、相手の内部に掌打波を留めるのがドメだ。もうこのぐらいでいいだろう。あまり言うと父上に叱られてしまう。」
「は、・・・あの、最後にもうひとつだけ・・・ドメとドーシの効果の違いを教えていただけませんか?」
「ふむ・・・、ドーシはショックで相手を気絶させる打ち方で、ドメは内部破壊を引き起こして倒すための打ち方だ。」
そこまで言うとサンドラはゆっくりと立ち上がり、棍を手にした。
「来たか・・・足音は4つ・・・まずは邪魔な小者を払うか。」
やがて供の耳にも駆けてくる足音が聞こえてきた。
ドアが開き中に飛び込んできた者を目がけて棍を振り抜いた。
黒い服を着た者が2人、打ち倒されてその場に崩れた。
返しの摺り上げ打ちでもう1人、わずかに手応えを感じたが、ありえない速さと妙な体の動きで避けられた。
構わずに踏み出しながら突く、避けられた方向に後ろ回しで下から斬り上げる。
またも微かな手応えしか感じられない。
サンドラは自分の攻撃をここまで躱す者には父親以外に出会った事がなかった。
だが相手も反撃するほどの余裕は無い。
「そうか・・・・絶命回避か。聞いた事はあるが見るのは初めてだ。」
「絶命回避?・・・俺は意識的に相手の動きを多少遅く感じる事ができるが絶命回避か、そうか、そういう言い方をするのか。」
「なるほど、ザモラで瞬間移動する王族が居ると聞いていたがお前がそうか。」
「へぇ・・・ザモラ・・・ねえ。」
その時、ハイネルドと向き合っていたサンドラの脇腹に衝撃が走った。
レントの横合いからの抜き打ちだった。
飛ばされて壁に激突する前に精霊を床に突き刺し、体勢を変えて低く構える。
緑色の兜を被り、布靴を履いただけの裸のレントを見て驚愕した。
「お、お、お前もしかしてザモラでアバドンの化身、悪魔の騎士と言われた者か?」
「ん?知らん。バッタ野郎とは言われてたがな。」
レントは折れた木剣を放り捨てて、倒れている『猟犬』の木剣を2本とも拾い上げた。
軽く素振りをするとサンドラに向き合った。
「お前の相手は俺がする。昨日の借りも返さなきゃならねえしな。」
「昨日の借り?今初めて会ったんじゃなかったのか?」
「後ろからの逆袈裟、更に1歩踏み込んでの連突き。忘れたのか?」
「・・・・ふ、ふはははは。そうか。あれはお前だったのか。」
「そう、俺だよ。・・・・おいハイネ、俺はここで遊んでいく。後はお前1人でなんとかしろ。」
「・・・・わかった。あとで城壁上の広場で会おう。」
「おう、旗上げてまってろ。」
レントの言葉にサンドラの供2人と控えていた『猟犬』2人を残して全員が仕切り部屋から出て行った。
セーラは倒れている『猟犬』2人を軽々と肩に担ぎ上げるとレントに念押しした。
「死ぬんじゃないよレント、それと出来れば殺さないようにな。」
「ふふ、・・・・どっちもやってみないとわからないさ。そうだろ?黒鎧。」
「まったくその通りだ。・・・・さて、始めようじゃないか。行くぞバッタ野郎。」
2人はお互いに構えると、じりじりと距離を縮めて行った。




