第三章 軍旗強奪祭り 1
城郭の模型を前にハイネルドが最後の説明に入った。
「まずは当日説明になった事を詫びよう。本当に申し訳ない。」
特殊工作甲兵部の教室に集まった各チームのリーダーたちが頭を下げるハイネルドに、そのありえない光景に怯んだ。
「いや、王子。頭を上げてください。」
「そうですよ。我々は王子を全面的に支持する為に集まっているんです。」
「なんでも命令してください。」
口々にハイネルドをなだめた。
「そうか。ではまず状況を伝える。」
ハイネルドは城郭を指し示しながら説明に入った。
城は東側、ゴールの掲揚台は城と城壁とをつなぐ広場にある。
開始位置は西側の噴水広場だ。
ゴールへのルートはおよそ3つ。中央から真っ直ぐ城内へ向かう方法。
南北のどちらかの入口から入り中通路を通って内部階段から屋上に向かう方法。
東壁の階段を登って屋上に向かう方法。だがこれは論外である。
「ここまでで何か質問や意見はあるか?」
ハイネルドの問いに金髪の若者が答えた。
「実現可能かどうかは別として4つ目のルート、外壁があります。西壁門から外に持ち出した軍旗をロープで引き上げる。」
「君の名前は?」
「マルコスです。王子。」
「充分に実現可能な作戦だ。これが攻略目的なら俺もその作戦を押す。」
「つまりこれは単なる攻略では無いという事ですね。浅知恵や姑息な手段でとにかく結果だけを出せばいい訳では無いと。」
「そうだ。察しがいいなマルコス。」
「では出来るだけ派手に、且つ圧倒的な形を取らなくてはいけない。そういう事ですか王子?」
「そうだ。だが派手すぎて奇抜すぎて、今まで伝える事を控えていた。」
「・・・・余命いくばくもない王に意を伝えたいのですね?」
返事をする代わりに苦笑いでハイネルドが答えた。
「本作戦の決行は午後5時20分、薄明るく人の見分けがつきにくい。まさに逢魔が時を狙う。」
ハイネルドが城郭模型の1点を指し示す。
どこの部隊にも組み込まれない孤高の戦闘特化小隊、通称蠍と呼ばれ恐れられているクロロ小隊。隊長はルシファーと呼ばれて恐れられている。
「まさかクロロ小隊の、・・・・サソリの旗を分捕る気ですか王子?」
「そうだ。参加者全員で総攻撃を仕掛けて奪い取る。」
「ほぼ300人と言ったところでしょうか。たったそれだけの人数で奪れますか?」
「奪るさ、なぁレント。」
「何の問題もない。俺が先頭に立ってクロロを引き付ける。」
後ろに居たレントの発言にマルコスも、また他の生徒達も、ほんの数人の吸収する際にレントの強さを知った者以外が不満と不信の目を向けてレントを見た。
延々2時間の作戦指示を受け、ハイネルドが王と共に列席するために退室した時には参加者全員が青ざめていた。
「まだ6時間もあるのか。悪いけど俺はひと眠りさせてもらうぜ。」
そう言うとレントは所々へこんだ緑の兜を日除けがわりに被って奥に並べてある机の上で横になった。
レントをどう扱ったらいいのか解らない様子でマルコスが言った。
「随分と汚くてへこんだ兜だなレント。」
「ん?ああ、俺もそう思うよ。・・・・・だが・・・・」
兜のひさしを下げてレントが答える。
「少なくともこれで眩しくない。」
そう言って5分もしないうちにレントは寝息を立て始めた。
そうです。クロロ小隊のモデルはケロロと幻影旅団(蜘蛛)です。^^;




