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第三章 少年時代 7

ちょっとハイペースで年明けから飛ばしてしまいました。

さすがに息切れしています^^;

サンドラの中の人が毎日チェックをしてるという話を聞いて

ついハッスルしてしまいました^^;

日の出と共にかまどの火が付けられた。

とても戦場とは思えないほど兵士たちが楽しそうに朝食を摂る。

炊かれてるのは粥ではなく粒飯である。食料庫から燻製肉やチーズ、ソーセージも運び出されての豪勢な食事にビールまで出された。

勝っても負けても今日だけの事、明日は無いからこそ出来る贅沢だった。

誰が言ったわけでもなく兵士全員がそれを理解した上で楽しんでいる。

そこには後悔も恐怖も無い。あるのは精一杯戦い、生きる喜びだけだった。

食事の間にザモラの国家を歌う者、手拍子で踊る者まで居た。

ハイネルドは壇上に上がり訓示を垂れた。

「戦闘に際して諸君に携行して貰う物がある。1人10本の拘束具と水筒だ。この水筒には生のウイスキーが入っている。体を温めるために多少は飲んで構わないが酔っ払うなよ。それと最低でも半分は残しておけ。・・・・さて、これからおよそ2時間後には戦闘に入るが何か質問はあるか?」

一同を見回したハイネルドがレントに目を止めた。

「レント、お前から何か言う事は無いか?」

「え?うーんそうだなぁ・・・・さっさと終わらせて夜は焼肉が食いたいな。それとザモラの国歌は仲々良かった。また今夜聴かせてくれ。」

兵士たちが笑いながらよしわかったと叫んだ。

「よおし、では各自配置に就け。勝利は我らと共にある。」

ハイネルドの掛け声に兵士たちが各配置へと移動した。

約50名の兵士と共に砦の上部、城壁の張り出し部分に移動したレント達は遠くにサンテックス軍が進軍するのを見た。

「800と言う所か、陣地に結構兵を残してきてるな。一応後詰めにも備えておいて良かったよ。じゃあハットン、手筈通りに頼むぞ。」

「お、おう!ここが正念場だ。肚括っていくぜ。」

やがて城門前に500人、50メートルほど離れた所に300人を配置させた上でサンテックスが一騎で前に進み出た。

「ザモラの兵どもよ、ワシはファウンランド軍指揮官のサンテックスだ!兵の大半を失った今なら全面降伏しても恥ではない。ハイネルド王子を開放し、速やかに我が軍門に降れ。悪いようにはせぬ。」

ハットンが城門の上に立ち、それに応えた。

「問答無用。戦は勝つか負けるかだ。王子を助けたくば我らの最後の一兵まで倒してみせよ。それとも智将サンテックスともあろう者が高々この程度の砦が怖いか。舌でいくさがしたいのなら後方に下がって書簡を送るが良い。」

ハットンの口上を聞いたサンテックスの顔に朱が差した。

「おのれ、下郎めがつけ上がりおって!者共、城門を打ち破れ!突撃じゃ!!」

ザモラの兵が城門の上からレンガや石を落とす中、重装備の騎士がそれを物ともせずに

巨大なハンマーで城門を打ち壊し始めた。

ほどなく大穴の空いた城門へサンテックスの兵がなだれ込んだ。

砦の内部には兵は1人も居らず、侵攻軍はアーチ階段を上り城門上部へ抜ける扉へと殺到した。

またも巨大なハンマーや斧が扉を打ち壊すべく振り下ろされた。

だが砕け散った扉の板の内側に分厚い鉄板が現れた。火花を散らしてハンマーが弾き返される。その時、戸惑う侵攻軍の背後で爆裂音がした。

2つあるアーチ階段が両方とも吹き飛ばされていた。もう飛び降りるしか降りる手段がなくなった。しばしの間を置いて更に爆裂音が砦の中に響き渡った。

今度は広間の床が崩れ落ちて地下階へと残りの兵が落とされた。

ハットン達は用意していたハシゴをかけると一気に下に降りて広間へ駆け込んだ。

最終確認をしてレントが最後にハシゴを降りかけた時、城門上部が爆発して跡形もなく崩落した。運の悪い事に弓の射出口の正面に居たレントは爆風をまともに受けて遠くへ吹き飛ばされた。

