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第三章 少女時代 4

拘留5日目、王国軍保安部の執務室での高圧的な取り調べに対し、リンダはうんざりした顔で言い返した。

「だーからー、何回も言ってるでしょ?勝手に敷地を踏み荒らしたのも先に手を出して来たのもルーゼンだってーの。いい加減ここから出してよ。」

「向こうはそう言っておらん。行軍途中でいきなりワルキューレ、つまり君が空から炎の矢を降らせて来たと証言している。」

「だったら直接話し合うからルーゼンをここに連れてきなさいよ。」

「彼も彼の部下も大ヤケドで動ける状態じゃない。君がするべき事はルーゼン中将の供述書に同意してサインする事だ。」

リンダがつまらなそうに供述書をつまみ上げて後ろにかざした。

「ねえムスタファ、これにサインしたらどうなるの?すぐ出れる?」

初老の巨漢がそれを受け取って目を通した。

「無理ですな。」

にべもなく言う。

「あ、そう。じゃあどのぐらいかかるの?」

「5年は投獄されるでしょう。いかがなさいますかリンダ様。すぐにでも出られるのでしたら私がお出ししますが。」

「余計な事はしなくていいわよ。アンタ残りの人生を塀の中で過ごす事になるわよ。」

「それも下令の勤めと心得ております。」

リンダは呆れ顔でムスタファから供述書を取り上げると耳の後ろの羽にこすった。

パッと炎が燃え上がり、一瞬で供述書が灰となった。

うろたえた取調官に対して指を突きつけてリンダが宣言した。

「軍の権威を傘に着て事実をねじ曲げるというのなら私も同じことするわ。紙とペンをちょうだい。」

                 ★

机の上に広げた図面を睨みながらハイネルドがため息をついた。

「ダメだな。リンダは不可欠だ。なぁレント、どうにかならねぇか?」

「どうにかって言われてもなぁ。まだ取り調べ中なんだろ?ルーゼン中将の容態次第じゃないのか?」

「どうせなら大ヤケドで死んじまえば良かったのになぁ。」

「殺してこようか?理由はいくらでも作れるぞ?」

レントの言葉にあからさまに嫌な顔をしてハイネルドが再びため息をつく。

「それをやったら俺たちまで出れなくなっちまうよ。」

「むしろお前のコネで出せねぇのか?王子だろ。」

「それが出来たらお前に相談なんかしねぇよ。俺に出来るのは取り調べと称して係官が乱暴を働かないように、せいぜい護衛を付けるぐらいのもんだ。」

「使えねぇ王子だなぁ。」

「うっせぇよ!」

「でも拘留5日か。そろそろ爆発するかもなぁ。」

レントの言葉に面倒くさそうに立ち上がると顎をしゃくった。

「レント、お前も付き合えよ。リンダを迎えに行くぞ。」

                 ★

手渡された紙を見て取調官が肩を震わせた。

「ほらほら、アンタ早くルーゼン中将の所に行ってサインしてもらいなさいよ。」


   私、ルーゼンは去る4月27日の午後2時頃

   戦地へ向かう道程を短縮するためにリンクス家の敷地へ無断で入り

   あまつさえ見咎めた同家の者に対して狼藉を働きました。

   当該被害者が正当な防衛の為に行った行為により負傷、

   現在は深く反省しており、現職を辞する所存であります。


「でっち上げだ。取り調べに真面目に応じないなら・・・・」

「どうする気よ?私と刺し違える?アンタ死ねる?」

「舐めた口をきくな!」

挑発に乗った取調官がリンダの襟首を掴んだ瞬間ムスタファがその手首を斬った。

ポケットから出したハンカチで血を拭うと再びナイフを袖の中に仕舞った。

叫び声を耳にした保安部の人間が数人駆けつけた。

「手出し無用!!」

一喝したムスタファが保安部の者に穏やかに言い直した。

「あなた方ではない。この者達に言ったのだ。」

言われてあたりを見回した男たちが硬直した。

黒ずくめの武装集団、猟犬が所狭しと立ち並ぶ姿が揺らめきながら現れたのだ。

「あらアンタ達猟犬じゃないの。ハイネに言われて私の護衛に付いてたの?」

リンダが馴れ馴れしく声をかけて笑顔を向けた。

「リンダ様はこの5日間実に良く耐えて下さいました。後は私にお任せを。この者たちにはリンクス家を甘く見るとどうなるか身を以て知ってもらいます。」

そう言うとムスタファは両足を広げて低い姿勢で身構えた。

その時、戸口からセーラがひょこっと顔を覗かせた。

「相変わらず元気だねぇムスタファ。」

そう言うとズカズカと入り込み、奥にある椅子にどっかりと腰を下ろした。

「これはセーラママ。お久しぶりです。残念ながら取り込み中でして・・・」

「なによムスタファ、セーラさんと知り合いだったの?」

「あ、いえ、リンダ様。その話は後ほど・・・・・」

「知り合いなんてモンじゃないわよ。熱烈にアタックされて、この人との子供まで一人こさえちまったわよ。」

「ああああああ・・・・ここでそんな話をしなくても・・・・」

緊迫した空気が緩んで保安部、猟犬共に呆れ顔になった。

さらにその時、戸口にやって来た者が声をかけた。



「あー、取り込み中申し訳ないがここにリンダと言う者は居るか?」

立っていたのは両脇に従者を連れ、緋線の黒鎧をまとった精霊の騎士、サンドラだった。


ちょっとしたアドバイスがありまして、

今回から副題を付けることにしました。

タイトルが長すぎてごめんなさい^^;

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