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第三章 軍旗強奪祭り 2

 正午、祭り開始の花火が打ち鳴らされるのと同時に20人、30人規模の兜を付けた学生たちが各分隊に襲いかかった。

だがたった5人ほどの分隊に勝つ事ができない。

強引に奪い取った旗も包囲されて奪回されてしまう。学生たちには悪夢としか思えない信じがたい現実だった。

それを眺めながら大あくびするハイネルドに王の側近が声をかけた。


「王子はお出にならないのですか?」

「実戦経験もない無計画な者達とか?まぁそれも楽しいだろうが今はやめとこう。」

「助太刀は許可されておりますから王子ならば旗を強奪出来るでしょう。」

「だったらお前が今旗を奪って掲揚してくれ。俺が奪った事にしよう。」


そう言うと腕を組んで目を閉じた。

側近はやれやれという顔をして黙り込んだ。

 軍旗の争奪とは言え、祭りと謳われるだけあって城下は賑わいを見せていた。

幅約5メートルの沿道の両脇で屋台が立ち、人々は飲み、食い、踊っていた。

時折兵学校の生徒たちが旗強奪を試みると拍手や歓声が上がる。

まもなく午後4時、時計塔を見上げたハイネルドに背後からセーラが囁いた。


「準備はほぼ整いました。後は王子とあの者次第でございます。」

「ああ、ありがとうセーラさん。そう言えばあいつ今日は俺モードになってたなぁ。無理もないけど作戦前に先輩たちを壊滅させたりしないだろうな。」

「それは・・・・・多分大丈夫でしょう。わかりませんが・・・・。」

「うん。まぁ大丈夫だよな。わかんないけど・・・・。」

                 ★

 横になっていたレントが起き上がると同時に誰も居ない所に声をかけた。


「ずいぶん早いな。もう準備は出来たのか?」

「はい。校門横に置いておきました。」


声と同時に黒い服に身を包んだ男が現れ、教室にいた全員が凍りついた。

誰1人としてその男が居ることに気付かなかったのだ。

レントと言葉を交わした後でまた姿が消えた事に身震いした。


「そうだ、先輩方に言っておく事がある。特にマルコスさん。」

「なんだ?レント。」

「作戦に変更があっても計画通りに動いてくれ。簡単な事だ。とにかく本気で目的地まで逃げてくれればいい。」

「おい、ちょっと待てよ。お前先輩に・・・・」


横からレントに文句を言いかけた男をマルコスが止めた。

「殺し合う気がないなら文句を言うな。お前死ぬぞ。」

尚も不満げな男にマルコスが冷たい視線を投げかけた。

「こいつは俺たちとは違って人を殺してる。しかも兵士だ。一般人じゃない。」

「何でそんな事がわかるんだよマルコス。」

「殺気の質が違う。それにあの兜に付いてる血錆び、悪い事は言わん。やめとけ。」


マルコスはレントに向き直って言った。


「計画に変更がある予定なんだな?いや、答えなくていい。俺たちは俺たちの成すべき事をなす。失望はさせないつもりだ。」

「マルコスさん、ありがとうございます。」


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