誰一人としてその事に気付いた者は居なかった。

砦の裏手にいたザモラ兵と合流したハットンは次々に広間に残っていた兵を拘束具で縛り上げていった。

次いで地下階に落ちた兵に呼びかけた。なんとサンテックスまでが崩落に巻き込まれて地下に落ちていた。

「俺はザモラのハットンだ。サンテックス、おとなしく降参しろ。それとも弓で射殺されたいか?」

「鎧を貫通させる矢など無い。それにこの程度の穴など這い上がるのに造作もないわ。ハットン、よく見ておけ!!」

言うが早いか号令をかけると組体操のように盾を背負った兵が階段のように積み上がっていく。ハットンが内心恐怖を感じた。

(ハイネルドが言ってたのはこれだったのか。止むを得んな。)

ハットンが右手を高く掲げると第4の爆発が起こった。

それと同時に地下階へ決壊した濠の水が一気に流れ込んできた。

溺れ死ぬほどの水量ではないが立っていないと息が出来ないぐらいの高さまで水かさが増した。まして雪こそ降ってないが真冬並みの寒さである。

たちまち兵士たちはガタガタと震えだした。

この状態で広間との段差を迅速に這い上がるのはほぼ不可能である。

ハットンは再度同じように声をかけた。

「サンテックス、降参しろ。そうでなければ動けなくなった兵を槍で突き殺さなくちゃならん。頼むから俺にそんな事をさせないでくれ。」

考えあぐねて答えに窮しているサンテックスが異臭を感じた。

サンテックスだけではない。その場に居た全員が鼻をつまむ程の臭気だった。

見回した先に、崩落した城壁からヨロヨロと歩いて来るレントが居た。

服は焼け焦げ、糞尿まみれになっていた。

ハットンが呆然として聞いた。

「ど、どうしたんだレント。その姿は一体?」

「爆風で吹き飛ばされて・・・・汚物の貯留槽、つまり肥溜めに落ちた。」

そう言うといきなり地下階へ飛び降りた。

そのまま水をゴクゴクと飲み始め・・・ゲーッと吐き出した。

それを3回繰り返してから目の前に居るサンテックスに気が付いた。

「ああ、サンテックス先生。助けに来てくれたんですね。」

「く、臭い、来るな。こっちに来んでくれ。」

「やだなぁ先生。かわいい教え子にそんな冷たいこと言わないでくださいよ。」

「や、やめろ、来るな・・・ハットン!降参する!!早くハシゴを下ろしてくれ!!」

地下階の兵の回収が終わると今度は上部に残留していた兵を回収した。

「よし、枯葉に火をつけて煙を出せ。どんどん火の上に枯葉を乗せろ。」

命令を出すハットンにサンテックスが怪訝そうな顔をした。

「一体何をしているんだ?枯葉など燃やしてどうする?」

「まぁ見てろって。」

ほどなく煙を見たサンテックス軍が陣地から飛び出してきた。

その数およそ200名。その軍勢が砦手前の土手から姿を消した。

沈黙したまま長いあいだそれを見入っていたサンテックスが深くため息をついた。

「なるほどな、そういう事か。黒幕はハイネルドだったのか。」

「形の上では人質を取られてやむなく協力したって事になるがな。」

「どちらでも同じだ。ワシが歳を取って焼きが回ったということさ。」

「いやいや、そうじゃない。あいつらが特別なんだ。俺も長い事戦場に居るが、あんなに神懸かった底抜けの阿呆は初めて見たよ。」

ハットンの視線の先にはレントを引き上げるハイネルドとリンダが居た。

ザモラの兵も笑いながら手助けをしている。

リンダが鼻をつまんで嫌な顔をして言った。






「レンちゃん臭~い。もうやだ、レンちゃん嫌い。」

それを聞いたレントもハイネルドも、そしてザモラの兵もゲラゲラと笑い出した。

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